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アセンブルハーモニーとウィズ・ザ・サンシャインから見るアイドル佐伯遙子

はじめに

 本日1月3日が何の日がご存じだろうか。人によって浮かぶものは様々だと思うが、私にとってこの日は非常に大切な日の一つである。――そう、推しの誕生日だ。
 ということで、佐伯遙子さんお誕生日おめでとうございます!!!!私がアイプラのアニメを見た当時は誰の誕生日も知らず、アプリをダウンロードしたのもリリース翌年の2月末日だったので、実はこうして誕生日を祝うのは初めてだったりする。自己満足でしかないけれど、お祝いに何かしたいと思い立った私は、偶然にも直前の復刻ガチャで実装当時から欲してやまなかったウィズ・ザ・サンシャインを引くことができたので、改めて現在のアイドル佐伯遙子と向き合うことに決めた。そういう経緯で今筆を執っている。

 さて、長々とした前置きは置いておいて、この記事の主題はタイトルにもあるようにアセンブルハーモニーとウィズ・ザ・サンシャインという二種類の☆5の比較に着目しながらアイドル佐伯遙子について考えることである。以前投稿した2本の記事を読んだことのある方にはとっくにお馴染みかもしれないが、私はカードのスキルを個々人の特性と結び付けることがとても好きだ。拡大解釈と言われればそれまでではあるものの、私はどうしても公式側から提供された全ての情報には何かしら物語上の意味が存在していると強く信じたいのだ。
 今回なぜあえてこの2種類のカードを選んだのか。まずアセンブルハーモニーのカードについては、佐伯遙子の初期☆5であり、私はこのカードのスキルが佐伯遙子のアイドルとしての”核”を反映していると考えている。現に初期衣装のカードストーリーは、当人の過去や現在を改めて描いており、そこには確かに他のカード以上に各キャラクターの本質を読み解く手がかりが存在していると言えよう。
 しかし、初期衣装以外にも本編やキャラクター解釈の根底に深く関わったエピソードのカードはいくつかある。例えば、東京編終盤の展開に直接関連するイベント「導きのファンファーレ」で実装になったウィズ・ザ・サンシャインのさくらと遙子のカードなどは、その典型である。東京編終盤において、サニーピースの5人は自分たちがトップアイドルのその先で見たい景色、着地点を確立した。すなわち、彼女たちはある意味一度アイドルとして完成したとも言うことができるのだ。勿論、これから先もサニーピースは進化と躍進を、そして彼女たちと皆での「旅」を、続けていくだろう。けれど、初期☆5から彼女たちはどのように変化したのか、逆に変わらないものは何であるのか、それらを分析するにあたってはこれ以上に有用なものはない。さらに、このカードのストーリーでは現在の彼女に加え、今後佐伯遙子がどんな未来に駆けて行くのかを予感させる描写もあった。つまり、佐伯遙子の過去と現在がアセンブルハーモニーに映し出されているなら、現在と未来を暗示するのがウィズ・ザ・サンシャインであるとの見方も十分に可能である。
 以上の理由から、今回アイドル佐伯遙子の歩んできた道のりと踏み出していく未来とを論じる本記事では、これら2つのカードの性能とストーリーに焦点を当てることとした。

 手始めに、両方のカードのスキル性能を並べてみる。そこから、差異だったり類似点だったりを探して詳しく見ていこう。なお、以下のスキルはいずれもレベルを最大にした状態であり、データはAppMediaさんの攻略Wikiを参考にした。

アセンブルハーモニー【とても頼れるお姉さん】
ボーカル/バッファー
Aスキル:450%のスコア獲得 全員に6段階ボーカル上昇効果
Pスキル1:スコアラータイプ1人に9段階Aスキルスコア上昇効果
Pスキル2:誰かがSPスキル発動前、対象1人の強化効果を16延長かつ対象1人に8段階クリティカル率上昇効果(ライブ中1回のみ)

