「魔女の宅急便」の音楽はサウンド・オブ・ミュージックを参考にしていると思ったポイント
先週サウンド・オブ・ミュージックのサントラを掘り下げていたのだけど、話の流れで魔女の宅急便のサントラを聞く機会があり、そこに共通項をいくつか見つけたのでメモ書きしておきたい。
1.メインテーマ①にトニックディミニッシュ
サウンド・オブ・ミュージックのメインテーマ「Sound of Music」と、魔女の宅急便のメインテーマ(だと思う)「晴れた日に・・・」は、共にトニックディミニッシュが使われている。
拍子は違うもののトニックディミニッシュ、つまりI△-Idimでメインテーマが始まる。こういった曲は決して少なくはないが、「おや?」と引っかかったのでサントラをちゃんと聴いてみた。
2.チューバのソロ
魔女の宅急便に「ジェフ」(おそのさんの旦那さん)という曲があり、チューバのソロをフィーチャーしたコミカルなアレンジになっている。
サウンド・オブ・ミュージックにも「The Lonely Goatherd」という、劇中人形劇で流れるチューバソロをフィーチャーした曲がある。
チューバソロの曲はちょっとだけ珍しい。
3.メインテーマ②はアップテンポの短調
魔女の宅急便のメインテーマは2つあって、2つめが「海の見える街」という軽快なマイナーソングだ。
サウンド・オブ・ミュージックも「My Favorite Things」という超有名なマイナーソングが2つめのテーマメロディを担っている。
魔女の宅急便では「暴飛行の自由の冒険号」という曲(ラストの緊張感がある場面)では「海の見える街」のモチーフが活用されている。サウンド・オブ・ミュージックでも最終盤の危機感がある場面で「My Favorite Things」のモチーフで緊張感が演出される。
こういったモチーフ展開は映画音楽やミュージカル、劇伴では基本テクニックなので、別に珍しいことではない。
<まとめ>『王道』を求められた行き着く先に
サウンド・オブ・ミュージックはブロードウェイの最も有名な作品の1つであり、世界的に有名であると同時に、日本では学習指導要領で中学校で視聴するような流れがあったりして特に「聴いたことがある曲」が詰まっている。ドレミの歌は全国民が知っているし、エーデルワイスをリコーダーで吹くことは、僕くらいの世代では共通体験だったりする。
マーケティング視点でいくと、こういった「知っている曲」に寄せること=ウケる曲・刺さる要素になる。
魔女の宅急便は”王道”の音楽を要求され、結果としてサウンド・オブ・ミュージック的なものに”なった”のかもしれない。あるいはサウンド・オブ・ミュージックを参考音源にして依頼されたのかもしれない。
こういった「あれ?」と共通項が引っかかるために、音楽理論という”言語化”が役に立つ。あるいは言語化できてなくても「似てるな」くらいの感覚は、音楽制作においては重要なポイントになると思う。