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カイゴはツライ?第2話~ユニットケアこそ家庭的?


今日も一日ぼんやり突っ立ったままで終るのか…朝家を出る前から憂鬱な気分であった。出勤すると、ユニットの責任者である松岡さんが日勤でいたため、ようやくいろんな業務を教えてもらうことができた。昨日の身の置き所のない心細さに比べ、忙しいながらも充実感がある。ユリのユニットの責任者である松岡さんは、40代後半の物静かなおじさんである。松岡さんは、ユリがはじめて接するタイプの中年男性だ。大きな声を出すことはなく、静かにゆっくりと話し、ユリには、まず慣れることが第一、自分のペースで仕事をすればいいよ、と言ってくれる。実際ユニット型の老人ホームでは、役割分担というものがほとんどなく、10人の利用者の身体介護の他、ちょっとした掃除、洗濯、茶碗洗いなどの家事仕事など、すべて一人でこなさなければならない。日中は一人勤務であることが多い。家庭的ケアとはよくいったもので、大家族の主婦が家族の世話や家事に追われるように、ユニットの職員も、利用者の世話と家事などの雑事でてんてこまいである。特養であるから、当然ながら利用者はみな要介護状態の人たちである。排泄、入浴、食事などすべてにおいて、援助が必要なのだ。一日の業務をこなすだけで精一杯である。もっと利用者さんと話がしたい、もっと利用者さんとかかわりたい、そう思いつつ業務に追われ、気ばかりがあせる。とにかく仕事に慣れること、ユリはそう自分に言い聞かせて、ひとつひとつの仕事をこなした。

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