参考:[とても頼れるお姉さん]佐伯遙子の評価とライブスキル/エール【アイドリープライド】
https://appmedia.jp/idolypride/6569497

ウィズ・ザ・サンシャイン【私、決めたよ】
ボーカル/サポーター
Aスキル:520%のスコア獲得 自身がボーカルレーンの時隣接するアイドルの強化効果をAスキル前に移動
Pスキル1:自身がボーカルレーンの時全員に8段階Aスキルスコア上昇効果
Pスキル2:スコアラータイプ2人に、7段階スコア上昇効果かつ5段階ビートスコア上昇

参考:[私、決めたよ]佐伯遙子の評価とライブスキル/エール【アイドリープライド】
https://appmedia.jp/idolypride/75540802

 こうして列記すると、意外といくつか共通項があると見て取れるだろう。また、明確に異なっている部分もより明白になった。
 この記事では、主に2つの観点から2枚のカードを比べてみたい。「①スコアラー強化からAスキルスコア強化へ」、「②新たな条件『自身がボーカルレーンの時』」だ。これらをそれぞれのカードストーリーとも絡ませながら、詳細に見ていこうと思っている。ちなみに、本記事における「属性」はボーカルやダンスなどを、「タイプ」はスコアラーやバッファーなどを、それぞれ指しているものと考えていただきたい。また、あくまでこの記事の内容は筆者個人の独断と偏見に基づくものであり、これが絶対の正解であると主張したり異なる解釈を否定したりするつもりは一切ないことを明記しておく。

①スコアラー強化からAスキルスコア強化へ

 それでは、両者の強化効果付与の対象の中心に注目することから始めよう。この節では、この差異から、佐伯遙子の本質、最も根底にある揺らがぬ”核”を考えていこうと思う。
 アセンブルハーモニーでは、Aスキルは全体への強化効果であるものの、Pスキルの一つ目は言わずもがな、二つ目もスコアラータイプでないSPスキル所持カードがほとんどいないことから、基本的にはどちらもスコアラータイプが想定されていると考えられる。Pスキル1に「Aスキル発動前」、Pスキル2に「SPスキル発動前」という条件がそれぞれ付けられていることも、スコアラーが輝くその瞬間に火力を上げる、そのためのPスキルたちであるように見えるのだ。以前別の記事(https://note.com/beans_sprouts/n/nb8dcd38e8387)で私は、アセンブルハーモニー佐伯遙子の特筆すべき点に「PスキルがスコアラーやSPスキル所持アイドルへのサポートに特化している」ことを挙げた。というのも、佐伯遙子が麻奈やさくらのような生まれ持っての輝きのある所謂スコアラータイプのアイドルに羨望や憧れ、劣等感、それから少しの妬ましさ、そうしたものが入り混じった複雑な感情を向けていることは、作中で繰り返し描かれてきているためだ。以下に引用するのは、前述した記事における私の佐伯遙子の人物評とそれを踏まえた上での初期☆5の性能分析である。

