見出し画像

ささやかだけれど、意味のあるもの


みーさん(夫)は、食べたものを毎日日記につけている。

「10月25日 夜:ごはん、鱈の幽庵焼き、豚汁、きゅうりの浅漬け」みたいに、食べたものを淡々とメモしている。

それをときどき一緒に見返して、「この日は映画見に行ったね」とか、「これは出張から帰ってきた日だね」とか、「この日はすごく寒かったね」とか、思い出しながら話したりする。

ごはんの記憶をたぐり寄せると、不思議とそのときに考えていたことや、まとわりつく空気の記憶もくっついてくるのはなぜだろう。


***

メモしておかないと忘れてしまうような、家で食べるふつうのごはんみたいな、そういうものの積み重ねが人生なんだなあ、とふと思う。

転職したとか、仕事でMVPをもらったとか、結婚式を挙げたとか、海外旅行をしたとか。SNSに載っけるハイライトが占める割合なんてごく一部だ。

1日の終わりに食べたりんご。コンビニで慌てて買ったストッキング。自販機の下で拾った10円。コーヒーで火傷した舌の先。ポケットに入れたまま洗濯してしまったティッシュ。駆け込む直前でドアが閉まった電車。

そういう、あったことすら忘れてしまうような、“はじめからなかったこと”と同義になってしまうようなつまらないものを、

つまらないけれどじんわり尊いものを、ちょっとずつ積み重ねた結果が、今日のわたしだ。

どんなに華やかに見える人だって、きっとそうなのだ。


***

誰の人生も、みんな等しく取るに足らなくて、

だけど一つとして、日々積み重ねる「つまらないもの」の組み合わせに、同じものは生まれないのだから

みんな等しくかけがえのないもの、とも言えるのかもしれない。

そんなことを、ふと考えたのでした。


10月28日:ごはん、青パパイヤとベーコンの炒め物、チキンスープ

あしたもいい日になりますように!