アイプラ初期☆5の話(月のテンペスト、サニーピース編)

はじめに

 本当にタイトルそのまんまな内容の記事です。
 今年2月末にインストールし早半年、レベルアシストをバンバン使いマネージャーレベルとアイドルレベルがほとんど等しい状態を続けながら自分なりに楽しくプレイしております。
 なぜ今になって突然初期カードの話をしようと思ったのかと言えば、単純につい先週やっと全員の初期☆5が揃ったからに他なりません。最推しの佐伯さんが最後までうちの事務所に来るのを渋っていたのです。なんでだよ。いくらガチャ運が枯渇しているとはいえ、流石に初期衣装揃うまでに半年近くかかるとは想像しなかったわ。
 閑話休題。タイミングが今である理由は前段落にある通りなのですが、始めて割とすぐくらいの時からこのテーマで記事を書くことは決めていました。というのも、アイプラの初期☆5カードのタイプ(スコアラーなど)や属性(ボーカルなど)、各スキルの内容がそれぞれのキャラクターが持つアイドルとしての”核”を反映している、と私が考えているからです。今回は、そうしたカードの性能という観点から、初期☆5を詳しく見ていきます。ただ、想像以上に長くなってしまったので、この記事で論じるのは月のテンペストとサニーピースになります。TRINITYAiLE、LizNoir、長瀬麻奈に関しては後日別の記事で詳しく話したいと思っています(とりあえず熱意だけはあります)。IIIXのお三方は、まだ解釈が固まっていないのとそもそも引けていないのとで、現段階では書く予定はありません。
 なお、ここにある文章は全て私の偏見と解釈に基づいており、他の人の意見や考えを否定したり、これが絶対に正しいと主張したりするものでは決してないことを明言しておきます。

月のテンペスト

長瀬琴乃

 まずは琴乃から。ボーカルのバッファーですが、彼女は初期☆5バッファーでは唯一のSPスキル持ちです。ざっくりと各スキルの性能を述べるなら、SPスキルで全員にクリティカル率上昇、Aスキルで隣接アイドルにボーカル上昇、Pスキルでクリティカル率アップ状態の時自身にボーカル上昇、といった具合です。また、Aスキルはクリティカル率アップ状態の段階が多いほど獲得スコアが上がります。このカードは、SPスキル所持バッファーである点、AスキルとPスキルの両方においてクリティカル率アップの段階数がバフになる点、の2つの点が非常に長瀬琴乃らしいと思います。
 初めに一つ目の点について。私は、琴乃は間違いなくカリスマ性を持つアイドルであると思っています。そして、センターを務めあげるに相応しいとも、思います。ですが、彼女はセンターに立つことで自分自身が輝くタイプとは少し違うようにも見えます。逆にこのタイプは川咲さくらが代表例でしょう。さくらとは異なる性質を持つセンター気質であるからこそ、同じユニット内にいた場合互いの個性を活かしきれないと牧野は判断していました。では、琴乃はどういったアイドルなのか。結論から言ってしまうと、彼女は自ら先陣を切って、周囲をどんどん高みへと連れていくことのできるアイドルだと私は思います。月のテンペストというユニットは、同じ方向を見ていて、前だけを向いて走っている5人が集まっています。手と手を取り合って、というよりかは、むしろ互いに刺激を与え高め合っていく、時に立ち止まりそうな時には手を引いたり繋いだりするのではなく背中を押してくれる、そんなユニット。それゆえ、琴乃が強化効果を付与できるバッファーであるのはまさしく月のテンペストのセンターらしいと言えるでしょう。
 また、SPスキルとは、明確なここぞ!というタイミングで発動させる大技だと思っているので、カリスマ性がある⇒これを持っている、というわけではなく、ライブで大きめのアピールを出してタイミング良く会場のボルテージを大幅に上昇させることができる証拠と認識しています。ですから、長瀬琴乃がバッファーでありながらSPスキルを所持していることから、彼女が周囲を引っ張っている時が彼女にとってライブにおける最大の見せ場である、と解釈できます。確かにこれがアイドル長瀬琴乃の持つ特性なら、スコアラーである川咲さくらや長瀬麻奈とはかなり異質であることもわかります。個人的に面白いと思うのが、本編では月のテンペストとLizNoir、サニーピースとTRINITYAiLEがそれぞれ対比構造をとっていたのに対し、センター個人単位で見ると、むしろ長瀬琴乃と天動瑠依、川咲さくらと神崎莉央の方が共通点を多く持っているところですね。
 続いて、2つ目のAスキルとPスキルの話に移りましょう。これは、琴乃の持つスキル自体、というよりも初期麻奈との相性から見た面が大きいです。初期葵などを始め、クリティカル率上昇のスキルを持つバッファーの多くがその対象をスコアラーとしており、この琴乃にはバフがかかりません(勿論初期☆4沙季や正月沙季など、この琴乃にクリティカル率上昇バフをかけられるアイドルもいますが少数派と言えます)。
 初期衣装☆5麻奈はボーカルのスコアラーで、性能をこれまたざっくり説明すると、SPスキルではスコア獲得(クリティカル率上昇の段階が多いほど効果上昇)、Aスキルでは自身にクリティカル率上昇効果、Pスキルでは自身にテンションアップ効果を、それぞれ持っています。ここで注目したいのがAスキル。自身へのバフ自体は常にかけられるのですが、加えてこの麻奈は自身がテンションアップ状態にある場合隣接するアイドルにクリティカル上昇効果を発動することができます。PスキルはCTが50ビートで継続時間が37ビートなので、ライブ中の8割弱で麻奈はAスキル発動時に隣接アイドルにもクリティカル率上昇のバフをかけられることになります。SP持ちを複数配置させる場合のほとんどが隣接しているため、レーン次第では初期琴乃へのバフを非常にかけやすいです。
 さらに、麻奈から琴乃へのバフがかけやすいだけでなく、逆に琴乃から麻奈へのバフも直接獲得スコアの上昇に繋がります。麻奈のSPスキルは、クリティカル率上昇の段階数が大きいほど効果が上がります。琴乃のSPスキルでは全員のクリティカル率が上昇するので、麻奈の爆発力も上がります。
 琴乃と麻奈の初期☆5は、全く異なるタイプではありますが、それゆえに非常に相性の良い組み合わせと言えます。気質は違っても綺麗にはまる、長瀬姉妹らしい性能だなと思います。実際にはありえなかったことですが、二人が同じステージに立った時にどのような化学反応を見せてくれたのか気になりますね。

