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旅する燃え殻

自分は「燃え尽き症候群」なのだな、と思うことにした。きっと医学に詳しい方からは自己診断は危険という批判を受けることになるだろうが、勘弁していただきたい。そう解釈するのが最もしっくりくるし、何より楽なのだ。

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勤労意欲や学習意欲といったものが、体の中からすっかりと抜け落ちてしまって久しい。

毎日違う土地におもむき、風景を愛で、写真や動画を撮り、宿に戻って寝る。ここ一ヶ月はそんな生活を続けている。社会復帰という4文字が目の前をちらついては、目を背けて見ぬふりをする。

昔は頑張ることができていたよなぁ、と振り返ることが多い。高校や大学の受験から始まって、楽器未経験からバンド活動に熱中したし、ITエンジニアになってからは終電まで働いて帰宅後に技術の勉強、ニュージーランドに行くと決めたら英語力を磨いて大学留学、現地就職して永住権までこぎつけた。

ところがいまや、それが「無」である。なんもない。ゼロ。スキルを磨こうとかキャリアアップしようとか、さっぱり思わない。

かつての自分をよく知っているからこそ、絶望感もひとしおである。上昇志向の塊のような人間だったのになぁ。もう頑張れないのなら、いっそ静かに社会からフェードアウトしようか。そう考えることも増えた。

しかし、しかしである。この状況を「燃え尽き症候群」だと解釈するなら話は変わってくる。

頑張れる自分は消え去ってなどいない。ただ姿を隠しているだけなのだ。

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燃え尽き症候群になるのは、頑張り続けたからこそだという。自分で言うのもなんだが、おれはいろいろやってきたと思う、仕事でもプライベートでも。多かれ少なかれ頑張んないと、海外移住なんてできねぇし。

無職になってからは、「こんなに頑張ってきたのに、どうして働けなくなったんだろう」と自分を責める日もたくさんあった。違う。逆だ。頑張りすぎたから働けなくなったんだよ。ちゃんと筋は通ってるんだ。

だから、いいのだ、いまは何もやらなくて。旅を楽しんで、美味いもん食って、きれいだなぁと思った景色を記録に残して、きゃぴきゃぴ言ってりゃいい。

別に毎日note更新しなくたっていいんだよ。とか言いながら多分するけど、それだって楽しめる範囲でやる。なるべくちゃんとしたもの作るけどね。

なるほど、今のおれはさしずめ旅する燃え殻か。なんて言うとちょっとかっこいいな。焼き畑農業なんてものがあるくらいで、灰っていい肥料になるんだよな。燃え殻の中からだって新しい芽がいつか出るはずだよ。それをただじっと待っているのさ。

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