 遙子は幼少期からアイドルに憧れ、アイドル以外の将来は考えもしなかった(一問一答より)くらいにはアイドルだけを選んできた人間です。ナタリーでのインタビューや一問一答から、彼女にとってのアイドルやステージが「宝箱に夢が詰まっていて、それが一気に解き放たれる」ようなイメージであることがわかります。ソロアイドルとして活動していた時もずっとそういうアイドルになって、そんなステージを披露したかったのでしょう。けれど、自分自身に一人だけで輝けるような光がないと思い、そうした輝きを持つ麻奈やさくらを羨ましく見ています。センターではなく、スコアラーやSPスキル所持者とわざわざ指定があるのも、彼女がどうにも形容しがたい複雑な感情を向けているのがセンターに立つ人間ではなく、さくらや麻奈のようないわゆるスコアラーであることに起因しているように思われます。流石に誰かに直接言葉で伝えはしないけれど、妬ましかった時もあったはず。また、そうした劣等感と同時に、サニーピースが輝く時に自分も輝いているから、自分はサニーピースのメンバーを輝かせるのが役割で、皆を支えている時が一番輝いているのだから、と周囲のサポートにばかり回って積極的に裏方へ行こうとするきらいも持っています。I-UNITY決勝に向けたLizNoirやTRINITYAiLEによる個別レッスンでも、遙子は周囲にばかり意識を向けて自分のことが疎かになりがちである、と瑠依に指摘されています。ある部分では明確に我があって他ならぬ自分が輝きたいと強く望んでいるのに、別の部分では自分をないがしろにしてまで自分以外を輝かせることが自分が輝いていることと同義なのだと信じている。遙子はいつも自分はサニーピースにいなくてもいいのではないか、と問うているのかもしれません。裏方の仕事をやりたがるのも、自身の存在を許すためでもあるように思います。沖縄イベントでも描かれたように、佐伯遙子の根幹には強烈な自己嫌悪や自身への諦観があるのでは、と私は見ています。(中略)彼女のスキルが、彼女が欲してやまなかった輝きを持つスコアラーやSPスキル持ちアイドルへの強化効果に繋がっているのだとしたら、とても恐ろしいことだと思います。

