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映画で知り、本で生き、舞台で弾ける。

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映画、本、観劇の記録です。 この3本の柱でわたしは成り立っています。
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2020年8月の記事一覧

忘れたくても残ってしまう『すべて忘れてしまうから』燃え殻

著者・燃え殻さんのことはまったく知らないでこの本を選んだ。本屋で平積みにされていた中で一番私が好きなタイプの表紙だったという理由で。パラパラと中を見ていると、短いエッセイとそれに合わせた絵が描かれていて、時々シュールな写真なんかも入っていて、「好きなタイプ」に間違いないと思って買った。そして読んだ。 読みながら思ったのは、燃え殻さんはとても若い方なんだろうなということ。「若い」の定義は曖昧だからどう表現していいかわからないが、年齢的にいうと20代後半から30代半ばではないか

[映画FANDANGOに寄せて] あの日に戻りたいと、駄々っ子のように泣きたい時もある

AmazonPrimeを検索していて懐かしい映画を見つけた。子供の頃の写真をアルバムの隅から見つけたようなふわっとする懐かしさだ。一瞬にして80年代に戻ってしまう。何か忘れ物をを見つけたような微妙な高揚感が私を包んでいる。 1985年のアメリカ映画「ファンダンゴ」もう4〜5回目くらい観ているだろうか…。一番最初に観たのは21歳くらいの時だったと思う。仕事帰りにレンタルビデオ屋に寄るのが日課となっていた。あの日も疲れ果ていた。それでも真っ直ぐに家に帰る気がしなくて、面白そうな

明日死ぬとしても、今日も美しい本を読む

人の眼、闊歩、足踏み、とぼとぼ歩き、怒号と喧噪、馬車、自動車、 バス、荷車、足をひきずり体をゆさぶって歩くサンドウィッチ・マン、 バンド、手風琴、頭上を飛ぶ飛行機の凱歌とも鐶の音とも奇妙な高調子の歌声とも聞こえる爆音、こういうものをわたしは愛するのよ。人生を、ロンドンを、六月のこの瞬間を。 (ダロウェイ夫人より一部抜粋) 6月はとうに過ぎてしまったが、ヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」を読み返してみた。この作品はロンドンの6月のある1日の朝から晩までの出来事を描いたも