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本を読まない?子どもたち

〜「読む」どころか、「手にとる」ことすらしない?〜

わたしの教室には、このような本棚があります。ここに並んでいる本は、生徒さんには無料で貸し出しをしています。ところが最近、この本を借りていく生徒さんが激減しています。教室には貸し出しノートがあるのですが、この記録によると、この2〜3年のうちにここの本を借りていった生徒さんはたった3人だけなんです。

もともと、教室を始めた頃は、今よりも本は少なかったのに、もっとたくさんの生徒が本を借りてくれたのです。なんか年々、「本」というものに関心をもつ生徒さんが減ってきているような感じをうけています。

教室で一番人気があった本。マンガです。この本はScratch2.0の時代に左の本が学研から出版されました。これは教室でもかなりの子が手に取ったり、借りていったりしていました。その後Scratch3.0に対応した新版(ストーリーなどは同内容)が何故か別の出版社から出ました。人気があったので新版も買ったわけですが、新版を教室で見たり、借りていく子が全くいなくなっているんです…。

というのも、教室内で本棚の本にさわる子も滅多にいなくなっているんです。以前は、教室内で集中力が切れて放浪してしまうような子が、わりとよくこの本棚の本(特にマンガ)を手に取って、テーブルの下に座り込んで読んでるなんてこともあったのです。

ところが、最近はそういうことをする子どもも滅多に見られなくなりました。集中力が切れる子どもがいなくなったというわけではありません。そういう子は必ず一定数いるのですが、教室内を放浪しても、本棚には近寄らないし、本に一切さわらないんですよね。本が並んでいるところを見ると、「何かおもしろいものあるかな?」みたいな印象を持つ子が多いんじゃないかとずっと思っていたわけですが、このところの子どもたちは、恐らくそういうセンスを持っていないようだし、暇つぶしのためにマンガを手にすることすらないように感じてしまったのです。

これはマインクラフトをテーマとしたノベライゼーションでして、完璧な活字本、しかも翻訳モノです。当初「これ読む生徒いるかな?」と半信半疑で置いてみたら、すごく人気があって、借りていって「読み通した」という子が何人も出たのです。マインクラフト人気が以前ほどではなくなったと言えばその通りなのですが、今は、本に触れる子すらいなくなってしまいました。

たったこれだけのサンプル数で決まったことを言えるわけないのはわかっています。でも、わたしが教室をやりはじめた6年前と今を比較しても、あきらかに本という存在に距離感を持っている子どもが増えているような感じを受けてしまうのですね。

わたしはかつて雑誌の編集者でしたので、そもそもバイアスがかかっているという自覚もあるのですが、それでもさすがに最近の子どもたちは本というか、まとまった分量の文字を読む経験が減りすぎなのではないかと、ちょっと心配になっています。

今小学生のお父さん、お母さん世代の人たちは「ゲームをやるとバカになる」と言われて育った世代ではないかと思います。でも、その時代にゲームにのめり込んでいた子どもたちは、そのゲームの情報をどこでゲットしていたでしょうか? 恐らく、コロコロコミックや、ファミコンマガジンなどの雑誌、またゲームの攻略本など、活字メディアから最新情報や攻略法を得ていたのではないかと思うのです。その頃はそれしかなかったですからね。結果として、ゲームをやりながらも案外活字を読んでいたのではないかと思うのです。ゲーム以外でも、何か趣味的なことの情報が欲しいとき、例えば、つりとか、ラジコンとか、ミニ四駆でもなんでもそうです。そういうときにガイドしてくれるのは、たいていが活字メディアの雑誌や書籍だったはずなんです。その結果、ある時代までは、教科書や読書感想文の課題なんかは読まずとも、みんなけっこう活字は読んでいたはずなのです。

わたしは、この「好きなものの情報を活字で得る」という体験が、子どもの発達段階において案外重要だったのではないかと思っています。学校で指導される読書体験なんかより、自分の意思で情報を求めて一生懸命たくさんの活字を読むという体験の方が、その人の能力の形成に寄与するのではないかとすら思ったりするわけです。

ところが、YouTubu の時代になりました。子どもたちがゲームの最新情報、攻略法等の情報をゲットするのは、100% YouTube を筆頭とする動画メディアに変わったのです。

ちょっと前ですが、教室でマインクラフトのワザを披露してくれた男子(5年生)に、思わず「そのネタどこで仕入れたの、攻略本?」と言ってしまったら、こう言われました。

「攻略本? そんなダセーもの見ねーよ!」

まあ当たり前に YouTube なわけですよ。イマドキは。要するに、もう子どもたちは、情報を得るためには、活字など読む必要がなくなったわけなのです。

確かに、LINE等の活字コミュニケーションもあります。SNSで活字を読む機会もあるでしょう。でも、これらは圧倒的に文字量が少ないですし、日本語として誤った表現も多かったりします。すると、「ある程度整った文章を、活字で読むのは教科書だけ」という状況の子どもが増えてきているのではないでしょうか。こんな状況は、過去なかった事ではないかと思います。この状況が続いて、というか、さらに加速して、今の子どもたちが成人する頃に、なにか変な影響が顕在化しなければいいのだがなあ。なんてことまで考えてしまうのです。

まあ、そんな中でも救いのように、本を読むのが好きだったり、文字を読むことを苦にしない子もたまにいたりするのですが、そういう子どもはたいてい、プログラミングの理解度も高く、成長も早いような気がします。プログラミングを教えながら、全然プログラミングとは関係ない話なのですが、ちょっとそんなことを感じる日々でもあるのです。