アイプラ初期☆5の話(月のテンペスト、サニーピース編)
https://note.com/beans_sprouts/n/nb8dcd38e8387

 私は以前の初期☆5カードの性能分析の記事で、Aスキルを「観客に見せるアイドルとしての魅力のようなもの、Aスキルを複数持つアイドルはそれだけ多様な魅力をファンに見せている」、Pスキルを「外からはパッとわからないけれどライブ中裏でサポートしたり自分にバフをかけたりといったもの、Pスキルを多く持つアイドルは、ファンに見せるパフォーマンスを高めるための努力をそれだけ多く行っている」とそれぞれ定義した。これを前提とすれば、アセンブルハーモニーで佐伯遙子は観客には全員を強化する面を見せる一方で、裏のサポートなどは全てスコアラータイプへ向けられているという結論に至ることは至極当然だろう。前述した自己嫌悪や自分を諦めている様子や、麻奈やさくらへ抱く感情から察するに、スコアラーが輝けなければ上には上がれない、という観念があってもおかしくない。一問一答で彼女は「(アイドルは)常に輝いていて、憧れてもらえないとダメだ」と断言しており、輝けている実感のない自分と比べてなおのことそうしたスコアラーをいかに輝かせるのかを重視する認識が強まっていたのかもしれない。なるべく観客には悟られぬよう、でもできうる最大限のリソースを割いてスコアラーへバフをかける。これが、アセンブルハーモニーの時の佐伯遙子のスタイルであったかに見える。
 他方ウィズ・ザ・サンシャインでは、二つ目のPスキルはスコアラータイプが対象だが「スコア上昇とビートスコア上昇」なのでライブ中常に発動しており、加えて一つ目にはタイプの指定やSPスキルの有無はなく、強化対象が全員となっている。これは非常に大きな変化であると言えよう。また、このカードのAスキルは、「隣接するアイドルの強化効果をAスキル前に移動」するというもので、2022年12月26日現在強化効果移動スキルを持つカードは他にもいくつかあるものの、移動先がAスキル前であるのは2022年12月26日現在この佐伯遙子のカードしかない。この強化移動が発動する条件下ではPスキル1も発動するため、全員にAスキルスコア上昇効果が一定時間付与され、この2つの組み合わせにより、Aスキル前にAスキルスコア上昇効果を持っていくことも可能となる。ここから、ウィズ・ザ・サンシャインは他のカードと比べてもタイプを問わないAスキルスコア上昇に偏っており、この時佐伯遙子は裏でも観客に見せる面でもAスキルに強化効果を付与していると言える。
 先に書いた本記事におけるAスキルの定義を今一度確認してみたい。Aスキルとは「観客に見せるアイドルとしての魅力のようなもの」で、「Aスキルを複数持つアイドルはそれだけ多様な魅力をファンに見せている」とし、一言でまとめるなら、「アイドル個人が発揮する輝き」となる。これを代入した時、ウィズ・ザ・サンシャインにおいて佐伯遙子は同じステージに立つアイドル――それがどういったタイプのアイドルであれ――の持つ輝きを最大限引き出そうとしている、との結論が導き出せる。自分より他人を優先する行動が自然と、さもそれが当たり前であるかのようにできてしまう彼女らしい軸と解釈することはそこまで乱暴ではあるまい。
 話題は少し逸れてしまうが、読者諸賢に想起していただきたいのは、I-UNITY決勝での佐伯遙子の動きだ。さくらと雫の歌声を会場全体に届けようと客席に降り立った時の彼女のモノローグは「こういう時こそ、私がしっかりしなきゃね!」であり、そこには暗いニュアンスは一切含まれていない。以前の彼女の利他行為には、麻奈やさくらのような輝きを持たない自分はサニーピースのお荷物になってしまうから他の皆の役に立つことで少しでも存在意義を見出そうとしていた、という理由もあっただろう。実際、ウィズ・ザ・サンシャインのストーリーで、彼女はサニーピースのメンバーに置いて行かれてしまう日が来てしまうのではないか、と悩んでいたことを牧野に打ち明けている。けれど、星見編で女優にならないかという誘いを受けたり、自分の輝きを信じてくれる人がたくさんいることを改めて知ったり、多くの経験――それこそウィズ・ザ・サンシャインのスキル名にもある「努力してきた自負」――だったりのおかげで、彼女は自分の前に広がる無数の選択肢に気が付いた。その上で、今度は自分の未来への希望や夢に対する執念を手放すことなく、この「他のアイドルに輝いてほしい」という気持ちを選び取ったのである。I-UNITYファイナルでの動きは、自己卑下や諦念ではなく、アイドル佐伯遙子としての誇りを胸に抱いて、新たに選んだ信念に基づく最初の振る舞いだったと見ることは十分に可能だろう。あの舞台で佐伯遙子が踏み出した一歩にはそうした重みも感じられる。
 また、このライブでの佐伯遙子はさくらたちを「スコアラーだから」ではなく「対等な友であり仲間だから」、力になりたい、もっと輝く手伝いがしたいと思ったのだと考えられる。二つ目のPスキルが、スコアラータイプがSPスキルを使う時に、ではなくむしろそうでない時にもしっかり活きるようなバフ効果となっていることは、SPスキルを持っているスコアラーではなく、同じステージに立つ対等な仲間としてスコアラーのアイドルを輝かせることを望むようになった証左ではないだろうか。つまり、SPスキル所持アイドルへの屈折した感情に基づくのではなく、SPスキルを持っていることに重きをおいているからでもなく、ただ対等な仲間だから、もっと輝いてほしいと彼女は願っている、と推測できるのである。
 この節の冒頭で立てた問いに戻ろう。佐伯遙子が何度も迷い立ち止まりそうになりながらも走り続けて、多くの部分に変化があった現在も変わらず彼女の根っこにあるものは一体何だろうか。これは、牧野や瑠依などからの言及がストーリー中にある、自分より他人を優先するという佐伯遙子の利他主義だ、と筆者は考えている。②でも触れるが、以前はその自己犠牲が過剰で、グループの安定性を高めながら佐伯遙子当人の不安定性にも寄与していた。それでも、これは間違いなく彼女の善性であり、最大の特長である。なぜなら、そうして他人のために行動することを、自分にできること・自分のやりたいこととして、多様なあり方を提示されてなお選び取ったくらいなのだから。ウィズ・ザ・サンシャインの強化する要素がAスキルを中心としていることが、その証の一つとなるだろう。
 この節での内容を簡潔にまとめよう。アセンブルハーモニーから読み取れるスコアラーへの様々な感情について彼女が決着を自分なりにつけたことは、ウィズ・ザ・サンシャインのスキルからも見ることができる。そして、佐伯遙子を佐伯遙子たらしめる、彼女の”核”も言える特性は、ウィズ・ザ・サンシャインのスキルからもまた明らかである。スコアラーへのコンプレックスと折り合いがついて、改めて自分が他のアイドルとどう向き合いたいのかを考えた時、そのアンサーとして「隣接アイドルの強化効果をAスキル前に移動」がある、という筆者の考えを支持するならば、この解釈に依拠して、佐伯遙子の”核”の正体が彼女の愛他主義であると展開することにも異論はあるまい。

