ささやかだけれど、意味のあるもの
みーさん(夫)は、食べたものを毎日日記につけている。
「10月25日 夜:ごはん、鱈の幽庵焼き、豚汁、きゅうりの浅漬け」みたいに、食べたものを淡々とメモしている。
それをときどき一緒に見返して、「この日は映画見に行ったね」とか、「これは出張から帰ってきた日だね」とか、「この日はすごく寒かったね」とか、思い出しながら話したりする。
ごはんの記憶をたぐり寄せると、不思議とそのときに考えていたことや、まとわりつく空気の記憶もくっついてくるのはなぜだろう。
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メモしておかないと忘れてしまうような、家で食べるふつうのごはんみたいな、そういうものの積み重ねが人生なんだなあ、とふと思う。
転職したとか、仕事でMVPをもらったとか、結婚式を挙げたとか、海外旅行をしたとか。SNSに載っけるハイライトが占める割合なんてごく一部だ。
1日の終わりに食べたりんご。コンビニで慌てて買ったストッキング。自販機の下で拾った10円。コーヒーで火傷した舌の先。ポケットに入れたまま洗濯してしまったティッシュ。駆け込む直前でドアが閉まった電車。
そういう、あったことすら忘れてしまうような、“はじめからなかったこと”と同義になってしまうようなつまらないものを、
つまらないけれどじんわり尊いものを、ちょっとずつ積み重ねた結果が、今日のわたしだ。
どんなに華やかに見える人だって、きっとそうなのだ。
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誰の人生も、みんな等しく取るに足らなくて、
だけど一つとして、日々積み重ねる「つまらないもの」の組み合わせに、同じものは生まれないのだから
みんな等しくかけがえのないもの、とも言えるのかもしれない。
そんなことを、ふと考えたのでした。
10月28日:ごはん、青パパイヤとベーコンの炒め物、チキンスープ
あしたもいい日になりますように!