伊吹渚

 お次は渚。ビジュアルのサポーターです。所持スキルの性能は、Aスキルで全体のスタミナ回復、一つ目のPスキルでスタミナが50%以下のアイドルのスタミナ回復とAスキル上昇効果、二つ目のPスキルではSPスキル発動前のアイドルにクリティカル係数上昇効果と消費スタミナ低下効果、と概説できます。全てのスキルがスタミナ関連ですね。このカードが示すアイドル伊吹渚の核は前述の初期琴乃に対するサポートに非常に適していることはから特に感じられます。
 初期琴乃の大きな特徴の1つに、SPスキル発動時の消費スタミナがずば抜けて多いことが挙げられます。大抵のSPスキルの消費スタミナが560前後であるのに対し、琴乃は963のスタミナを消費しなくてはならないことを考えると、その差は歴然です。ですから、初期琴乃を編成する際、いつも以上にスタミナに注意しなくてはなりません。そこで、この初期渚の”渚らしさ”に繋がってくるわけです。
 全スキルがスタミナの回復や消費低下効果を示すのは勿論そうですが、それぞれのスキルの対象者にも”渚らしさ”は前面に出ています。まずはAスキル。対象は全体なので、編成される全てのアイドルのスタミナが回復されます。一つ目のPスキルも、スタミナが一定以下のアイドルが対象なので、これも琴乃の回復に使うことができます。スコアラータイプのスタミナ回復などのスキルを所持するアイドルも多い中、いずれもタイプ指定を一切していないので、バッファーである初期琴乃にもしっかりスタミナ回復効果を与えられます。ただ、これでは単にスタミナ回復に最適であるだけであり、初期琴乃へのサポートに向いているとまで言うのは、間違っていないけれどそれは渚の琴乃へ与えるものにとしては弱いですよね。そこで、二つ目のPスキルです。この発動タイミングは「誰かがSPスキル発動前」、効果は「そのアイドルへのクリティカル係数上昇と消費スタミナ低下」。あえてスコアラーなどの単語を用いずSPスキルという書き方をしていることにより、SP持ちバッファーである琴乃に消費スタミナ低下効果を付与できます。SPスキルの消費スタミナが膨大である琴乃にとってこれは非常に大きいでしょう。長瀬琴乃というアイドルを支えるべくアイドルになった伊吹渚らしいスキルと言えます。

