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極めて美しい1分30秒のプロローグ 「LUNARiA」感想

今回のあらまし

今回は2021年12月に発売されたビジュアルノベル「LUNARiA -Virtualized Moonchild-」について紹介していきたい。
本作は体験版をプレイし惹かれ。発売後すぐにプレイしたタイトルとなっていたが、今回改めて紹介しようと思ったのは5月8日に開催された同人即売会「COMIC1」にて本作のキャラクターデザインを担当したふむゆんさん(Twitter)の同人誌を入手したためだ。

本イベントはいわゆる「コミケ」などのように様々なサークルが集まり、思い思いの同人誌を頒布している。新型コロナウイルスの影響によりこういったイベントが中止になっているということもあり、かなり久しぶりの参加となった。「COMIC1」に関しては初めての参加となったが、参加人数に制限を設けているという影響で、もちろん混雑して入るもののまだ比較的歩きやすい印象だ。

久しぶりにこういったイベントに参加して思ったのは、欲しい物を自らの足を運んで購入できるというのは良いということ。加えて、サインを貰えたのが個人的に嬉しかった。あくまで個人的な視点だが、サークル側は多くの人に作品を売る(より素早く捌く)一方で購入者側はより多くのサークルを回るため素早くお金を支払い商品を受け取るため、こういったイベントではお互いにそっけなくなってしまうなと感じていた。

この日はピークが過ぎた頃に再度サークルの前を通り過ぎると少しの列ができており、記念にサインを書いてもらったがとても嬉しかった。また、とっても丁寧に対応していただき、次回また別のイベントに参加する際にはお金を落としていきたい思った。

「LUNARiA」の第一印象と出会い

さて、話が脱線したが今回は「LUNARiA -Virtualized Moonchild-」のプロローグの完成度の高さについて言及していく。ちなみに、本作は物語冒頭2割~3割ほどがプレイ可能な体験版も配信されているため、気になった人は是非プレイしてほしい。今回言及するプロローグももちろん遊べる。

まずはじめに、私は本作に対する発売前の期待は0だった。Keyでは3つのキネティックノベルをリリースするということ告知しており、「LUNARiA」はその中の第2作目。1作目の「LOOPERS -ルーパーズ-」は「ひぐらしのなく頃に」シリーズで有名な竜騎士07さん、様々なイラストを手掛ける望月けいさんが参加。大きなプロジェクトの第1作目ということで、スタッフに力を入れるのは当然だ。第3作目「終のステラ」には「CROSS†CHANNEL」で田中ロミオさんが参加。このように錚々たるクリエイターが集結していた。

1作目「LOOPERS -ルーパーズ-」
3作目「終(つい)のステラ」

一方「LUNARiA」はというとこの時点で私が知るスタッフがいなかった。当然、私が無知であるという可能性は高いが、この点ではフックにはならなかった。のちにメインビジュアルが公開されたがレースクイーンのような見た目のヒロインに惹かれず、1作目と比べて力負けしているのではないかとまで感じていた。

シナリオは松山剛さん、LUNAR-QとT-BITをふむゆんさん、
百々咲こん、ミャウ・ミャーフを佐伯ソラさんが担当している。

そんなある日、本作「LUNARiA」の体験版が配信される。仕事が終わった夜にTwitterを眺めていると体験版が配信されたことを告知するツイートを発見。なんとなくダウンロードしプレイしてみたら視点が180度変わり製品版を購入しようと決断することになる。そしてゲームの冒頭、本記事の主役となる「LUNARiA」のプロローグを目にする。

1分30秒のプロローグ

「地球から38万4400キロメートル離れた天体 その名は<月>」
後ろではサントラにも収録されている楽曲「PRISM PRINCESS」のイントロが流れはじめピアノの旋律が流れ始める。

プロローグはそんなヒロイン「LUNAR-Q(るなきゅん)」の語りから始まる。まずはじめに目に飛び込んでくるのは広大な宇宙と大きな月だ。ここで登場する月はCGで描かれており、映像として綺麗に映し出される。