②新たな条件「自身がボーカルレーンの時」

 ①で論じた通りウィズ・ザ・サンシャインのスキルにはSPスキルないしAスキルの発動前といった文言はなくなっている。その一方で、AスキルおよびPスキル1には、アセンブルハーモニーの時とは全く異なる新しい条件が置かれていることにも気が付くだろう。「自身がボーカルレーンの時」という、このカードの使いどころを大きく狭めるそれは、佐伯遙子の変化をまた別の切り口から見せてくれている。
 ①で引用した記事でも言及のある東京編での瑠依による遙子評によれば、彼女は「周囲に気を配るばかりで自分のことが疎かになりがち」らしい。佐伯遙子が自分を卑下してどこか諦めている様子は、このある種自己犠牲的な利他行為からも窺える。アセンブルハーモニーのカードストーリーでも、牧野やスタッフなどが本来行うはずの作業を率先して担っている描写がある。①との繰り返しになるが、こうした他人を優先する性根が佐伯遙子の長所であり彼女の善意を象徴していることは疑いようもない。しかし、今までの彼女のやり方は、心なしか不安定であると見受けられた。自分を軽視しているきらいがわりかし全面に出ていたからかもしれない。
 それとの関連で見ていくと、この「バフ効果が自身がボーカルレーンの時に限定される」という性質は、一見なんてことなくとも、実はかなり重要だったりする。自身を代償にしてまでなるべく他人に心を砕こうとしていた彼女が、ウィズ・ザ・サンシャインにおいては自分がリソースを割ける得意分野の時にのみフルパワーでバフを付与している、と考えられるからだ。
 佐伯遙子の歌についての得意不得意に関しては本編中で直接明示されているわけではない。しかしながら、アセンブルハーモニーとウィズ・ザ・サンシャインの両方でボーカル属性だったり、一問一答内でダンスより歌の方が好きと(悩みながらも)答えていたり、と佐伯遙子は歌の分野が好きで得意なのではないかという推測が立てられる。特にアセンブルハーモニーでのサニーピースの各員の属性はそのままそのキャラクターの強み、さらにはSUNNY PEACE for You and Me!の制作担当分野と繋がっている。以上より、佐伯遙子のカードがボーカルレーンにいる=佐伯遙子が現在周囲に気を回す余力のある状態にいる、という等式の説得力はある程度担保できる。
 これまで自分を蔑ろにしてまで他者を立てていた彼女が、自分に余裕のある場合にのみAスキルとPスキル1も発動させて強化効果を与え、そうでないケースではPスキル2のみを用いる、を基本スタイルとして立ち回っている。自身に余力がない時には全体ではなく一部のアイドルのみを気にかけることとなったのである。
 その代わり、佐伯遙子は自分自身へもっと意識を向けることが可能となった。少し前の段落で、Aスキルを「観客に見せるアイドルとしての魅力のようなもの、Aスキルを複数持つアイドルはそれだけ多様な魅力をファンに見せている」とした。この定義に則れば、Aスキルとはアイドル個人が発揮する輝きと言い換えることもできる。そして、このAスキルでの獲得スコアが、アセンブルハーモニーとウィズ・ザ・サンシャインとを比べると、前者が450%、後者が520%、と大幅に増加しているのだ。単に実装時期の違いによるものにも見えるかもしれない。けれど、☆5カードを最大レベルまで上げた時のバフ効果一切なし状態でのAスキル獲得スコア(※)は、その平均値が458.1818182%であり、中央値が460%、第三四分位数が500%であったことから、ウィズ・ザ・サンシャインのAスキルスコアが上位25%に入ることがわかる。中央値のすぐ下であるアセンブルハーモニーと比較すれば、なお一層その上昇幅に驚かされるはずだ。
 ウィズ・ザ・サンシャインのストーリーで、彼女はサニーピースの仲間と少しでも長く、いや、ずっといつまでも、隣で立ち続けるべくこれからは今までの何倍も努力することを固く決意している。自分がサニーピースにいても良い人間なのかどうかを何度も悩んだと彼女は口にするが、それを牧野に打ち明けた時点ではもう既にその迷いを断ち切っていた。相応しくないかもしれない、どんどん置いて行かれてしまうことだって考えられる。なら、自分がもっともっと努力して、彼女たちに追いつこうと走り続けていたい。そこには、最早引け目も自己卑下も諦念もない。今より高く、遠い、サニーピースとして出会えた仲間たちと同じ場所で、輝きたいという夢への”執念”のみ。星見編で、アイドルをやめないと宣言する際「誰かに言われない限り」という限界を定めていた彼女は、もうそこにはいなかった。他人に何を言われるかではなく、自分がアイドルとして輝いていたいという心からの強い想いに従い、欲張りで諦めが悪くて、どこまでも一直線。そんな佐伯遙子の姿を、私はひどく眩しく思った。
 この節の内容を総括しよう。常に全体へ強化効果を付与するアセンブルハーモニーに対し、ボーカルレーンにいる、すなわち自身にステージ上のアイドル全体に目を配るためのゆとりがある場合にのみ、隣接アイドルの魅力を最大に引き出し、かつ全体へバフ効果をもたらすウィズ・ザ・サンシャインでは、その分自分自身に意識を割くことが可能となった。それが当人の獲得Aスキルスコアの上昇という形で表れた、というのが筆者の見解だ。

