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Z世代への教育に悩むアナタへ「押さえるべき5つのポイント」

プロローグ

「Z世代」という言葉。皆さん、ご存じだと思います。

Z世代はアメリカでの呼び方でおおよそ1990年代後半から、2000年代に生まれた世代の事を指します。2022年現在では10代前半から25歳くらいの若者がZ世代に当てはまります。

まさに!!
新入社員や若手社員を含んだ世代になります。
Z世代は生まれた時からインターネットが普及しており幼い頃からスマートフォンやSNSに慣れ親しんでいるためネットリテラシーが高くソーシャルメディアを使いこなせる傾向にあります。

その他に、Z世代の特徴として、

1、強く自己主張しない
2、多様性を大切にする
3、承認欲求が強くどう見られるか気にする
4、理不尽な事に従えない
5、効率性を重視する

などがあげられます。

そして、実際Z世代の若者を教育する
上の世代の人たちからは、こんな声を耳にします。

・言われた事しかしないなあ
・反論しない、何を考えているの?
・強く言うと心が折れてしまう
・相談も無しに突然やめてしまう

「ここ数年、若手の教育が上手くいかない・・」
美容業界においても、
そう感じている読者の方は多いのではないでしょうか?

この特集ではZ世代の価値観を知った上でどう教育していくのが良いのか、 5つの特徴を踏まえた対処法をお話していきます。

特徴1 強く自己主張しない

その背景にあるのは、SNSの繋がりでしょう。
Z世代は繋がりを大切にします。朝起きてから夜寝るまで常に友人たちと繋がっているので、24時間フォロワーに対して気を配りながら生きています。

そのため強く自己主張をしないといわれます。
また「周りの空気を読むあまり決断がしにくい」いわゆる「様子見」の傾向があるようです。例えば、Z世代同士で食事を行った時など料理の注文がなかなか決まらないとか。

美容学校の先生方からよく聞く「授業での学生たちのリアクションが少ない、質問が出ない」などの現象もそのせいかもしれません。

美容室の幹部の方から伺う最近の新入社員も同じような傾向です。上司や先輩からすると一見、彼ら彼女らの反応が鈍くてイライラさせられるかもしれません。

ではどういった対応をするべきでしょうか。

教育のポイント「寄り添う」

「なぜ、自分の意見をはっきり言わないのか!」などと高圧的な態度に出るのは完全NG。寄り添う気持ちで接する事が必要です。

具体的には寄り添うマネジメントとも言われる「支援型リーダー」(※)を目指すと良いでしょう。

昔ながらの「支配型リーダー」とは真逆です。ポイントはいくつかありますが「傾聴」「共感」で相手の言葉にしっかりと耳を傾け、信頼を得て導くイメージ。頭ごなしでは無く、「なぜそうしたのか」を尋ね相手を理解してから言うべき事を伝えましょう。

最近では「メンター制度」や「ブラザーシスター制度」といわれるように、入社1年目のスタッフに担当の先輩や幹部が付いて手厚く指導していくやり方を行うサロンも増えています。とはいえ、多くのサロンが人材が余裕があるわけではありません。しかし、目標を共有し「いつでも質問できる」状態にしてくことが大事です。問題を先延ばししないで解決できる方法で離職が減ったという成果もあります。

(※)英語で「サーバントリーダー」とも言います。「サーバント」は英語で「使用人」や「召使い」「奉仕者」という意味があります。サーバントリーダーは「人間が本能的に持つ奉仕したいという感情」を生かした「人から信頼を得て導く事のできるリーダー」です。

特徴2 多様性を大切にする

Z世代は様々なSNSを使いこなすだけではなく、複数アカウントを当然のように使い分けています。

自分の多面性を受け入れてくれるオンライン空間の中で長く過ごし、そこからお互いの価値観を尊重する「言わない空気」が出来上がり「多様性には寛容であるべき」「無理強いはしない」「人に合わせるより、合う人といる」といった価値観が生まれたと推測されています。

その為就職活動においても「誰と働きたいのか」が重要になります。また自分らしく在りたいと望む傾向も強く、人と違う個性が重要だと考えるZ世代は多くいます。


教育のポイント 「個性を尊重する」

ここ数年、美容業界の教育カリキュラムは「全体的から個別」へと変化して来ました。新卒の同期が全く同じカリキュラムではなく、1人1人に合ったカリキュラムを作っていくやり方です。いわば「オーダーメイド型育成」。

数年前の教育カリキュラムはどこのサロンもほぼ同じでした。接客から始まってシャンプー。シャンプーに合格しないと次のステップに進めない為、シャンプーで挫折して離職してしまう人も多くいました。

