久石譲

景色を見せてくれる音楽が好きだ。
その音の繋がりを聞くだけで行ったことのない景色が目の奥に広がる。
久石譲の作る音楽には景色が見える。

真夏の日差しの下、暑さに揺れる木々を見ながら眩しさに目を細める。
海の優しい流れを眺めながら、その中に潜むまだ知らない秘密に心を踊らせる。
色付いた花々に優しく触れる穏やかな昼下がり。
落ち葉を拾い集め、これから訪れる寒さを感じる。
雪の色に染った街並みに、足跡を一つ一つ付けながら歩いていく深夜。

彼が見せてくれる景色はなんとも暖かく、優しく、穏やかで、時に荒々しい自然の世界。
その脳裏に広がった自然の中に自分を溶かしていく時間は、怒りや焦り、悲しさが蔓延するこのご時世に生きる自分にとっては何よりの救いになる。

ゆっくり息を吸って、吐いて。

かつてあったであろう広く広がる緑の大地に足を踏み入れる。
どこか懐かしいその風景に今日も溶けていく。

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