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カイゴはツライ?第6話~画期的なユニットケアで不安がいっぱい…

ユリが勤務するユニット型特養は新型特養といわれるもので、数年前から厚労省が推し進めている。今後新しくできる特養はすべてこのタイプでなければいけないようだ。キッチン付きのリビングを囲むようにして各居室が配置されており、全室個室でトイレ付き、各ユニットにお風呂があり、家庭にあるような浴槽にリフトが付いている。介護部長も先輩職員も皆口を揃えて、ユニット型は家庭的でよいと言う。ユリはその感想というか意見になんだか違和感を覚えた。2~4人の相部屋になっていて、大勢が一斉に食堂に移動して食事をとる従来型の特養に比べると確かに家庭的といえる。老人介護の世界ではそれは画期的なことらしい。だがそれが画期的といわれること自体、いかに高齢者がこれまでひどい待遇を受けてきたかを物語っていて、暗く寂しい気持になった。措置から契約に移行し、ケアの内容が飛躍的によくなるという声も介護保険が始まった頃には聞かれたが、6年経った今ではそのような楽観的な声はもはや聞かれない。ユリが以前働いていた児童養護の世界ではユニットタイプがずいぶん前から導入されている。それでも3歳未満児ばかりが生活する施設では集団ケアが行われていた。ユリはそれが画一的でよくない、ユニットタイプにしたらよいとは一度も思ったことがなかった。なぜなら新生児や1~2歳の乳幼児の扱いは、資格があるとはいえ非常に難しく不安が多いのだ。看護師や保育士が何人もいると心強いのである。子どもとの関係が煮詰まってくると、ちょっと交代してみようか、というかんじで対応する職員を変えることも比較的簡単だ。ユニット型特養では一人勤務が多く、ちょっとしたトラブルにも対応できない職員もいる。ユリも慣れないせいか、気持に余裕が持てず、利用者にイライラすることがよくあった。利用者優先と言うが、業務をこなしてなければ次の勤務者に迷惑がかかるし嫌がられるのだ。トラブルは起きないだろうか、業務は時間通りに終えることができるだろうか、ユリはいつも不安だった。

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