個別化になった理由は、Z世代の多様化以外に、美容学生のやりたい技術、サロンのメニューの多様化もあげられます。コロナ禍で皆が集まりにくくなった事も拍車をかけたでしょう。

またスタイリストデビューに関してもサロンによっておおよその目安はあるものの、早く進みたい人、少し遅くてもしっかり技術を身につけて進みたい人、色々な技術を並行して習得したい人など様々です。

ここで大切な事は「こんなはずではなかった」とギャップを感じられないよう入社前に「どうなりたいのか」をしっかりヒアリングしておく事です。また進み具合を「見える化」する事をおすすめします。

特徴3 承認欲求が強くどう見られるか気にする


Z世代はSNSで「いいね」と 反応される事が当たり前の状況で過ごしているので、そういった意味合いでは自己承認欲求が非常に高いです。

家族とも仲が良く、思春期の男の子も母親と出かける事も意に介さない傾向があるそうです。さとり世代の息子を持つ我が家では考えられません(笑)

Z世代は叱られた経験も少なく育った為に、叱られた事や失敗する事に過剰に反応してしまいます。そしてSNSでの発信にも慣れている為に自意識過剰な人が多いと言われます。

また「周囲の人と比べて自分が浮いていないかいつも気になる」「人が自分をどう思っているかを気にする」など周りの目を気にする傾向が強いようです。

教育のポイント 「褒めて育てる」

Z世代の承認欲求の強さは「褒めて育てる」という風潮も大きく影響していると思われます。本屋で子育てのコーナーを見ても「褒める」という言葉が溢れています。この風潮に疑問を感じる上の世代は多いと思います。

アドラー心理学では、承認欲求には終わりがなく他者に褒められる事でしか幸せを実感できない事は「依存」になり「自立」の妨げになると言っています。

そこで褒め方にもコツがあります。誰かと比較するのではなく、相手の「過去と現在」を比較して過去できなかった事が現在できるようになっている、その事実を具体的に褒めてください。

また結果だけではなく過程もしっかり褒める事がポイントです。勇気づけるイメージで言葉をかけていただくと良いでしょう。

仮に結果が出なかったとしても過程を褒める事で承認欲求を満たす事ができます。また努力の重要性を認識し今後も努力できる人材になるでしょう。

特徴4 理不尽な事に従えない

実際あるサロンで起こった事例をお話しします。

そこのサロンでは毎年新入社員が入社すると2泊3日で合宿をしています。恒例で毎年行われてきた合宿ですが、ある年の新入社員が「この合宿はどのような意味があるのですか?」とオーナーに聞いてきたそうです。

その時しっかりした回答をしなかったオーナー。その結果、新入社員全員が辞めてしまったそうです。

合宿の「意味」をしっかり説明していればこのような事態にはならなかったでしょう。

新入社員が突然辞めてしまう場合は、「理不尽な事に従えない」と考えるケースが多いようです。今の時代、居心地が悪ければいつでも違う居場所が見つかると思っているのがこの世代。何か不満があればソーシャルメディアで晒されたりするようなケースも少なくありません。

教育のポイント 「意味、why?を伝える」

Z世代は行動する時に「意味や目的を理解」してから動き出す価値観を重視しています。その為「とりあえずこれをやっておいて」と言われても「なぜそれを自分がやる必要があるのかを考え」立ち止まってしまいます。

これでは本人の実力を発揮する事ができません。その為には1つ1つ指示を出す際に、必ず意味や目的を伝えて本人が納得してから取り組んでもらうようにしましょう。

ただし、Z世代はインターネットで答えを簡単に見つける事が当たり前の環境で育ったので「なぜそうするのか」を説明する前に「なぜだと思う?」と自分で考えさせる事も大切です。

美容室で働くには掃除や、洗濯など若者が苦手とする仕事もあります。たまに「こんな事をやるために美容師になったんじゃない」と反抗する人もいるようです。なんの為に掃除をするのか。その意味を説明し、考えさせれば作業ではなく立派な仕事として取り組んでくれるでしょう。

特徴5 効率性を重視する

Z世代には効率を重視する傾向もあります。
Z世代が育った2000年代にはスマートフォン、AI、VR、などデジタル技術の目覚ましい発展が見られました。様々な電子ツールを自然の流れで取り入れ、当たり前のように使いこなす事で効率を重視する意識が生まれました。

