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たかがファイル名、されどファイル名

「ファイル名をつけて」と言われるとフリーズする子たち

わたしの教室では、Scratchのアカウントを取得せずに、USBメモリを持ってきてもらって、各自ファイルを保存するようにしています。Scratchのアカウントを取得するのは、保護者の同意とメールアドレスが必要だったり、アカウント取得後に、SNSでの諸々などに教室として目を配れないという点もあって、このようにしています。また、PCを扱うに当たって、File Chooser(Windowsのエクスプローラー、Macのファインダーです)の使い方に慣れておいた方が良いのではないかという考えもありました。案の定、子どもたちは、最初のうちはFile Chooserの使い方はまったく知りませんし、しょっちゅう自分のUSBメモリ以外のところにファイルを保存して、「ファイルなくなったー」みたいなことも起きるのですが、それも勉強のうちではないかと思ってます。

Scratchのメニュー欄の「ファイル」から「コンピュータに保存する」を選ぶと、勝手に「Scratchのプロジェクト」というファイルがローカルにダウンロードされるのは、ブラウザの設定のせいです。設定を変えれば、保存時にFile Chooserを表示できるようになります。Chromeの場合は、画面右上の縦三つの点をクリックして、設定>ダウンロード と進んでください。上記の画面が出ますので、「ダウンロード前に各ファイルの保存場所を確認する」をONにすれば、保存の際File Chooserが出るようになります。この設定は、ChromeだけでなくEdgeなどたいていのブラウザに存在します。


File Chooserを使っても、Scratchはデフォルトで「Scratchのプロジェクト」という名前を勝手に付けてきますが、うちではこれを自分で書き換えて保存するように指導しています。何故かというと、後でファイルを探すときに、中に何のプログラムが入ってるのかが全然わからなくなるからなんですね。なので、「ファイルには中身がわかる名前付けようね」という話をします。

とはいえ、教室に入って間もないと、まだタイピングもそれほど上達してませんので、そういうときはわたしが代わりに入力しています。そんなとき、「じゃあ、ファイル名何にする? 教えてよ。僕が打つから」とか言って待っていると、そこでフリーズする子が結構いるんですね。

最初はどうしてそんなこといちいち悩むんだろうと思ってまして、「ほら、さっき作ったゲームの中身を言えば良いんだよ…」といっても、うーんと悩んだまま、言葉が出てこないことが多いんです。そのうちシビレをきらして、「もう何でも良いからさ、なんか名前付けてよ」とか言ってしまうと、おもむろに、

「じゃあ、スーパーサイヤ人!」

とか言われて、ずっこけたりするわけなんですね。こういう感じの子は、3〜4年生では少なくないのです。

たいていの子は変数に名前付けることなんかにはあまり悩まないのに、ファイル名になると、なんか悩む子がいるんですよね。

どうしてなんだろうと思っていたのですが、あるとき思いました。つまり、ファイル名をつけるというのは、さっきまでやっていたことの内容を「10文字程度で表現する」みたいな行為なわけで、これって、よくある国語のテストの「○文字以内に要約しなさい」みたいな事と、本質的に同じことではないのかなと。

だとすると、恐らく3〜4年生くらいだと、そういう国語力的な部分も、まだ発達途上なんですよね。だから最初はしょうがないのだと思うのです。それが、教室でやっているうちに、だんだんと出来るようになっていきます。逆に3〜4年生くらいで、難なくファイル名を思いつけるという子は、比較的高い国語力をもっている子なのではないかと思います。

ただ、中には頑なに「Scratchのプロジェクト」のままで良いと主張して、5年生になってもひたすらそれを積み重ねている子もいたりします。自分のUSBファイルにはすでにいい加減たくさんのファイルがあるので、「ほら、これじゃさ、昔作ったあのゲーム、みたいに探すの大変じゃん」と、ことある毎に言うのですが、頑として「いや、これでいいのだ」「オレは勘と記憶で勝負してるんだ」とかいって、絶対に言うこと聞いてくれないのですよね。屁理屈こねるなら、せめて「前回やったファイルは、日付見ればわかるだろ」くらいの論理的な反論してくれるならまだ良いのですが…(笑)

これも、恐らく最初は国語力の問題だったのではないかと思うのですが、その後やれば出来るようになっているのに、そのままずっと突っ張ってるだけのように感じてます。結局「性格」の問題なんですね。「人から言われたことに従いたくない」という性格部分の表れではないかと思うのです。そういう子って、かならず一定数存在するんです。でも、こういう子に対しては、あまり言うとかえって逆効果になりますので、「さがすの大変だよ〜」とだけ言い続けてますが、いつか改宗してくれるかなあ…(笑)

プログラミング教室というと、なにかプログラムそのものを教えてるだけと思われるかもしれませんが、「プログラムを作る」、「PCを使う」ということの周辺には、プログラムに限らず、いろんな能力が必要になると思うのです。「自分でファイル名を付ける」なんてことが、子どもにとっては案外難しい行為だったりすることもあるのです。そういうこともプログラミングを通じていろいろ経験してもらうことは、案外成長途中の子どもにとって重要なのではないかと思っているのです。