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なぜあの貧しい家族がアランドロンの美貌に目をつけなかったの?

ルキノヴィスコンティ監督が最後の庶民目線に立った映画「若者のすべて」
この邦題のつけかた素晴らしいですね。
原題なんか「ロッコ(アランドロン)とその兄弟」ですよ。
これで良く集客できたなと思います。
英語タイトルも同じです。

これがまた長い映画なんです。
3時間は超えてたと思います。
初めて見た時にはアランドロンの凄みのある美貌になぜか号泣しちゃったんですけれど、DVDを買ってからは作業中に良く再生していました。
あんまりのめり込めない内容が、アンジェイワイダの「約束の土地」なんかといい勝負で、流しておくのに丁度いいんです。

ちょっと私、いま思い込みだけで書いているのでディティールは間違っているかも知れませんけれど、南イタリアから長男を頼ってナポリまで出て来る未亡人となった母親と5人の息子たち、三男がアランドロンです。

この一家がナポリに出て来たのは最悪のタイミングで、長男の婚約パーティーがおこなわれている最中だったんです。
そりゃ長男にしてみれば迷惑以外の何物でもないですよ。
自分の婚約パーティーを台無しにされた上に、ファミリーの寝床を探さなくてはいけない。

まぁ、そんなこんなで話せば長くなるのでストーリーは端折りますが、次男といっしょにアランドロンも拳闘のジムに通い始めるんです。
長男も拳闘をかじっていたと言うのもあるんでしょうが、ここで私の頭上に大きなクエスチョンマーク。

アランドロンの美貌を見ているでしょう。
どうして彼ら貧しい家族はロッコの写真を映画会社に送ろうと思わなかったのか?
その方がハッキリとしたお金になるでしょう。
無知だったのか、そうだったとしたら無知による貧困はおそろしいものです。

もともとアランドロンご本人も、カンヌ映画祭の会場をわざと闊歩していてスカウトさせたのが、映画デビューのきっかけだったんですから、なにも拳闘にこだわらなくっても、って言うのが私の意見。

いいおうちの出身で、おそらく制作費のかからない貧困家庭を描いた若き日のヴィスコンティの作品だと思うんですけれど、尺は長いわ、話は暗いわで凝視するにはしんどい作品なんですけれど、仕事中に見るには丁度いいんですよね。
たまにアランドロンの美貌がどストレートに視界に入って来たりするので。

この作品を最後に、ゴージャスな作品作りへとシフトして行ったヴィスコンティですが、そのターニングポイントとしてのこの作品は高く評価していいと思います。



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