恋愛においてマッチングアプリが流行っているのも、合コンでは効率が悪い為だそうです。

サロン経営においても紙会員証がアプリに変わったり、紙のカルテの電子化などデジタル化が進んでいます。

美容師の仕事はお客様相手の技術職でAIに代替えされない仕事と言われますが、集客、求人、教育の分野では今後デジタル化が進行していくでしょう。

教育のポイント 「カリキュラムの工夫」

Z世代は短い時間で最大限の結果を求める傾向にあります。
その為サービス残業や業務後の付き合いに関しては嫌悪感を抱くのが特徴です。社会問題になったほどの長時間労働による心身の喪失や、働き方改革などへの関心の高さが背景にあるとも考えられます。

美容業界においても新卒者は休日・労働時間に非常に関心が高く、プライベートの時間を大切にしたいと希望する学生が多くなっています。

サロン見学の学生に「休憩時間はどれくらい取れますか?」と真っ先にその質問されたオーナーが驚いていましたが、Z世代はそういう価値観だと思ってください。

その為、多店舗展開されているサロンですとアカデミー制度を設け、入社3ヶ月間に集中して教育するサロンも増えました。各店単位や個人店においても営業中のお客様の少ない時間を練習時間にあてる、動画を取り入れるなど、限られた時間で有意義な教育ができるよう工夫されています。

まとめ 未来を担うZ世代

これまでZ世代の価値観とその対処法についてお話ししてきましたが、ここで絶対に避けていただきたいのは「腫れ物に触るかのように接する」事です。

今、部下を叱れない上司が増えていると言います。辞められると困るからと萎縮して、どんな時でも物分かりのいい叱らない先輩や上司を演じていたら、自分が壊れてしまいます。

筆者がZ世代と接して感じる事は「思いは通じる」という事です。
厳しい話も相手の為と思う気持ちが伝われば、こちらの意図を汲み取ってくれます。褒められて育ったZ世代ですが、成長意欲も当然あります。

何より未来を担う人材です。
成長を期待する「育成型厳しさ」は人材育成に不可欠ではないでしょうか。

「自分の事を思ってくれているんだ」そう感じるように、意味を伝え、話に耳を傾け、信頼される関係性を築いてください。そうすればZ世代は大いに能力を発揮してくれるでしょう。

未来のDX教育

■学校教育に変革を起こすもの

教育DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、「学校が、デジタル技術を活用して、カリキュラムや学習のあり方を革新するとともに、教職員の業務や組織、プロセス、学校文化を革新し、時代に対応した教育を確立すること」です。

単にアナログなものをデジタルに置き換えるという「デジタル化」ではなく、教育や学校に変容、変革を起こすことが不可欠な要素です。

■AIが1人1人に合った学習法を提供

未来の学校教育は今のように1人の先生が何十人もの生徒を教える一斉教育ではなくなるといわれています。

子供たちに教育的アプリやゲームの搭載されたノートパソコンさえ与えれば、勝手に自分で読み書きを学ぶようになります。

それと同時にインターネットの使い方も学習するようになり、過去の勉強履歴、質問履歴、ネットでの検索履歴、現在の感情、これらの情報からAIがその子供にとって今、最善の学習方法を提供するようになるのです。

■VRが世界を広げる

また、「VR」によって子供たちがバーチャルな物体とバーチャルな世界の両方を探求できるようになります。ピラミッドなど世界的な史跡をツアーできたり、織田信長など歴史上の人物と会話する事も可能になるなど、テクノロジーの力で教育が大きく変わろうとしています。

■VRは国家試験の勉強でも!?

美容業界においてもテクノロジーを教育に取り入れる動きが活発化しています。

オンライン講習や動画を使った教育などはかなり浸透しています。VRは国家試験の練習などで活用する事例が既に出てきています。

360度、没入感のある映像を見る事ができる為、技術を行う美容師の視点をVR内で簡単に再現する事が可能です。

VRでは講師の質や指導内容に左右されず統一された教育を行い何度でも練習する事が可能です。今後は技術だけでなく接客やクレーム対応などの教育にも活用されるでしょう。

IT後進国と言われる日本ですが、学校教育でのDX化は政府の「GIGAスクール構想」(※)が進み準備万端だそうです。

テクノロジーを当たり前のように取り入れる子供たちが美容業界に入ってくる未来はすぐそこに来ています。美容業界の教育の未来はDX化無しに語る事はできないでしょう。

(※)GIGAスクール構想とは、2019年に開始された、全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み。コロナで加速し小・中学生の約50%が所有しています。

・参考文献
「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?」(原田 曜平/著)
「モチベーション革命」(尾原 和啓/著)
「幸せになる勇気 アドラー心理学」(岸見 一郎 著・古賀 史健 著)
「2030年:全てが加速する世界に備えよ」(ピーター・ディアマンディス/著 スティーブン・コトラー/著)
・参考サイト
Z世代会議 https://z-kaigi.com/

※この記事はSNIPSTYLE10月号にて掲載されました。


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