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【えんとつ町のプぺル】「煙はどうして上に行くんだろう」の答えに辿り着くまで。

キングコングの西野亮廣さんのことを熱く語れるほどではなんだけど、彼の新刊を見つけると必ず手に取っている。そして、必ず「あとがき」のページを最初に開く。それも、あとがきの最後の数行を探す。

なぜなら、そこにどんな言葉が記されているのか知っているから。そこを開けば、ホッと温かい気持ちになれることを知っているから。
最後はハッピーエンドで終わるとわかっているからこそ見てしまう映画とか、田舎のおばあちゃん家に行ったら手作りのあま~い小豆の饅頭が待っているとわかっているような安堵感。(うーん。例えがイマイチ。表現力磨きたい😅)

新刊『ごみ人間』のあとがきの最後はこんな感じだった。

~才能とは挑戦した数だ。
そして次はキミの挑戦を見せてほしい
キミが挑戦し続けるかぎり、僕はキミを応援し続ける
僕はそこそこお金持ちだから、酒場であったらキミにお酒をおごるよ
負けるなよ
学び狂って強くなれ
圧倒的な強さを手に入れて、誰よりも優しくなれ
とりあえず、めっきり寒くなってきたから、体には気を付けてね
キミのこと応援してます。心から。

そう、『応援してます』という言葉が読みたくて、手に取る。どの本も、最後は私たちへの応援メッセージで締めくくられていることが嬉しい。
会ったことはない。でも西野さんの挑戦を遠くで見ていると、この言葉の重みと愛情が伝わってくるのだ。

西野さん初監督で話題の映画『えんとつ町のプぺル』を観に行った。
以前、原作の絵本を一読したことはあったが、ストーリーをほぼ覚えていないかったので、何も前置きのない状態で観たような感じだった。

(画像はすべて、フリー素材をお借りしました。)

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___えんとつだらけの町「えんとつ町」は、朝から晩まで煙だらけ。空はいつも黒い煙に覆われている。町の人々は、その黒い煙の先に何があるのかを知らない、まして何があるのかを見ようともしないし考えたこともない。

しかし、えんとつ掃除屋の男の子・ルビッチは、父親のブルーノからこの世界の上には青い空や星があることを聞いていた。黒い煙の先に星空があることを信じていた。
ハロウィーンの夜ごみ山に現れた、頭は傘、口はバケツ、壊れた望遠鏡の目、体全体がごみでできた「ごみ人間」。
このルビッチとごみ人間・プぺルが出会うところから物語が動いていく。____

映像美と音楽のマリアージュを楽しめたと同時に、こころに響くシーンがいくつもあった。その中で、特に印象に残った場面を2つ書き残そうと思う。主観が入っていると思うが、正直な感想ということで。

まず一つ目。
___ルビッチは、亡くなった父親からもらったブルーのブレスレットをとても大切にしていた。しかし煙突掃除の途中でそのブレスレットを落として失くしてしまう。その話を聞いたプぺルは、ルビッチに内緒で流されたであろうごみ山にブレスレットを探しに行く。

結局、ごみ山でブレスレットは見つからずに戻ってくる。しかし、プぺルはブレスレットがどこにあるのかをちゃんと見つけていた。
「ここにありました」
そう言って見せたのは、自分の頭の中、傘の中心部だった。そこには、ルビッチがずっと探しつづけていたブルーのブレスレットがあった。___

この頭の傘の中に青く光るブレスレットを見た瞬間、なぜかあの『チルチルミチルの青い鳥』が脳裏をよぎった。
探しているものは、遠くではなく案外近くにあって、そして、ちゃんと輝いているんだな、と。
この場面にそんなメッセージがあるのかどうかわからないけど、わたしの中でとても印象に残った。

ブレスレットが見つかり、プぺルは照れて鼻の下をこする。その姿が亡くなった父親の仕草とそっくり。プぺルに父親の姿を見たルビッチは泣き出す。

ハロウィーンは子どもたちが仮装して町を練り歩くイメージが色濃くあるが、死者が還ってくる日でもある。お父さんはルビッチに会いたくて、ごみ人間となって還ってきていたんだ。と気付くシーンでもあった。


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二つ目がこちら。
煙の向こうにある星空を見たくて、いつまでも夢を諦めないで追い続けるルビッチに対して、友だちのアントニオが放った言葉。

___星が見つかったら、あの日、諦めた自分がバカみたいじゃないかっ!
   畜生!


夢を諦めてしまったアントニオにとって、ルビッチの姿は忌まわしくて気に入らない。でも本当は、羨ましくて眩しくて。
これは、子どもより、長く生きている大人の方が共感できるシーンかもしれない。
いつの間にか諦めてしまった夢。見ようとせずに蓋をしてしまった想い。ここが響くということは、わたしの中にも諦めた何かが眠っているということだろう。

そしてアントニオは、言う。
___星はあるよ!
と。
隠していたこころの声が表にでた瞬間だった。
アントニオはまだ子どもだ。(何歳くらいの設定なのかな?)
子どもだからこそ素直に出せたとも言える。純心な想いが大人のわたしには痛いくらいに刺さった。


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「えんとつ町」は一つの町として描かれているが、視点を変えると、こころを象徴しているとも言えそう。
煙の向こうに何があるのか見ようとしない。でも何か違和感がある。
だけど、それは無いものにして、日々を過ごす。
煙はわたしの違和感かもしれない。


二つと言ったが、もう一つ印象に残った言葉がある。
煙突からもくもくと出る煙を見ながら、ルビッチが言った台詞。


___煙はどうして上に行くんだろう。


どうしてだろう。
この問いは何を意味しているんだろう。
高い煙突に登るのを怖がるルビッチに父親は、
「下を見るから揺れるんだ。上を見上げて」
と声をかけるシーンがある。

煙を見ていると、どうしても上を見てしまう。
これは煙からのメッセージかと考えることはできないだろうか。
上にあがっていく煙は、その奥にある青空や星を隠しているけど、決して悪いだけの存在じゃない。
「上を見てごらん。その向こうに何がある?」とメッセージをくれているような気がする。
煙=違和感は、何かを伝えてくれているのだ。

「上を見上げて」
この映画に込められたメッセージの一つかな、と思う。

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