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映画で知り、本で生き、舞台で弾ける。

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映画、本、観劇の記録です。 この3本の柱でわたしは成り立っています。
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2021年5月の記事一覧

みんな、ホントウの自分で、おやんなさい

『みんな、ホントウの自分で、おやんなさい』とは、映画「トイレット」のサブタイトルだ。映画を観終わると、この言葉の意味がよくわかる。 もたいまさこさんが出てる映画は、何となく観たくなる。そしてその映画が荻上直子監督だと、やっぱり猛烈に観たくなる。更に言うならフードスタイリストは飯島奈美さんだ。このカップリングが好きな女性は多い。それと同じように拒否反応を示す人も多いのかもしれないが、私は大好きだ。なんか心にもやもやがあったり、他人のことが必要以上に気になり出したりした時に荻上

肉体のジェンダーを笑うな

母親が出す母乳のように父親が医療によって父乳を出す話や、女性のPMS(月経前症候群)の辛さを知リたくて生理が始まる夫、か弱い女性という立場が嫌で筋肉ロボットを装着する女性などが現れる。荒唐無稽な内容ではあるが、本質はものすごく深く考えなきゃいけない問題が潜んでいる。男女の区別は生物が誕生してからあったのだけど、男女の区別だけではなくその人個人の肉体的な特徴の線引きがどうも腑に落ちない主人公たちがいる。いや、この作品の中の人物だけではなく、現実の世界にもそう思っている人は確実に

今日も更紗は、絶賛生存中

数年前にこの本に出会った。私にとっては「家庭の医学」よりも体の為になる本だと思っている。 私はいろんな持病もあり、精神的に「もう嫌だな」と思っていた時に大野更紗さんのことを知った。そしてその足で本屋に直行してこの本を手に入れた。難病を扱った闘病記は他にもたくさんある。それらのほとんどは神妙な面持ちで読まれることだろう。この本も括りでいえば闘病記になるのだろうが、この本はそんじょそこらの闘病記とはちょっと趣が違うのだ。 笑える。 こんな大変な苦しい思いをしている人のことが

松本まりかの皮膚感覚に怖さを感じる

小説、ドラマ、演劇の連動企画で「向こうの果て」が始まった。ドラマでは松本まりかさんが主演をやると聞いて期待が高まった。まず小説を読み始めた。著者(竹田 新)は最初から松本まりかさんをイメージして書いたのではないかと思うほど私の中ではピッタリと当てはまった。この台詞はこんな感じで言うだろう...と想像しながら読み始めた。 松本まりかさんの少しかすれた声や皮膚が薄いのではないかと思わせる中身が透けて見える不安定さのようなものが私は以前から好きだった。かすれたか細い声は女の底にあ

海と毒薬 [映画]

気持ちよく晴れ渡った火曜日の朝。風はそよぎ、洗濯物がベランダで揺れる。そんな日にこの映画を観たことにとても後悔した。いつかは観よう、いやいつかは観なければならない映画だと思っていた。なぜこの日だったのだろうか...コロナが逼迫する中、テレビニュースで医者や看護師の大変さがよく取り上げられている。そんなニュース映像を朝から見たのが原因かもしれない。何かいろんなことの手がかりが欲しかったのかもしれない。 撃墜されたB29搭乗員8名が帝大医学部に連れてこられた。軍の命令により、生