白石沙季

 沙季の初期☆5カードは、ダンスのサポーターで、Aスキルで全体のスコアアップ、一つ目のPスキルでAスキル発動前の一人にAスキル上昇効果、二つ目のPスキルで誰かのスタミナが70%以下の時対象のスタミナ回復、といった性能です。また、Aスキルで獲得可能なスコアが非常に大きく、初期こころに次いで初期☆5でバフなしの獲得スコアでは二番目に高いです(上位になる基準としては500%が目安になっているイメージがありますが、スキルのレベルを最大まで上げると初期こころが610%、初期沙季が580%と、初期の中という限定を外しても双方かなり大きいことがわかります。ちなみに前述の渚がAスキルで獲得するスコアは480%)。
 スキルの白石沙季らしさを考える前に、公式サイトに掲載されている月のテンペストの紹介文を引用したいと思います。

夜闇に輝く月のように静謐な存在感と、嵐のような激しい闘志を持つ五人組。
どこか儚さを感じさせる楽曲と、パワフルなダンスパフォーマンスが存在感を放つ。
長瀬琴乃・伊吹渚による息のあったダンス、正確無比な白石沙季の技術力が軸となっている。
加えて、成宮すずの観客を盛り上げるスキルや早坂芽衣の無邪気な姿と、
クールなパフォーマンス姿のギャップも見逃せない。
夜を司る月の引力は、大きな嵐を巻き起こす。

アイドリープライド公式サイト(https://idolypride.jp/character/saki-shiraishi/)より引用

 上の文章からもわかるように、沙季の技術力は全体の軸となるほど安定感を持っています。彼女が月のテンペストというユニットのライブパフォーマンスを底上げしている、と解釈しても良いと思われます。
 さて、それを踏まえた上で沙季のスキルについて考えていきましょう。同じサポーターでも、初期琴乃のサポートがかなり手厚い渚に比べると、よりわかりやすいかもしれません。前述の渚のスキルは、全てスタミナ回復に関連した一方で、沙季のスキルはそれぞれのスキルでサポート効果を発揮する要素が異なっています。スコアアップ、Aスキル上昇、そしてスタミナ回復。さらに沙季の全てのスキルでは、対象のタイプや属性の指定が一切ないため、編成されたアイドルの全員が沙季のスキル効果を受ける可能性を持ちます。つまり、初期沙季は多様な方面から全体のパワーを上げてくれているのです。加えて、初めに触れたようにAスキルで全体のスコアを上げつつ大量のスコアを自分自身でも獲っていくので、周りをサポートしながら、自分自身も確かな実力を持っているとわかります。琴乃の時に書いた通り、SPスキルとはタイミングが合った時に大幅に会場のボルテージを上げることができるものですが、むしろ沙季はここぞといったタイミングを持つのではなく、常に安定して高スコアをたたき出し会場を盛り上げられるタイプに思われるので、SPスキル未所持であることも沙季らしいと思います。
 初期沙季は、多様な効果のスキルを持ち、自分自身でも高いスコアを獲得できる、まさに万能型アイドルと言えるでしょう。そもそもの技術力が高く、全体の力を底上げしてくれる、という月のテンペスト内での白石沙季の特徴と非常に合致していると思います。

