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祝・新著発売!『ジャーニーシフト』著者の藤井さんにインタビュー

『アフターデジタル』シリーズ著者であり、ビービット執行役員CCO(Chief Communication Officer)の藤井保文さんの最新著作『ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件』が、いよいよ12月15日から全国の書店・Web書店などで発売されます。
今回は藤井さんに、『ジャーニーシフト』を執筆するに至ったきっかけや、制作の裏話などについてたっぷり語っていただきました。

― 今回の書籍について簡単に教えてください。

『ジャーニーシフト』は、『アフターデジタル』の正統な進化系ともいえる、世界の潮流から新たな変化を読み解く本です。これまでのシリーズでは、「社会」のビフォアアフターを示したのに対し、『ジャーニーシフト』では「企業の提供する価値」のビフォアアフターについて書きました。
急速なデジタル化が進む東南アジアの事例、Web3やNFTの新たな潮流、そのほか国内の事例を紐解きながら、行動支援を通じた「成功体験の実現」こそが企業の顧客提供価値になる時代に変化していることを解説しています。

― このタイミングで、新しい書籍を出版することになった背景を教えてください。

2019年に『アフターデジタル  -  オフラインのない時代に生き残る』を出版してから3年9ヶ月が経って、世界の様々な動きや、個人が社会や企業に求める価値の変化を感じていたので、その変化に対応するための新しいコンセプトを打ち出したいと思ったのがきっかけです。
実は1年くらい前から、自分の中では「行動支援」というコンセプトを考えていて、次に書籍を出版するならこのテーマで書きたいと思っていましたし、実際に1年前のTwitterでもそう呟いていました。

2021年7月の藤井さんのツイート。
この頃から「行動支援」をテーマとして執筆したいと考えていたそうです。

時代の変化は、僕が興味を持ってるカルチャーの動きからも感じていました。
例えば、「萌え」と「推し」という言葉。この5年間でそれぞれの言葉が検索された回数を調べてみると、「萌え」の検索数は減って、代わって「推し」が急速に増えているのが分かります。

参考:『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(中山淳雄、日経BP)

好きなアイドルやキャラクターに対して「好きだな」「かわいいな」と受動的に萌えているという、内的な感情を意味する言葉である「萌え」に対して、「推し」は、単に自分が萌えるという受動では終わらなくて、「能動的に対象を応援して押し上げたり、なにかしらの行動を伴って初めて充足したりする」ニュアンスを含んでいますよね。

実際にK-POPアイドル界隈では、ファンが推しているメンバーの誕生日にニューヨークのタイムズスクエアに広告(センイル広告)を出したり、ライブ配信動画に自作の翻訳テロップをつけて公開することで、もっと多くの人に動画を見てもらえるようにしたりと、自らアクションを起こして推しを応援する行動が多いんです。

この現象の変化からも、情報やコンテンツを受け取ることが価値だった時代から、実際に自分がアクションできることが価値となる時代へと変化してきていることを感じていました。

とは言え、UXのソリューションを提供しているビービットとしては、カルチャーの話をそのまま書くわけにもいかないし、何か良い切り口はないかと考えていた時に、副社長の中島さんからインドネシアの話を聞いたんです。
今年の春ごろ、インドネシア出張帰りの中島さんから呼び出されて、こう言われました。
「東南アジアが面白いことになっている。想像以上にUXドリブンな社会だった」
その後、僕も実際に2度にわたって現地を訪れてみて、「これを日本に持って帰れば必ず価値を感じてもらえる」「東南アジアの事例をもとに、社会の新潮流を語れば、UXの文脈の中で“行動支援”についてまとめることができる」と確信して、今回の本を書くことになりました。

― 日頃からUXに向き合っているビービットの社員に対して、『ジャーニーシフト』をどのように活用してもらいたいですか?

