リードシートを作るとき気をつけること
フェイクブックや黒本にない曲をジャズセッションでやりたい・やらなきゃいけないとき、リードシート作成について以下の3点について留意するといいでしょう。
※主にジャズセッション用のリードシートについて解説しています。
1.メロディの音域とキー
メロディの最低音はB♭以下にならないようにしましょう。音域は1オクターブ半程度が無難です。
なぜB♭以下はダメなのかというと、楽器によっては音がないからです。セッションではどの楽器で演奏するのかは不明ですから、すべからく音域が足りるような音域を目指しましょう。
ジャズコンの先生曰く「一番音域がシビアなトランペットに合わせよう」が基本です。(これは歌モノについても同じで、作曲の場合も気をつけておきたいポイントです)
このルールに従って原曲を移調することになりますが、できるだけ管楽器に優しいキーにしましょう。F、B♭、E♭、あるいはCを選べば適切な音域内にメロディが収まるはずです。
ジャズはプレイヤーが作り出す音楽です。
原曲のキーよりも演奏しやすさを重視することは、どんなレベルのセッションでも大事な心がけです。
2.原曲の構成とコード進行を尊重する
やりたい・やるべき曲がどんな構成なのかを確認しましょう。一旦書き出してもいいでしょう。そのうえで、ジャズセッションに向いているかどうかを判断します。
具体的には、コード進行が単調で一定なもの、構成が複雑すぎるものはジャズセッション向きではありません。大幅なアレンジを加えるか、別の曲にすることを検討した方がいいでしょう。
複雑な曲を単純化したり、大きくカットするのは問題ありません。多くのジャズスタンダードもサビのみを使っていますから、曲の一部をチョイスする場合は、一番有名そうな部分を選ぶといいでしょう。
逆に、単純すぎる曲をアレンジする場合は注意が必要です。
思いつきのリハモナイズは避けて、Ⅴ7をⅡーⅤにするだとか、Ⅱm7をⅣmaj7にする程度にとどめましょう。
リードシートに書かれたコードが複雑になるほど、プレイヤーの自由度は失われていくのです。ジャズプレイヤーは単純なコード進行であっても様々なバリエーションを見出せるように訓練しますから、できるだけシンプルなコード進行を心がけましょう。
どうして思いつきのコード進行が良くないのかを解説すると、たとえば原曲のメロディだけを抜き出した場合、そのメロディに似たメロディはどこかにあって、コード進行を自由勝手にしするほど、曲のアイデンティティはどんどん薄まってしまいます。
コード進行とメロディの噛み合わせによって原曲らしさが保たれていると考え、できるだけコードの改造は避けた方がいいでしょう。
もし大幅なアレンジをしたくなったら、それはもはや自分の作品です。しかるべきバンドを組み、レコーディングするといいでしょう。リハモやジャズアレンジは、とても素敵で尊いです。どんどんやりましょう!
ですが、もしジャズセッション用のリードシートであるならば、演奏しやすく易しい内容である方が正解なのです。
3.スタイルを変えても成立するように整える
ジャズセッションはコピーバンドではありませんから、演奏者のレベルや思いつきによってテンポやスタイルが変わることを考慮します。
具体的には、スウィングの曲をラテンでやったり、ロックやポップスをスウィングで演奏したりします。
では、どうすればスタイルに影響されない楽譜にできるのでしょうか。ポイントはメロディにあります。原曲をリードシートに落とし込むとき、メロディの本体と装飾音を区別して、本体のみを記譜しましょう。
装飾音などを細かく採譜してあるリードシートは、読みにくいだけでなく自由な即興演奏やフェイクがやりにくくなります。装飾音をなくしてシンプルなメロディにすることで、スウィングでもイーブンでも演奏することが容易になります。
ただし、どこまでがメロディの本体なのか分かるようになるには、それなりの音楽経験が必要になるでしょう。フェイクブックや黒本と色々な音源を照らし合わせることで、徐々に分かるようになります。
【余談】セッションの主役はプレイヤー
リードシートを使ったセッションでは、読みやすさや演奏しやすさを重視することが、必然的にセッションの質を高めます。特にジャズセッションでは、コード進行やメロディがジャズ的でなければソロがとりにくくなりますから、適度にⅡ-Ⅴを挿入したり、構造自体を精査することで様々な楽曲がセッション曲になります。
現存するジャズスタンダードは当時のヒット曲を演奏するニーズに合わせて生き残ってきたのですから、現代を生きるジャズプレイヤーも「今やりたい曲」をやっていくのが宿命というものです。J-POPであれEDMであれ、いい曲だなと感じる曲をリードシートに落とし込んでセッションすることでセッションをもっと盛り上げていきましょうね。
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