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映画で知り、本で生き、舞台で弾ける。

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映画、本、観劇の記録です。 この3本の柱でわたしは成り立っています。
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2021年8月の記事一覧

ショローに告ぐ、ドライであるということ

『ショローの女/伊藤比呂美』 伊藤比呂美さんのエッセイを読むのは『道行きや』に続いて2回目になる。このエッセイは『婦人公論』に2018年8月28〜2021年5月11日に渡って連載されたものに加筆・再構成された作品だ。 伊藤比呂美さんは1955年生まれ。ということは今年で66歳になられるのだろうか...伊藤比呂美さんはここ3年間は早稲田大学で教壇に立ち、ショロー(初老)を迎えて身体能力の低下を感じつつも熊本と東京を行き来してらっしゃったようだ。あれだけ海外と日本との往復をひ

切なくて悲しくて痛くて、そしてまた美しい

映画『MIDNIGHT SWAN』に寄せて。 ずいぶん前になるが、2004年に公開された『ホテルビーナス』という映画があった。日本映画でありがながら全面韓国語で撮られた草彅剛さんが主演した映画だった。どこか猥雑さがあってでも美しくて悲しくて切ない映画だった。私はそのホテルビーナスを劇場で観て、草彅剛という人はなんて悲しくて美しい俳優さんなんだろうと思ったのを覚えている。見た目のかっこよさや置かれている立場に寄りかからず、心の深い部分に隠し持っている心情で役を演じきれる人なん