3章で書いている「利便性」と「意味性」の話はこれからの時代の体験設計をしていく上で重要な視点だと思っているので、ぜひ理解して参考にしてもらいたいです。

価値を感じるUXやサービスには「利便性」と「意味性」の2つのレイヤーが存在することを表した図

詳しい説明は書籍を読んでもらいたいんですが、「意味性」と「利便性」は、混ぜて解釈してしまうと、価値のないものを生んでしまう可能性があるんです。
例えば「高級車のカーシェアリング」は世界的に見ても成功事例がありません。高級車は、所有することでどんどん自分のモノになっていき、愛車として特別な存在になってこそ、意味を感じられるじゃないですか。
だけどベンツやランボルギーニ、テスラといった高級車にいろいろな場所で乗れますよ、というカーシェアリングがあったとしても、それを羨む人というのは、そもそも高級車のターゲット層ではない人たちなんですよね。逆に本当のターゲットは、むしろ自分らしさを求めているから、カーシェアリングというモデルにはハマらないんですよ。
カーシェアリングは「利便性」の存在なので、オープンに共有されるという方向ですが、高級車は「意味性」の存在なので、クローズドな方向となり、両者はマッチしないんです。

こういう視点があると、世の中に起きていることの狙いを理解することができ、サービスの裏に隠されている糸みたいなものが見えてくるので、ビービットの皆さんが体験設計をする際にも役に立つと思います。

― 書籍タイトルはどのような経緯で『ジャーニーシフト』になったのでしょうか?

まずは、中島さんと、MCO副責任者の大田さんと一緒に案出しをしました。二人はずっと「アフタージャーニー」を推していたのですが、このままだと「アフター藤井」「アフターさん」みたいに呼ばれそうで嫌だなと思っていました(笑)。

自分としては、時代の「変化」を表したかったので、パラダイムシフトから取って「ジャーニーパラダイム」という案もありました。ただ、パラダイムって意味が伝わりづらいね、ということで、最終的に「ジャーニーシフト」に落ち着きました。

ちなみにタイトルの付け方については、「After Digital Inspiration Letter Vo.37」※にも書いたので、気になる方はそちらも読んでみてください。

※過去のAfter Digital Inspiration Letter は広報ポータルサイトからご覧いただけます。

― カバーデザインがこれまでのビビットな配色から一転して、モノトーンでシックなデザインになりました。どのような意図があったのでしょうか?

カバーデザインは、ユニークであることと、前作までとは全く違うことにこだわり、デザインチームの松上さんと前田さんに何パターンも試作してもらった中から選びました。

実は初めは、これまでのアフターデジタルのデザインを引き継ぐ案も考えていたんですが、書籍タイトルにもアフターデジタルは入れず、「ジャーニーシフト」という新しいコンセプトを全面に打ち出したので、この機会にデザインもガラッと変えることにしました。

独特で変わったデザインが好きな自分としては普通のデザインを避けたかったことと、加えて書籍の中で「利便性」と「意味性」の話をしているので、それをデザインでも表現したいと思ってました。

試作を繰り返す中で、表紙右上のタイトル部分は誰でも理解しやすい“利便性”を、左側面から底にかけのアルファベットは、人の個性のように一文字ずつ異なるフォントデザインを使用して“意味性”を表現した今のカバーデザインに決めました。

結果として、これまで見たことがないユニークなカバーが出来上がり、とても気に入っています。

『ジャーニーシフト』のカバーデザイン
これまでの『アフターデジタル』シリーズ

― 最後にビービット社員に対してメッセージをお願いします。

いつも支えてくれるビービットの皆さんのおかげで、新たなUXの知識、事例、方法論を生み出すことができています。ありがとうございます!

『ジャーニーシフト』は、普段からUXと真剣に向き合っている皆さんにとって、絶対に面白いと感じてもらえる自信があるので、まずは全社員に読んでもらいたいです。
そして読んだら、そこから生まれた疑問・感想・意見、何でもいいので気軽にフィードバックをして欲しいです。自分としては、いろいろな人の見方や知見を吸収して、今後の活動に繋げていきたいと思っているので、ぜひ一緒に議論しましょう!

また、ご支援しているクライアントの方々にも読んでいただけたら、善いUXを目指すための視点を合わせることができる内容になっているので、どんどんお勧めをして、仲間を増やしていけたら嬉しいです。


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