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カイゴはツライ?第5話~楽しくも空虚な毎日


半年も経つとすっかり仕事に慣れ、老人介護の常識にどっぷりと浸かり、初心はすっかり忘れ去ってしまった。あんなに衝撃的だったオムツ交換の回数にもすっかり慣れきってしまい、そんなものかと思うようになっていた。一日に8~10回ほどトイレに行く車椅子の利用者さんがいて、皆から頻尿だのかまってもらいたいからだなどと言われていた。正直なところユリもそれくらい行くので全く頻尿などとは思わなかったが、一人で行くなら頻尿と言われる回数ではなくても、介助する側からしたら行き過ぎ、頻尿なのだろう。いつしかユリも「多いな、しかも忙しいときに…」などといっぱしに思うようになっていた。だが、それでもユリはこの“頻尿”の矢田さんが好きだった。矢田さんは左片麻痺の恰幅のよいおばあさんで、性格が明るく面白い。テレビ好きで最近の話題をよく知っている。ユリは矢田さんとバカ話に興じていると嫌なことも一時忘れることができ、楽しかった。矢田さんとはファッションや食べ物の話のほか、男の話でも盛り上がりほんとうに楽しいのだ。宝くじに当たったらホストクラブに連れて行ってあげるからそこで豪遊しよう、などと笑いながらよく話してくれる。ユリは、これではいけない、このままではダメだ、もっと老人介護について学ばなければ、ぬるま湯に浸かっているような今の状態はけっしてよくない、そう思い悶々としながらも、バカ話でストレスを解消し、現実を見ないようにしていた。

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