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映画で知り、本で生き、舞台で弾ける。

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映画、本、観劇の記録です。 この3本の柱でわたしは成り立っています。
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2020年10月の記事一覧

狂うほどの棘が刺さる時

衝撃的な作品だった。私も読みながら狂ってしまうのではないかと思うほどだった。 島尾敏雄「死の棘」日記を読み終えた。 昭和二十九年九月三十日 この晩より蚊帳つらぬ。 という文章で始まる。これは作家・島尾敏雄の日記をそのまま本にしたものである。彼は若い時からずっと日記をつけていたようだが、この本に掲載されたのは、昭和29年9月30日から昭和30年12月31日までの日記で、もちろん日記だから実話である...それも衝撃的な実話である。 島尾敏雄は昭和19年末、海軍震洋特攻隊長

わたしは過度にロマンチック

遠い昔に一度読んだことのある。 「銀の匙」をまた読んだ。 何だか美しいものに触れたくなって、友人が待っていたのを借りて読んだ。 この本を読むと自分が日本人だということがとても嬉しくなる。誇りになる。普段はアメリカか、イタリアか、中国か、インド、アジアのどこか...あるいは宇宙人かもと思うような生活をしているくせに、わたしは紛れもなく日本人であることを自覚し、そしてその日本人で良かったと心から思える。 この本は、作者・中勘助が、小箱にしまってある銀の匙から思い出されることを

内なる町から来た話

彼らはなぜここにいるんだろう?何を考えているんだろうか?もしや人間界への侵略?だが、やがて気づかされる。唐突に自然界に現れたのは人間のほうじゃないのか。後からやって来てこの星の景色を塗りかえ、王のように君臨している人間たちは、彼らの目にどう映っているんだろう。そう、彼ら物言わぬ動物たちは、まさに人間の姿を映す鏡なのだ。(訳者あとがきより) ショーン・タンの「内なる町から来た話」を読んだ。絵本の部類に入るのだろうが、これは大人の中の大人が読む絵本だと思う。いい年ををしていても