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バングラデシュ動向ニュース 2024年8月9日 【暫定政権発足】


8月8日夜、17名の暫定政権メンバーが大統領公邸で行われた就任式に臨んだ。バングラデシュ民族主義党(BNP)やその他の政党指導者、各国大使らも参列した。
17名の暫定政権メンバーの略歴は以下のとおり。

・Professor Muhammad Yunus 暫定政権主席顧問、ノーベル平和賞受賞者、グラミン銀行創立者
・Syeda Rizwana Hasan BRAC理事、バングラデシュ環境法律家協会代表、RDRS(NGO)会長
・Farida Akhtar 「女性の人権」活動家、生物多様性研究家、Policy Research for Development Alternativeエグゼクティブディレクター、出版社社長
・Adilur Rahman Khan 人権監視団体代表、元副法務長官(BNP政権時)
・AFM Khalid Hossain チッタゴン国際イスラム大学イスラム研究学科教授、Hefazat-e-Islam Bangladesh副代表、イスラム政党Islami Andolan Bangladesh(IAB)アドバイザー
・Nurjahan Begum グラミンテレコム・ディレクター
・Sharmeen Murshid 選挙を監視する組織「Brotee」の最高経営責任者
・Bir Pratik Faruk-e-Azam バングラデシュ独立戦争功労者(Bir Pratik)、海軍特殊部隊出身
・Nahid Islam 学生運動家、ダッカ大学の社会学修士課程在籍
・Asif Mahmud 学生運動家、ダッカ大学言語学科在籍、学生組織主宰者
・Salehuddin Ahmed 元中央銀行総裁、BRACビジネススクール教授
・Prof Asif Nazrul ダッカ大学法学部教授、人気コラムニスト、今回の学生運動を支援した
・Hasan Arif 元法務長官(BNP政権時)
・M Sakhawat Hossain 元選挙管理委員長 元軍人、ノースサウス大学南アジア製作ガバナンス研究所名誉研究員
・Supradip Chakma 元外交官、チッタゴン丘陵地帯開発委員会会長
・Prof Bidhan Ranjan Roy 国立精神衛生研究所精神科の教授兼所長、心理学者
・Touhid Hossain 元外務大臣(BNP政権時)

<注目点>
パリで治療中だったユヌス氏は同日午後に帰国したばかり。映像で見る限り着替えるまもなく就任式に臨み、一連の動きの慌ただしさを感じさせた。
暫定政権の4人の女性活動家はグラミン銀行創立時の同士や人権活動家、NGOのトップらで、いわばユヌス氏の身内的存在。
今回の学生運動を主導したダッカ大学の学生2名もメンバーに選ばれた。また、ダッカ大学のアシフ・ナズルル教授は今回の学生運動を支援した中心的な人物だ。
政党色を排除した人選が注目される中、BNP政権時の関係者が複数いるのは、実務家としての配置なのだろう。
原理主義的とも言えるイスラム組織Hefazat-e-Islam Bangladeshの関係者が入っているのはイスラム勢力への配慮とも考えられる。
暫定政権は当面の政府運営を行い、早期の総選挙実施に向けて動くことになる。選挙が行われれば、バングラデシュ民族主義党(BNP)が政権を担うことになると目される。
暫定政府の最高顧問は首相にあたり、各メンバーは大臣に相当する。

バングラデシュの歴史では暫定政府は複数回経験されている。1991年には最初の暫定政府が組織された。しかし、暫定政府の仕組み自体は2011年にアワミ連盟によって廃止されたので、今回の動きは超法規的措置ということになる。

暫定政権の主要タスクは、上記のように選挙の実施と通常の政権への権力委譲にあるが、メンバーの顔ぶれからすると憲法改正のための素案作りも担う可能性がある。改正案には首相の任期制限、政治活動や報道の自由、マイノリティの自由といったことが盛り込まれるだろう。

<社会情勢>
軍は7日、警察総監(IGP)の交替を発表。組織改革に着手したことで、機能不全となっている警察組織の正常化を模索している。しかし、多くの警察官が制服を着て公衆の前に出ることを恐れていると見られ、実質的に正常化するにはまだ時間が必要だ。
この間、街では交通警察に代わって学生らによる交通整理が行われ、市民の協力もあって大きな混乱が避けられている。

中央銀行や政府系機関などではトップに対する職員からの退陣要求が起こり、辞任が相次いでいる。ハシナ政権との癒着や横暴ぶりが取りざたされた組織内では、今後さまざまな抗議が広がる可能性もある。

報道によればハシナ政権の多くの閣僚らは国外に逃れたとされている。また、アワミ連盟の指導者らが大量の現金を引き出そうとして中央銀行から拒否されたケースなども報道されている。