線香、蝋燭、それと棒アイス

マッチで火をつけるのが好きだった。

火を怖がっていない自分が少しかっこ良く思えたし、何よりも、マッチが消えた時の火薬の匂いが好きだった。
当たり前がどんどん進んだ今だから、そう思えたのかもしれない。
たまには当たり前を失うのもいいと思えた。

蝋燭って偉大だと思う。

電気のない部屋に灯る淡い光。
見えるものは少なくなるけど、その分俺たちの言葉が、音が、明瞭に映し出される。
この光はきっと、俺が生まれるよりずっと前から、ずっとずっとずっと前から、誰かの街を、部屋を、闇を照らしてきた。
電気よりも、ずっと明るく。

棒アイスを考えた人は、忙しい人だったんだろうか。

無くならないで欲しいと思いながら食べる。けど、夏の暑さには弱くて、時間よりも早く、どんどんと溶けていく。
まるで俺たちが焦らされているみたいだ。
余裕が持てない食べ物だから、美味しく感じるのかもしれない。
余裕なんて持てない俺たちと似ているからだろう。

火と氷、相容れないように思えるものが共存する季節。

そうか、だから嫌いになれないんだな。

完全な対極でもなければ、完璧に一致もしない俺たちを。

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