早坂芽衣

 芽衣の初期☆5は、ダンスのスコアラーです。初期の☆5では唯一Aスキルを二つ持つスコアラーで、SPスキルでは固定%のスコア獲得、一つ目のAスキルはスタミナが多いほど効果が上昇するスコア獲得スキル、二つ目のAスキルでは自身にスコア上昇効果を付与します。ここではSPスキルの内容、Aスキルそれぞれの内容、そして彼女がスコアラーである、という三点に注目して書いていきます。
 芽衣のSPスキルは、獲得スコアが固定されており、特に自身に対するバフ効果も持ちません。ですが、これは裏を返せばいかなる状況でも安定して高いスコアを獲得できるという意味でもあります。また、自分にバフをかけるのがSPスキルではなくAスキルであるのも、たいへん”芽衣らしい”と思います。この記事では、私がSPスキルをどう捉えているかについて既に何度も登場していますが、そういうここぞという外せない時に常に観客を盛り上げてくれるのが早坂芽衣だと思いますし、でもその時に自分自身に何かしら上昇効果があるか、と言われたらそれほどでもないのだろうな、という印象もあります。強いて言えば、テンションが上がりそうではあります。今後もしスキル調整が入るなら(十分強いので可能性は低いと思われるものの)、SPスキルでテンションアップ効果などはありえるかもしれません。
 次いでAスキルの話に行きましょう。芽衣の一つ目のAスキルが「スタミナが多いほど効果上昇」という性能であるのも非常に彼女らしいですよね。歌とダンスではダンスをより好み、体育が大好きな芽衣(一問一答より)は、ライブでも体力があればあるほど様々なパフォーマンスや時にはアドリブも交えて盛り上げてくれるに違いありません
 私はAスキルとは、観客に見せるアイドルとしての魅力のようなもの、と認識しています。ちなみにPスキルは外からはパッとわからないけれどライブ中裏でサポートしたり自分にバフをかけたりといったものだろう、と考えています。ゆえに、Aスキルを複数持つアイドルはそれだけ多様な魅力をファンに見せている、と言えるでしょう。逆にPスキルを多く持つアイドルは、ファンに見せるパフォーマンスを高めるための努力をそれだけ多く行っているのではないでしょうか(Aスキルを一つしか持っていないアイドルがつまらないわけでも、Pスキル未所持のアイドルが努力していないと言いたいわけでもなく、そのカードではアイドルのどの面を運営が意識的に見せているか、の違いだと思います。誰かを貶めたいなどの意図は一切ありません)。そう考えると、芽衣だけがAスキル複数所持スコアラーであるのは本当に面白いですよね。先ほど引用した月ストの紹介文にもあるように、芽衣は無邪気な姿とライブの激しいダンスのギャップが魅力となっています。どちらのAスキルがどちらの面を表しているのかは定かではありませんし、私はどちらでもあり得るとさえ思っているのですが、異なる魅力が両方あることでさらに早坂芽衣を輝かせていると見ると、二つ目のAスキルがスコアアップのバフ効果を持っているのも納得のことですね。
 最後になぜ早坂芽衣がスコアラーなのか、について考えてみます。早坂芽衣は加入時期が少し遅れて、一ノ瀬怜と同時参加となりました。怜がそのダンス技術を見込まれてのスカウトだったのに対し、芽衣はくるくると変わる天真爛漫で目が離せない様子を見た牧野にアイドルの世界へ誘われました。アイドルとして不可欠で、かつての長瀬麻奈も持っていた輝きを彼女もまた持っていたことがわかります。さらに、なんとなくで始めたアイドルに本気になって、自分も頂点を目指したいと芽衣が思うようになったきっかけは長瀬麻奈の姿です。長瀬麻奈は2022年9月現在3枚のカードが実装されており、そのいずれもスコアラーです。後で詳しく触れますが、間違いなくスターとしての輝きを持ち、一人でステージに立っていた長瀬麻奈がスコアラーであるのは妥当であると思います。そんな麻奈に憧れ、スター性を持つ彼女だからこそ、彼女の初期☆5はスコアラー以外にないのでしょう。

