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営業パーソンでも知っておいて損しない会計な話

本記事は「営業アドベントカレンダー」企画(#営業アドベント)の投稿です。

2020年営業アドベントカレンダー12日目は、株式会社BEARTAILの篠原啓輔(@shinoharaksuke)が担当します。

昨年に引き続いての登場です。今年の寄稿者のなかではたぶん最年長かな?45歳になりました。
錚々たるメンバーに囲まれて、記事にするネタに困ってしまうのですが、誰とも被らなさそうなネタを考えるとやっぱり会計系かな?ということで今年は「営業パーソンでも知っておいて損しない会計な話」として書いていきたいと思います。

今日の記事の対象者: 
収益と利益コストと費用、のような言葉を区別なく適当に使ってしまっている人(区別ちゃんとつきますか?)

みなさん、会計って得意ですか?
一般的に営業パーソンって、会計が苦手な人が多いようです。何をもって得意とするかは難しいところですが、優秀と言われる営業パーソンは、ターゲットとする企業のIRや決算報告書、財務諸表を読み解いて、提案や受注につなげているようです。
また、ポジションが上がると、部門のP/Lにも責任を持つようになるので、できるだけ早いうちに会計の基本は押さえておくのが良いと思います。

営業なら知っているはず次の言葉。意味の違いってわかりますか?

収益と利益

違いなんて考えたことない人がほとんどではないでしょうか。区別をつけずに使っている人をこれまで多く見てきました。
でも、これは英語にすると意外と簡単。

収益=Revenueだし、利益=Profit、全然意味違いますね。
これをさらに数式に変えてみると違いがわかりやすくなります。

収益(Revenue)ー 費用(Expense)= 利益(Profit)

この数式を見ると、収益と利益はまったく違うもの、収益は、売上とほぼ同義となります。
では、収益と売上の違いっていったい何なのか?

収益とは、企業にお金をもたらす収入全般を指します。
そのうち、本業で得られる収入を、売上と呼んでいます。
ただ、売上という名称、呼称がふさわしくない企業、たとえばサービス提供で手数料を得ているような企業は、売上と呼ばず、営業収益としている企業もあります。
一方、本業以外で得られた収入は、営業外収益と呼んで区別しています。
いきなり大きく脱線してしまいました。これより詳細なことは会計本にお譲りします。

では、会計がわかるようになるとはいったいどういうことなのか?

一言でいえば、会社のお金の使い道を理解できるようになることです。またお金の使い方を見て会社の成り立ちを想像できるようになることです。

人となりってお金の使い方に表れますよね。同じように企業のお金の使い方も個性があります。その個性をなんとなくつかめるようになることが会計がわかる、という風に考えています。
簿記3級とか2級とかの資格を取っても、会社のお金の流れ、使い道を理解していない人も結構多くいるように思いますのでこの記事を通じて会計がわかるヒントが得られれば嬉しい限りです。

会社=営利法人は、お金を儲けることがとっても重要です。もちろん会社のミッションを達成することが存在意義ではあると思いますが、その前に、お金を稼げないとミッションどころではなく存在すらできませんから。

会社は、自己資金や銀行などから借りたお金で、製品やサービスを作ったり、商品を仕入れたりして、それを販売、提供することで対価を顧客から得ます。そのお金で、従業員に給料を払ったり、新たな設備投資をしたり、広告を出したりします。
企業の活動には、どの過程においても、お金が介在します。当然ながらお金が介在するということは、それぞれの過程で商品やサービス等が介在し、それぞれに営業パーソンが絡んでいます。お金が動くところに営業ありです。

企業のお金の流れや状態を示したものが、いわゆる財務諸表で、その中でも損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/F)の3つが重要で「財務3表」と言います。

営業パーソンが出した見積書や請求書は、企業の財務諸表のどこかに組み込まれます。
自分の商品やサービスは、お客様の財務諸表のどこに載るのか。
まずここに興味を持つことが大切です。

例えば、産業機器を販売している場合、まず売れたときに、お客様側では資産として貸借対照表に計上されます。それで終わりではなく、その機器が使える年数で按分されて、毎年按分された額だけ損益計算書に費用として計上されます。あ、なんのこっちゃ分からなくなりました?
とにかく、自分の商品やサービスが、どんな風に計上されるのか。ここだけはしっかり押さえましょう。

なぜ、自分の商品やサービスがお客様企業の財務諸表のどこに載るかを把握する必要があるのか?

会社って、当然のことながら自由気ままにお金を使っているわけではありません。そこには計画があり、予算があります。
財務諸表って、たしかに通信簿的に、結果をまとめる側面もあるのですが、期がはじまる前に予測財務諸表なるものも作成するんです。売上はこれぐらいいって、費用はこれぐらいかけて。その費用のうちわけは、、、、という感じで。そのお金の使いみちを争うのが、営業なんです。
4月が期初の会社は、この12月あたりがちょうど予算会議まっさかり。とくに、大きな額を扱ったりする営業はこのタイミングを逃すと、というかこのタイミングで話が詰まってない場合どんなに頑張ろうが手遅れとなってしまいます。なのでこの時期は血眼になって営業ががんばるんですね。

では、営業は財務諸表をどう見るべきなのか?