※2022年12月25日20:40現在の☆5カード(n=99)。Aスキルを複数持つものに関しては、先に発動する一つ目のスキルの獲得スコアのみを計上した。また、どのカードもスキルのレベルを最大にした時の獲得スコアを分析の対象としている。

終わりに

 かなり長さもあり、まとまりのない文章でここまで読んでくださった皆様には本当に頭が上がらない。
 余談だが、筆者は、佐伯遙子のアイドルとしての――少なくとも麻奈やさくらなどと同質の輝きは、持っていないのではないかとずっと考えていた。けれど、ウィズ・ザ・サンシャインのストーリーはそれを完全に覆してくれた。彼女が言うだけで、どれだけ途方もない夢だって実現できるように思える。それは間違いなく、見てくれた誰かに夢を見せ、憧れられる眩い輝きであった。けれど、そうした輝きを持っていながら、彼女が選んだ道は他の人にも輝いてほしい、その上で自身の未来も諦めない、というもの。誰かに何を言われるなどは関係なく、ただ己が執念のためにアイドルをずっと続ける。その決断は、佐伯遙子だからできた、たいへんに彼女らしいものである。それをこの目でしかと見届けられたことは2022年最大の喜びの一つに数えられるだろう。
 さて、そろそろこの記事も終わりに差し掛かっている。最後までお付き合いいただきありがとうございました。それでは、原初の目的に立ち返って、この記事を締めたい。

 佐伯遙子さん、お誕生日おめでとうございます。名前のごとく、あなたとあなたの仲間たちの旅路が、遙か遠くまで続いて行きますように。願わくば、その道のりが光に満ちた明るいものでありますように。

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