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初回訪問から7:3でお客様により多く話してもらうための事前準備の方法

本記事は「営業アドベントカレンダー」企画(#営業アドベント)の投稿です。

営業アドベントカレンダー10日目は、株式会社BEARTAILの篠原啓輔(@shinoharaksuke)が担当します。

自己紹介

簡単に自己紹介です。
現在は『レシートポスト(旧:Dr.経費精算)』というクラウド経費精算サービスを提供しています。
これまでの経歴は、金融機関、ベネッセグループで長く大企業向けの営業を担当してきました。
大学を卒業してから数えて約20年間、ほぼ無形サービスの法人営業一筋で過ごしてきていることになります。
また、その中で若手営業の育成や研修なども担ってきました。
現在は、売上目標を追いつつ、営業の型化、標準化、仕組み作りに取り組んでいます。
入社時は10名に満たなかった組織も、現在は50名程度に拡大しました。2019年からは新卒も積極採用するようになり、すでに新卒メンバーが大きく売上貢献できるまでになりました。

この記事では、これまで何人も若手営業の育成を任されたり、部下を育てていく中での気づきの一部をまとめてみました。

はじめに

突然質問ですが、営業の初回訪問で、
お客様が話している時間:自分が話している時間
ってどれぐらいの割合ですか?

会社案内をして、サービスや製品の紹介に終始してしまうと、自分が9でお客様が1なんてことにも。
売れる営業は、話上手というより聞き上手。
お客様が話す時間を長くし、その中から最適な提案の糸口を見つけ出すことが重要です。
そんなこと言ったって、なかなか会話が続かない。そして話しもしてくれない。そんな悩みを抱えている営業パーソンも多く見てきました。

初回訪問からより多くの時間をお客様に話してもらうためには「準備」が必要です。その準備の方法について書いていきます。
そこでキーとなる言葉が仮説です。

本記事の対象者

・営業に配属されて間もない人
・法人のお客様となかなか会話が続かない人・続けられない人
・初回訪問でサービスや製品の説明に終始してしまいお客様の課題がなかなか聞き出せない人

営業に仮説って必要?

「仮説を立ててPDCAを高速で回せ!」

営業現場でも、マーケの現場でもよく聞く言葉です。
このような言葉を上司や先輩社員から言われることも多いと思います。
でも法人営業における仮説って一体何?
日経新聞を読んだりWEBで企業のことを検索したり、お客様を想像すること?
想像力にも限界があるし、自社のサービスにはほど遠い仮説しか思いつかないかもしれない。
もしくは、ありきたり過ぎる仮説しか思いつかないかもしれない。

そもそも仮説って必要?

「仮説なんて立てても当りっこないんだから、課題はお客さんに直接聞いたほうがいいよ」という声も耳にします。たしかに、営業パーソンは、ターゲット企業について理解するように頑張っても、所詮は知り得ない情報のほうが圧倒的に多い。社内情報はそうそう流れてこないし、業界情報だって、当該業界にいる人とは情報量に雲泥の差がある。
聞いたほうがいい、聞けばいい、売れる先輩営業は簡単に言いますが、、、
聞きたいけど聞けない、聞いても教えてくれない。これが現実かもしれません。

そんななか、聞きかじった情報を頼りに、仮説を立てたとしても、まっとうな仮説なんてできず、そんな仮説を披露したところで、知ったような口を聞くな、と言われなくもない。

営業仮説が必要な理由

以下の3つです。

・自社とターゲット企業とのつながりを線で結ぶため
・一方的な視点ではなく、双方向的な視点を持てるようになるため
・ヒアリングに深みを持たせて潜在的な課題に触れるようにするため

これらを通じて信頼ある営業担当と認めてもらうことにあります。
そしてもちろん商談化をすすめ、受注率向上につなげていくことにあります。

その第一歩、営業訪問における大事な準備事項、それが仮説作りです。

科学の世界で「仮説」といえば、仮の正解を設定することです。
その仮の正解が正しいか否かを、実験によって検証していく。そのために仮説は用いられます。
しかし、「営業仮説」は、少し違ったニュアンスで私自身は捉えています。
なぜなら、お客様自身も、何が正しいかを理解していないケースが多いからです。
また、法人営業の経験者なら理解されると思いますが、初回訪問先のお客様にズバズバと「あなたの課題はきっと◯◯です」なんて言えないし、信頼関係構築前なら言ってもなかなか聞いてくれないです。
大前段として、この営業担当者にホンキで相談してもいいのだろうか、と思われています。このハードルを越えるために、営業仮説は有用と考えています。
単にアイスブレイクして、商品説明して、見積りを出して、購買を迫る。こうではなく、お客様にするどい質問を繰り返しながら、お客様が気になっていそうなポイントを、業界的に問題になっていそうなポイントを突き、さらに、その問題を解決するための仮案を提示して、お客様をその気にさせる。気づきを与えると言ってもいいでしょう。
とくに無形の商材(サービス)は、成果が見えにくいし、成果が約束されないため、この時点の信頼構築がとても重要です。成果が見えにくいサービスは、担当者に気づきをあたえ、動いてもらう必要があります。
部署を横断で巻き込んでもらったり、稟議書いてもらったり、営業担当では手が出ない部分を、担当者に動いてもらう必要があります。もちろんその前に、その人が推進者か否かはしっかり見極める必要もありますが。

