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言葉にしてみる、そんな夜。

NHKのEテレで放送されている
『言葉にできない、そんな夜。』という番組。
https://www.nhk.jp/p/ts/QG95M2Z6VL/

この番組を見ていると、普段いかに自分が、
他人と意思疎通をとるための簡潔な言葉を選んでいて、
自分の感じたことをそのままに、
言葉で愛でてみることを放棄して生活しているのか、
思い知らされる。
だから、私も あの番組に出ている方々のように、
感じたままの言葉で、
でもなんだか共感できるような
そんな言葉にしてみる夜を作りたい。

昔聴いていた曲をふと聴いた時の気持ち

このお題に、女優の橋本愛さんは
心臓にレモンをかけたような感覚になる、と答えていた。
私だったらどうだろう。
私は物心つくより前から、音楽に触れてきた子どもで、
人生のどこを切り取ろうとしても、何かしらの音楽が
そばにあるような人で。
だから、橋本愛さんが言っていたように
ただギュッと切なくなり、みずみずしい気持ちになるだけじゃなく、
その曲に対してものすごく努力をしていた思い出や、
小さな頃からの憧れを実現させた思い出もある。

私のこの気持ちを表すとするならば、
耳の鼓膜という繊細な膜が
あの頃を映す映写機のスクリーンと化したと錯覚させられる様な感覚
なのかも。

私にとって思い出の音楽というのは、
その音楽を聴くことで何かを思い出すようなものというよりも
耳で何かを覚えている、その震えがそのまま私の思い出になっているという感覚に近い。
だから、耳から当時の自分のぼんやりとした後ろ姿が伝わってくるような気がして
体がじわじわと温かくなっていく。
それは幽体離脱と近いのかもしれない。
鼓膜の震えであの頃を見ることができてしまう、
そんな力をも持つ音楽って偉大だし、恐ろしい。、

﹏﹏﹏﹏𓈒


アニメのキャラクターの年齢を超してしまった時の気持ち

番組ではこの時の気持ちに対して、焦りとか漠然とした不安みたいなものが重ねられていた。
私の場合はどうだろう。
幼少期にアニメや漫画と深く接することがなかったから、
「あの頃あんなに離れていたのに、今は年下…」というような経験はあんまりしたことがない。
けれど、大学生の頃に愛読していた本は
二十歳の少女が書いたものだったから、
このテーマを聞いて、その本にまつわる私の感覚が呼び起こされた。

もしかしたら、追いつき、追い越すために
ずっとそこで待っていてくれたのかもしれない。
そんな気がする。

こんな気持ちを私は抱く。

18歳、19歳の私は、「ただ生きること」ができなくて
ああでもないこうでもないと、側から見れば悩まなくていいことで悩み、
生き急ぐかのように自問自答して暮らしていた。

そんな私を支えてくれたのは、
数十年前に、私より少し年上だった少女が日記として残していた言葉たち。
その彼女は二十歳で亡くなるのだけど、
その数歩手前の歳を生きる私は、
彼女のあっぱれな生き様と
まだ見ぬ私の少し先の未来に照らし合わせて、どうにか正気を保とうとしていた。

そんな私も二十歳になり、二十一歳になり、
ついには大学を卒業する。
彼女が成し遂げなかった、社会人というところにまで私は辿り着いた。辿り着いてしまった。
だけれども、享年と私の年齢を重ねた時には、
あなたがマイルストーンになってくれたから
ここまで歩けたのでしょう、という
落とした手袋の片方だけを届けてもらえたような
わびしくもあたたかい感謝のような気持ちになるのだった。

﹏﹏﹏﹏𓈒

もっと好きに自分の言葉で話したいな、いつか

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