成宮すず

 初期すず、めちゃくちゃ強いですよね。今でも初期さくらと並んで最前線にいます。それはさておき、彼女の初期☆5はビジュアルのスコアラー。SPスキルはコンボ数が多いほど効果が上昇します。Aスキルでは自身にスコアアップ、Pスキルではビート時に自身にAスキルスコア上昇効果、と自分に対するバフ効果を豊富に持ちます。SPスキルはコンボ依存なので高いスコアが出やすいため、自分に対するバフも上手く使うと笑っちゃうくらいのハイスコアが獲れるのでいつも楽しいです。すずらしさを考える上で、今回注目するのは、SPスキルの「コンボ数が多いほど効果上昇」の意味と、成宮すずがスコアラーである理由の二つです。
 SPスキル持ちは総じて「ここぞというタイミングを外さずにしっかりと決めた場合強く眩しく輝ける」タイプにアイドルだと思っているのですが、その発動効果を強めるのが「コンボ数」である点から凄く成宮すずを感じられるんですよね。星見編で描かれているように、すずにはもともと逃げ癖がついています。普段大口を叩いているのに、いざという時には怖気づいて逃げてしまう。なんとなく向き合うことを恐れて、逃げ込む先を探してしまう。そんなきらいを持つ少女でした。でも、なぜ自分がアイドルになりたいと思ったのか、どうして譲れないのかを見つめ直した時、自分の意思で両親と向き合い、説得して見せました。もともと長瀬麻奈を崇拝していたのでアイドルとしての自覚が他のメンバー以上に確立されていた彼女は、逃げ癖を克服したことで、さらにアイドルとして、人間として、輝きを増したように思います。コンボ数が多いほど、つまり逃げ出さず長く続けるほど効果が上昇するこのSPスキルは、人として大きく成長した上でステージに立つアイドル成宮すずにこれ以上ないくらい相応しいと言えるのでは。
 すずがスコアラーである理由ですが、これは早坂芽衣との関連付けにより解像度が上がると思われます。すずと芽衣は、生前のステージに立っているアイドル長瀬麻奈の姿を見てアイドルに憧れた前者と、死後ステージを降りた後も姉としてアイドルとしての矜持を捨てない幽霊長瀬麻奈を見てアイドルに憧れた後者として、かなり対比が効いていて、この二人が作中でも頻繁に絡んでいるのはキャラクター解釈において非常に重要と推測されます。だからこそすずはステージ上での振舞に誰よりこだわっているし、ファンの前でなるべく隙は見せたくないように見える言動も腑に落ちる。すずは神格化した長瀬麻奈に憧れ、芽衣は等身大の人間である長瀬麻奈を見ていた。この差がいつか本編で言及されたりしないかな~と思ってはいるのですが、どうなんでしょうね。少し脱線しましたけれど、何度も書いているようにすずにはステージに立つ者としての自覚が最初からかなり固まっていることが星見編の描写から読み取れます。また、芽衣と琴乃以外の月ストメンバーは、惜しくもオーディションで落とされていたものの最終選考には残っていた面々なので(渚もそうなのかはわからないけど少なくとも沙季とすずは間違いない)、すずは牧野にアイドルの輝きのような何かを見出されていました。沙季は全体的な安定性の高さやこの人なら任せられるのではないかという安心感などから選考に残ったと推測される一方、すずは何が決め手となっていたのか。私が考えるに、それは長瀬麻奈を彷彿とさせるような”パフォーマーとしての覚悟”なのではないでしょうか。星見プロに入ってすぐの彼女も、我の強さがついつい目立っていますが、アイドルとしての覚悟は誰より堅固です。そうした、早坂芽衣とはまた違ったベクトルでの長瀬麻奈との類似性が、彼女をスコアラーたらしめているように思います。

サニーピース

川咲さくら

 月のテンペストの話が一区切りついたので、今度はサニーピースに話題を移そうと思います。個々人の話になる前にユニット全体について話しておくと、サニピの初期☆5の属性は、さくら、雫、遙子の三人がボーカル、千紗がビジュアル、怜がダンスなのですが、これはSunny Peace for You and Me!のライブ準備や楽曲制作での担当と同じになっていて、サニーピースの一つの着地点であるこの曲が確かにサニーピースの原点と繋がっていることの証左の1つのように見えて私は凄く好きです。
 初期さくらは、ボーカルのスコアラーで、SPスキルは「強化効果が多いほど効果上昇」であり、非常にバフがかけやすく、結果ハイスコアをどんどん出してくれるボーカルスコアラーでは現状最強クラスと呼ばれるほどです。Aスキル、Pスキルともに自身にボーカル上昇効果を持ちます。初期さくらの性能とキャラクター解釈の紐づけで注目したいのは、先ほども触れた、SPスキルの「強化効果が多いほど効果上昇」という文言です。
 サニーピースにはSPスキル持ちがさくらしかいません。星見編前半でさくらを中心にした”川咲さくらとその他4人”だったサニーピースの頃とは全く異なる、今の”川咲さくらと一ノ瀬怜と佐伯遙子と白石千紗と兵藤雫”のサニーピースでも(本質において)そうなのだと思います。だからこそ、皆で盛り上げて会場の人たちも含めてピースを繋ぐサニーピースで、ここぞという瞬間にぶちかますのは川咲さくらである、というのは今も変わらないのでしょう。私はこれを決して悲観しているわけでも負の要素として認識しているわけでもありません。それはサニーピースだからこそのことですし、むしろ皆で手を取り合って一歩ずつ進んでいくサニーピースで、外せない絶好のタイミングできっちりはめていくさくらのスタイルが重要だとさえ思っています(I-UNITY決勝など)。そうして輝くさくらが、「強化効果が多いほど」強いのが本当に私は好きなんですよ。後述のさくら以外のサニピメンバーはいずれも何かしらのバフをかけます。そしてその強化内容は全員異なっている。そして川咲さくらは、それら全ての効果を自分自身の力にできるのです。誰の気持ちも捨てずに抱えてステージに立つサニーピースの川咲さくらは、サニピのメンバーがいるからこそ輝ける。そして、さくらは誰のことも否定しない。サニピの5人は皆がそれぞれ違っていたけど、それでも”この5人だからサニーピースだ”と言えるまでになった、その過程で、こういったさくらの性質が大きな役割を果たしたことは明らかです。どの効果も全部全部取りこぼさないで、ありのままを肯定して、その上でさらに輝くさくらのSPスキルは、川咲さくらを象徴するような性能であると言っても過言ではありません。