初回訪問でもお客様に十分な時間話してもらうためには、営業仮説を立てるという準備が重要です。
営業仮説=会話のネタって言ってもいいと思います。

営業仮説をしっかり持つことで、適切な質問を繰り返し、お客様からいろんな情報を引き出していき、自分が提案したい核心に迫っていくことができるようになります。

営業仮説を作ってみる

前置きが長くなりすぎてしまいましたが、ここからは実践編。
「営業仮説」を作る過程を見ていきましょう。

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ワークシートも添付しておきます。

FACTベースで情報を積み上げる

まずは大きく、ターゲットとなる会社の方向性を確認します。
追い風が吹いているのか、向かい風が予測されるのか。

業界動向を見るための三種の神器

1)業界地図
2)有価証券報告書/決算短信
3)会社四季報

ターゲット企業が上場企業の場合、私はまず決算短信を見るようにしています。
決算短信には、P/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)のほか、事業上のリスク、経営方針、目標とする経営指標、中期的な会社の経営戦略など、その会社の概略を知るうえでは十分な材料が記載されています。
決算短信を軽く眺めるだけで、その業界は追い風が吹いているのか、向かい風に立ち向かっていく必要があるのか、を確認することができます。
もし、ターゲット企業が非上場企業の場合は、その会社の属する業界トップの企業の決算短信を確認したり、業界地図を見るようにしています。

業界の大きな流れを確認できたら次に、ターゲット企業がどういうポジショニングを狙っているかを、先に挙げた決算短信や企業ホームページ、代表者のインタビュー記事などから押さえるようにします。
業界の大きな流れの中、当該企業はどういう方向に進んでいるのか。
追い風に乗って、売上も拡大しているようなときには、マーケ予算を増やしたり、人を採用したり、設備投資したり、事務所を移転したりするなど積極的にお金を使っていくことになります。逆に、向かい風が予測されると、設備投資を減らしたり、販管費と言われる部分を削りにいったりします(エンプラ向け営業のアカウントプラン作成では、財務諸表をもうちょい読み解いて、原価率やら、販管費率などの分解にも取り組んだりします)

次に、ターゲットとする企業の商流を把握します。どんな商品・サービスをどのような形態で、顧客に届けているのか。有形の消費財なのか、無形のサービスなのか、法人相手なのか、個人相手なのか、それを直販しているのか、代理店を経由しているのか、卸を使っているのか、など。

次にアポを取得した担当者の役割、担当者が所属する部署の役割を全社の方向性に当てはめて考えます。
たとえば、マーケ部の部長さんとのアポであれば、当該企業のマーケの力の入れようを考えます。オンラインマーケはすでに強いものがあるが、採用ページから推察すると、これからはオフラインのイベントに力を入れていきそうだ、またこれらをミックスさせてリードの獲得のみならず、セミナーで受注率アップも担うようになったのだろうか、など。総務部門一つとってみても、伸びている会社、安定企業とでは置かれている環境は異なるので、ホームページの「働き方改革」などの言葉から、役割を想像してみると、お客様とのディスカッションのネタにはなります。
また、同時に、訪問する企業の競合他社の情報も織り交ぜます。あの会社では、あんな取り組みをしていたよな、ということは、それを真似してくるかもしれない。訪問した際に、話題にしてみよう、など。

ここまでは概ねファクトベースで進められると思います。

ここからが仮説作り(FACT情報を使って)

ここからは想像力を発揮するポイントです。ここからが仮説です。

ここまで集めてきた情報を元に、想像力を発揮させます。

大事なのは、下記の視点を忘れないことです。
・自社とターゲット企業とのつながりを線で結ぶため
・一方的な視点ではなく、双方向的な視点を持てるようになるため
・ヒアリングに深みを持たせて潜在的な課題に触れるようにするため

まず、お会いする方が困っていそうなこと、その組織、会社が困っていそうなこと。課題になっていそうなことをピックアップします。
そこに自社の持っている事例を当てていきます。事例は、生のまま使うよりも、少し抽象化させて使うことがオススメ。
◯◯社を成功に導いた■■の事例のように、個別具体的な事例は、マーケ事例としては良いのですが、営業がお客様に直接語るべき事例では、パターンが限定されてしまうため、抽象化させることが肝要です。
たとえばアパレルショップと飲食店は、業界も取り扱い商品も違えど、「他店舗運営」であったり、「アルバイトを多く採用する」などで共通項が見つけてひと括りにすることができます。どちらかにしか実際の事例を持っていなかったとした場合、テーマを共通化すると、その事例を有効活用できるケースが多くあります。

「◯◯の事例ってありませんか?」と問われたときに、そういえばあの会社の事例を当てはめることができないか、と考えるようにすると一つの事例が多く活用できるようになります。

ここまで準備すると、お客様への質問が、あまりに的外れになってしまうことはなくなるはずです。
ほとんどの場合「この営業は分かってるな」と評価を得られるようになります。すると、お客様はどんどん情報を話してくれるようになります。
そこにいろいろな質問を組み合わせて、さらにお客様の情報に厚みを持たせるようにしてください。
自社サービスや製品を使って、お客様を新しいステージに導く提案を完成させてください。

さいごに

いまでも訪問の前には、FACTベースでお客様の情報を集めるようにしています。また、そこからお客様をイメージして、仮説を作り、質問がいろんな角度からできるようにしています。
厳密に7割お客様に話してもらう必要はありませんが、お客様が話す時間に価値があると思ったほうが良いです。

慣れないうちは時間がかかるかもしれませんが、慣れてくると短時間で仮説・質問まで作れるようになると思います。第一印象はとっても大事。初回訪問の振る舞い次第であなたの会社のイメージも大きく変わったりします。

事前準備にしっかり力を注ぐことで、営業パーソンとしてのステージを一歩高めてください。


普段はTwitterで法人営業やSaaS、マーケ、ビジネス、採用に至るまでつぶやいています。ぜひそちらもフォローお願いします。お気軽にメッセージもくださいね。それでは!


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