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映画で知り、本で生き、舞台で弾ける。

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映画、本、観劇の記録です。 この3本の柱でわたしは成り立っています。
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2021年1月の記事一覧

みんな、森に行っちゃうんだよな

私は多感な子供の頃、パラレルワールドが存在することを信じていた。もうひとつの世界があって、そこにも「私」が存在していて、ここにいる「私」とは違う人生を生きているのだと...それは今になって思えば、自分の人生には何かしらの不都合があって、もうひとつの世界では私は幸せで何不自由のない生活をおくっているのだと思い込むことで自分を慰めていたのではないかと思う。 そんなパラレルワールドを舞台にした「森へ行きましょう・川上弘美」を読了した。とてもおもしろくて、複雑な作品だった。 19

誰もが小林聡美になりたがる

SNSのフォローは海外のモデルや女優やとんでもないセレブだったりして、やれ流行のメイクがどうの、着ている服がどうの、などと騒いでいるが、そんな流行にほいほいと流されながらも、ある程度の人生を経験した女性たちは、ふと我に返ってみるとやはり小林聡美さんには敵わないと思い知る。 私も御多分に洩れずその中のひとりで、目標とか理想とかそういう言葉では言い表せられない眼差しを彼女にむけている。彼女のドラマや映画を数え切れないほど観てきた。最初の出会いは1988年に放送されていたドラマ「

史上もっとも迂闊な四畳半

『愉快』な本である。 『おもしろい』とか『楽しい』というのとはちょっと違っている。『愉快』としか表現のしようがない。「森見登美彦・四畳半タイムマシンブル〜ス(原案・上田誠)」を読み終えた。それもたった半日で。頭の中に登場人物が現れる。そして彼らのドタバタとした行動が私の頭の中で繰り広げられる。目は本に向かって文字を追っているのだけど、その映像が映し出されていく不思議さを感じる。クルクルと場面が変わりクルクルと人の気持ちが流れていく。とても愉快な経験だった。この技法はどういう

師を選ぶ。存在を攫われそうで怖いけど

歌うたいが切ない歌の弾き語りで、女性達をメロメロにすることがあるように、この人は文字でそれをやってのける。それも31文字という短い文字でだからたまらない。誤解がないように言うとメロメロになるのは女性だけではない男性もそうだろう。僕も俺もその文字の中に埋もれて眠りくなるに違いない(あくまでも個人的見解ではあるけれど) 短歌や川柳が好きでいろんな歌人の短歌を読んだりするが、私自身は短歌を作ったことはない。これからも作るかどうかわからない。でも木下龍也さんの作品がとても好きで彼が