一ノ瀬怜

 怜の初期☆5は、ダンスのバッファー。Aスキルは全員にダンス上昇効果、一つ目のPスキルは自身にクリティカル率上昇、二つ目のPスキルはクリティカル発動時自身のCTを減少、といった効果をそれぞれ持っています。このカードで今回焦点を当てていくのは、Aスキルと、二つのPスキルのそれぞれの内容です。
 まず、Aスキルについて。さくらの節で述べた通り、サニーピースのさくら以外のメンバーのAスキルは全て全員を強化効果の対象としています。それは、サニーピースというユニットが5人で一つ、誰か一人でも欠けてしまえば絶対に成り立たないという側面が他のユニット以上に強調して描かれているのが大きいでしょう。全員で手を取り、ピースを繋いで、着実に自分たちのペースで歩いていく。だからこそあえてAスキルで、全体バフ効果を発動させているのだと思います。それと同時に、サニピは5人が5人全員異なるから、強化する要素とPスキルで個性が出てくるんですよね。怜はサニピのダンス担当なので、彼女が全体のダンスを上げてくれるのは非常に納得の行く性能です。
 怜のPスキルはAスキルから一転、二つとも自己バフ効果となっています。怜は、そもそもダンスが大好きで、ダンスを仕事にしたいからアイドルへのスカウトを承諾した、そして両親を認めさせるべくダンス大会で優勝するほど上昇志向が強く、負けず嫌いです。皆とピースを繋ぐ、ファンの皆と一緒にステージを楽しむ、というサニーピースの原点とも呼べる気持ちは当然持っていますし、アイドルになった理由が「ダンスが好きだから」である時点で十分そうした性質の人間と言えますが、同時に(アイドルを続けるモチベーションになっていないだけで)誰かに負けたくないという気持ちは非常に強い人でもあります。だからこそ、全体にバフをかけつつ、裏ではPスキルでどんどん自分にバフをかけて自分でもスコアを獲っていくこのスタイルが一ノ瀬怜なのだなあと強く思います。

佐伯遙子

 お次はつい最近事務所に来てくれた初期☆5最後の一人、佐伯遙子さんです。ボーカルのバッファーで、Aスキルで全員にボーカル上昇、二つのPスキルでそれぞれ、スコアラータイプ一人にAスキル上昇、SPスキル発動前のアイドルの強化効果を延長し、クリティカル率も上昇させる、という効果を持っています。この記事で私が注目したいのは、PスキルがスコアラーやSPスキル所持アイドルへのサポートに特化している点です。
 遙子は幼少期からアイドルに憧れ、アイドル以外の将来は考えもしなかった(一問一答より)くらいにはアイドルだけを選んできた人間です。ナタリーでのインタビューや一問一答から、彼女にとってのアイドルやステージが「宝箱に夢が詰まっていて、それが一気に解き放たれる」ようなイメージであることがわかります。ソロアイドルとして活動していた時もずっとそういうアイドルになって、そんなステージを披露したかったのでしょう。けれど、自分自身に一人だけで輝けるような光がないと思い、そうした輝きを持つ麻奈やさくらを羨ましく見ています。センターではなく、スコアラーやSPスキル所持者とわざわざ指定があるのも、彼女がどうにも形容しがたい複雑な感情を向けているのがセンターに立つ人間ではなく、さくらや麻奈のようないわゆるスコアラーであることに起因しているように思われます。流石に誰かに直接言葉で伝えはしないけれど、妬ましかった時もあったはず。また、そうした劣等感と同時に、サニーピースが輝く時に自分も輝いているから、自分はサニーピースのメンバーを輝かせるのが役割で、皆を支えている時が一番輝いているのだから、と周囲のサポートにばかり回って積極的に裏方へ行こうとするきらいも持っています。I-UNITY決勝に向けたLizNoirやTRINITYAiLEによる個別レッスンでも、遙子は周囲にばかり意識を向けて自分のことが疎かになりがちである、と瑠依に指摘されています。ある部分では明確に我があって他ならぬ自分が輝きたいと強く望んでいるのに、別の部分では自分をないがしろにしてまで自分以外を輝かせることが自分が輝いていることと同義なのだと信じている。遙子はいつも自分はサニーピースにいなくてもいいのではないか、と問うているのかもしれません。裏方の仕事をやりたがるのも、自身の存在を許すためでもあるように思います。沖縄イベントでも描かれたように、佐伯遙子の根幹には強烈な自己嫌悪や自身への諦観があるのでは、と私は見ています。そもそも星見編での遙子メインエピソードでは、彼女は「誰かにもうこれ以上はダメだよと言われない限り」という条件を付けて「アイドルを続ける」と言っています。それはつまり、どれだけ彼女自身がアイドルであることを望んで、夢見ていたとしても、他者の言葉一つでそれを諦めてしまうこともありうる、ということです。歪な彼女のスキルが、彼女が欲してやまなかった輝きを持つスコアラーやSPスキル持ちアイドルへの強化効果に繋がっているのだとしたら、とても恐ろしいことだと思います。ただ、私はI-UNITY決勝時の☆5を引けなかったので(引けなかったので)、この歪みに彼女がどう向き合ったのかを知りません。彼女が確かに自分もサニーピースの一員であり、不可欠な人間であること、それを本心から理解した上で、自分にしかできないことを見つけられていたら、その上でもう一度このカードのスキルのような役割を、自身に対する諦念ではなくアイドル佐伯遙子への肯定に基づいて再び選んでいたのなら、本当に嬉しいです。なんか佐伯遙子の話だけ幻覚成分多くないか?