「この星を見た古来の人々は、様々な神話を創りました」

うさぎの餅つきや狼男など、子どもの頃に聞いた月にまつわる作り話。かと思えば「一番近くにいるのに、それは空よりも遠くて、隣りにいるのに、決して手が届かない」という語りが入り、「これは主人公とヒロインの関係性の比喩かな?」と想起させ物語にグッと引き込んでいく。

「これは、月と地球の物語 月のウサギと、地球のオオカミ――」
「近くて遠い――恋物語」

そして最後の語りで物語が幕を開ける。この間1分30秒。

最後のCGでは、我々が目にする月とは異なる異質な月が出現する。そして最後に地球へと飛来する物体。スペースシャトルなのか、はたまた隕石なのかは現時点では不明だが、たった1分30秒という僅かな時間で、物語の舞台・どういう話なのか・中心となる2人の関係性・この世界の月は何かが違うといった重要な事柄をプレイヤーに印象付ける。

作品の導入としても完璧で、本作のストーリーの流れを想起させる。さらには飛来する物体を入れることで伏線まで入れるというテクニックまで披露する。

加えてこの作品を最後までプレイするか、そうでないかを決める極めて極めて重要な掴みの部分に、一切キャラクターを出さず世界観を伝える「LUNARiA -Virtualized Moonchild-」のプロローグに私は惚れた。シナリオや演出に自信があるからこそ、なし得る作りになっていると感じたからだ。

ちなみに、次のカットでは主人公のビットくんがバイクに乗っているというまたしても唐突なカット。プレイヤーは置いてけぼりになるかと思いきや、このあたりの説明も非常に上手で、文字で直接説明せずに本作の世界観や主人公の内面、ヒロインを含む周りの人物との関係を描いていく。プロローグも極めて秀逸だが、その後の約30分~1時間ほどのオープニングパートは文章としてのリズムが良く、用語が多いながらもしっかりと理解させどんどん引き込まれていく。

後のシナリオは数々の「泣きゲー」をKeyの真骨頂といった感じとなっているが、その一方で新たな風を感じさせるストーリーにもなっていた。一筋縄では終わらない素晴らしい作品に仕上がっているため是非プレイしてもらえると幸いだ。

キャラクターデザインに関しても良いに尽きる。そもそも私はビジュアルノベルにおける選球眼を持っていないが、作品を見る目がなかったと言わざるをえない。るなきゅんはグイグイ来るVIRTUALの姿に対し、おしとやかなREALの姿。表情の差分がたくさん用意されているため、感情の起伏が激しいるなきゅんらしさを立ち絵で表現できるなど、ビジュアルノベルという媒体の強みを活かしている。

まとめ

本記事を書くにあたって本作の冒頭をプレイしたがやはり良い。私自身、このプロローグに関してはマスターピースだと感じているし、本作全体の評価も今まで遊んだビジュアルノベルの中でベスト3に入る完成度の高さだ。キャラクターがほぼ4人だけであることや、背景およびCGの使い方、VIRTUAL/REALの切り替わりや声優陣の演技などなど語りたいポイントは数え切れないが、ノベルゲームというゲームの性質上あまり多くを語りすぎるとネタバレになってしまうため、冒頭の魅力だけをお伝えできていれば幸いだ。

ちなみにこちらの動画では本作を手掛けたクリエイター陣による想いが語られているので必聴である。(ただしネタバレになりかねないポイントがあるのでクリア後に視聴を推奨します。)

最後に「COMIC1」に行って「リアルイベントの良さ」と「イラストの良さ」を改めて感じた。世界的な状況により大規模なイベントはいまだ難しい状況が続いているが、少しづつでも改善に向かっていくことを願う。

LUNARiA -Virtualized Moonchild- | Key (visualarts.gr.jp)
ふむゆん🐾(@hmyn_)さん / Twitter

それと最後に、Keyのスタッフブログではふむゆんさんの絵がいくつか公開されているのでこちらも要チェックになっている。


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