まずはじっくり数字を眺める、、、のはオススメしません。
木を見て森を見ず、にまずは注意してください。
財務諸表の読み方に正解はありませんが、営業の役割は財務分析ではありませんので、数字を細かく見ていく必要はありません。

オススメの順番は次の通り。

①決算短信もしくは有価証券報告書からその企業が置かれた環境、目指す方向性を確認する。
②その企業のイメージを書き出してみる。仮説立てをするとの同義ですね。
③①と②を加味して数字を眺める。数字の確認は、大きな順に。

せっかくなので、どこか対象企業を決めて一緒に見ていきましょう。わかりやすさ重視で、身近な企業にしてみましょう。
たまたま先日立ち寄ったという理由だけですが今回は「ニトリ」を題材に財務諸表を眺めてみましょう。
※コロナの問題もあったりするので、ちょっと前の情報を使ってみます。

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ニトリのIRのサイトに入ると、2019年の情報を見つけることができました。いろんな情報がありますが、今回は「有価証券報告書」をダウンロードしてみましょう。

まずは、事業年度を確認。
2018年2月21日〜2019年2月20日。2月決算です。
ニトリを始めとして、小売業界は慣例的に2月決算が多いです。
3月が期初となるので、4月はじまりの会社に比べて予算決定の時期も1ヶ月早いので注意しておきましょう。また、4半期決算も4月はじまりの企業と1ヶ月ずつずれるので、経理部門の忙しい時期も異なります。

有価証券報告書は、表紙からはじまり、企業の概況、沿革、関係会社、従業員の状況が並び、事業の状況が記されています。だいたいどこの有価証券報告書も似たような並びです。

数字を見る前に、まずは文章で記されている「事業の状況」を読んでみましょう。

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− 住まいの豊かさを世界の人々に提供する、というロマン
− 2022年には国内外で店舗数1,000店舗(現在は576店舗)
− 2032年には3,000店舗
− グローバル事業強化プロジェクトを発足

ニトリの直近の方向性は、このように記されています。
グローバルを強化しつつ、国内外で出店攻勢をかけて倍々で店舗を増やしていくようです。

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ニトリが対処すべき大きな課題は「グループ成長軌道の確立と新たな挑戦」「お客様の暮らしを豊かにする商品・店・サービスの提供」「グローバルチェーンを支える組織と仕組み改革」

営業パーソンであれば、ここの課題感を押さえておくことは重要です。全社課題は、当然のごとく部門に落ちてきます。部門に落ちてきたときに、自分のサービスはどのようにその課題解決に貢献できるか、なにが提案できるかを吟味すると良いです。

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ニトリが強みに考えていることもまとまっていました。
品質・機能が維持された商品をお求めやすい価格で提供できるように、自社で製品開発。そして独自の物流システム、またトータルコーディネート力。
なんだかイメージどおり。

その他、ニトリが置かれた環境やリスクなどもまとまっています。

数字を読み込む前に、このような情報を読み込むだけでも、ニトリってどんな会社?に答えることができるようになります。

次に、ニトリのイメージをいくつか書いていきます。いわゆる仮説立て。

例えば次のような感じ。
1)価格は押さえ気味で、品揃えがよくて、部屋の一式をまとめてニトリ製品にしやすい。客単価はあがって、利益率は良さそう。
2)お店のレイアウトは頻繁に変わっているので商品の回転は早そう。

1)の利益率は、損益計算書(P/L)から読み取ることができます。
利益にもいろいろ種類があり、売上から原価を差し引いたものが、売上総利益(いわゆる粗利)、そこから販売費および一般管理費を差し引いたものが営業利益。まだまだ続きますが、まずはこの営業利益までを押さえましょう。

2)商品の回転率や総資産回転率を用いて計算することで、どれだけ効率的に商品や資産が回っているかを捉えることが可能です。

仮説立てをして、それを確認するのに、どの数字を見ればよいのか、どんな計算式を当てはめるのがよいのかを考えてから、実際の数字を見ていくようにする。この流れがよいです。必要な数字以外は、じっくり見ない。これがポイントです。

各種数値は、自分で計算しなくても、決算説明資料で説明されていることがほとんどです。粗利も商品回転率もすべて記載されていました↓

営業としては、財務諸表に現れる数字そのものよりも、その数字に至った背景(事業環境や事業の方向性)をしっかり理解し、その視点をもったうえで企業の担当者と話し、提案をぶつけることが大切です。

自分がターゲットとしている企業が上場しておらず、財務諸表を見ることができない場合もよくあると思います。その場合は、ぜひその会社の業界のNo1企業の財務諸表をあたってください。もちろん、会社の目指す方向性は違いますが、その会社が置かれた環境は同じはずです。そこにホームページなどから収集した情報を加味するだけでいろんな仮説立てはできるようになります。

ぜひ、今日から財務諸表にちょっとだけでも触れてもらえるとうれしいです。

会計分野については、もっと面白い話しもありますが、今日はこのへんで。
最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。

↓こちら昨年の記事です。こちらもよろしくです。



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