【2023年1月5日追記】

 先日の復刻で満を持してウィズ・ザ・サンシャインを引くことができたので、この幻覚を補正した記事を執筆しました。

白石千紗

 千紗の初期☆5は、ビジュアルのバッファー。Aスキルで全員にビジュアル上昇、一つ目のPスキルでビート時センターにビジュアル上昇、二つ目のPスキルでSPスキル発動前のアイドルに集目効果、をそれぞれ付与できます。
 少々話題は変わりますけれど、千紗を考える上で外せないものの一つは、やはりファッションが好きな点だと思います。自分が好きな服を着るだけではなく、周りの人にもその人の魅力を引き出してくれるコーディネートをしてほしい、その手伝いがしたい、という気持ちは、千紗が他者と関わる時根底にある概念に最も近いと思われるので。千紗は、姉を含め、誰かと関わる時、”相手の力になりたい”との思いが常に根っこにあるような気がします。それはこれまで支えてくれた姉の背中を見ていたからでもあるし、姉の温もりが心地よくて誰かに自分もそうしたあたたかさを与えたいと思ったからでもあるし、白石家で惜しみなく注がれた愛情が彼女を他者を思いやれる人間にしているようにも見える。今まで他の人に多くのものを貰って、じっくり自分のペースでそうした思いを育ててきたのでしょう。だから、千紗は大事な人が迷っている時、足がすくんで動けなくなってしまった時に、ちゃんと背中を押したり手を引いたりすることができるのだと思います。優しくしてもらってきたから、他人に優しくできる。今の白石千紗の善性を作り上げているのは、こうした過去に千紗に与えられた愛情や優しさなのでしょう。
 話が脱線しましたが、そんな千紗がビジュアル上昇効果を所持しているのは、本当に”らしい”と思うのです。ファッションが好き、という要素をしっかり踏まえることで、千紗の根底にある気質も反映していることになるのです。また、ビジュアルを上げるということは、観客の目を引きやすくなることでもあり、Pスキルが集目効果を持っているのも非常に理に適っていると言えるでしょう。SPスキル発動前なので、さくらのここぞ!というタイミングで注目させることができるのは、千紗の”自分のコーディネートで誰かの魅力を一番引き出したい”という意志がなしたいことが果たされているから、彼女本来の善性に由来する特質もアイドル白石千紗を構成する大事な要素であることをはっきり示していると感じられます。サニーピースの5人は、これまで歩いてきた軌跡を5人が出会ってサニーピースになれたことで許して肯定することができるようになった人たちと個人的に思っています。千紗は今までの引っ込み思案で姉の後ろに隠れてばかりだった自分を恥じてどうしても変わらないといけないと思っていたけれど、勿論アイドルになって多くの物事を経験して変わったり成長できたりしたことも沢山あるものの、それで白石千紗の過去が無価値だったなんてことには決してならないんですよね。それまでの日々の一瞬一瞬が今の白石千紗に繋がっていたこと、歩んできた道のりは振り返れば捨てられないものだったこと、それらに気付けたこと、全部が千紗の一番深い本質的な部分と結びついていること。これらがひしひしと伝わってくるスキルたちだと思います。

兵藤雫

 雫の初期☆5はサニーピース唯一のサポーターです。瑠依がその歌声を高く評価したのに違わず、ボーカルタイプ。Aスキルでは全員にコンボ継続効果、一つ目のPスキルではスコアラータイプ2人に消費スタミナ低下効果かつ自身にビートスコア上昇、もう一つのPスキルではAスキル発動前のアイドル一人にAスキルスコア上昇効果かつ自身にステルス効果。ちなみにステルス効果とは、アイプラ攻略Wiki(https://appmedia.jp/idolypride/75192000)によると、「来場している自身のファンが他アイドルへ注目し、他アイドルの獲得するスコアが上昇」とのことだそうです。私はこの記事を書くにあたり攻略サイトでこうしたライブスキルの定義を初めて確認しました。ステルス効果ってそういうことだったんですね。今回はAスキルと、この二つ目のPスキルに注目しながら兵藤雫というアイドルについて考えてみようと思います。でも、その前にまずいつかのイベント「並び立つ歌姫のフルリール」のストーリーについて少し触れてみます。
 このイベントでは、瑠依と雫の二人のアイドルとして正反対なあり方が明らかになります。自分を見てほしいからアイドルを続けている瑠依と、皆を見てほしいから自分は最後であってほしいと望んでいる雫。これは自分に対する諦めや絶望によるものではなく、アイドルファンとしてサニーピースの魅力的なアイドルたちをもっと知ってほしいという気持ちに根差しています。自分にしかできないことがあるという自覚はした上で(ファンの女の子と向き合うエピソードなどはその代表)、もっと皆を見てほしいと思っているのです。
 これらの彼女の性格を踏まえると、初期雫がステルス効果を所持しているのも非常に納得の行く話です。自分に本来向けられるはずだった視線を他のアイドルに向ける、というこのPスキルの効果は、雫の根幹にある”アイドルが好き”、”サニピの皆を一アイドルファンとして好き”という気持ちと密接に繋がっています
 また、東京編終盤のI-UNITY決勝のステージでさくらに続いて雫が歌いだし二人で綺麗なハーモニーを奏でるのを見た私の脳裏に過ったのは、初期雫のAスキルが持つコンボ継続効果でした。最初に飛び出すさくらをサポートしてあの場を確かに繋ぐことができたのは雫が動いたからで、Aスキルを失敗してしまいそうになった仲間を支えコンボを繋ぐこの初期雫の持つはたらきとたいへんよく合致しているなと感じたのです。この瞬間雫が動くと確実に雫に注目が集まります。それでも、さくらの気持ちを、皆の気持ちを繋ぐため、自身への視線を他に向けさせることよりも、歌声を紡いで繋ぐことを選んだのです。この雫の選択と意志を見ると、あくまでステルス効果はPスキルであり、Aスキルという、間違いなく自分がある程度の注目を集めるスキルの発動ではコンボの継続効果を所持していることがかなり示唆的であるように思えます。

おわりに

 ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。冒頭で書いた通り、本当ならTRINITYAiLEとLizNoirについても話すはずでした。今既に1万4千字を超過しています。なんてことだ。
 こじつけにしか思えなかったり幻覚ばかり詰め込まれていたり、そもそも話がまとまっていなかったり、と読みにくい記事だったと思います。私自身ここに書いた内容が絶対であるなどとはちっとも思っていないので、このスキルは私だったらこう解釈する、などの意見がありましたら教えていただけるとたいへん嬉しいです。
 長々とお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

【2022年9月7日追記】
 TRINITYAiLE、LizNoir、長瀬麻奈について考えた後半の記事を公開しました。こちらは人数が少ないにもかかわらず、なぜだかこの記事よりも字数が多く、長くなりました。もしよろしければ後半戦にもお付き合いいただけると嬉しいです。
 また、以前の公開の際に書き忘れてしまいましたが、AppMediaの攻略Wikiに非常に助けられました。本当にありがとうございました。

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