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脊髄炎~多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)

難病情報センターより抜粋しています。


脊髄とは

運動神経、感覚神経、自律神経が走行している。
 運動障害:四肢の筋力低下
 感覚障害:触圧覚、温痛覚の鈍麻、しびれの出現。
 自律神経:排尿・排便障害、発汗障害など。

脊髄炎とは~概要~

  •  脊髄に炎症が引き起こされた状態。脊髄は神経の束であり、運動や感覚などの通り道。脊髄に炎症が生じると、脊髄を行き来する神経信号が遮断され、運動障害・感覚障害・自律神経障害が起こる。

  •  回復する人、障害が残る人、ほとんど回復しない人が1/3ずついる。

  •  多発性硬化症(MS):若年成人に発病することが最も多く、平均発病年齢は30歳前後。15歳未満の小児に発病することもあるが10歳未満には稀。50歳以上の人は多発性硬化症(MS)を発病することは少ないですが、若い頃に多発性硬化症(MS)に罹患し、年をとってから再発をすることもある。多発性硬化症(MS)は女性に多く、男女比は1:2~3程度。

  •  視神経脊髄炎(NMOSD):多発性硬化症(MS)よりも発病年齢が高いと言われる。比較的高齢の人にも発病することがある。女性の割合が非常に高いのが特徴。


各疾患

  •  急性横断性脊髄炎:多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMOSD)、ライム病、全身性エリテマトーデスなどの特定疾患、または特定の薬剤を使用している人に起こる。 急性横断性脊髄炎では、脊髄(通常は胸椎部)の1つ、または複数の領域で、脊髄の全幅に炎症が起きる。

  • 多発性硬化症(MS):中枢神経系の脱髄疾患の一つ。脱髄が斑状に中枢神経のあちこちで起こり(脱髄班)、神経症状の再発を繰り返すことを多発性硬化症(MS)という。

※脱髄とは・・・神経活動は神経細胞から出る細い電線のような神経の線を伝わり電気活動を行っている。神経の線も髄鞘というものに被われている(中の神経がむき出しにならないように髄鞘という絶縁体で被われている)。炎症によって、髄鞘が壊れて中の神経がむき出しになる病気を脱髄疾患という。

  • 視神経脊髄炎:視神経脊髄型MSと言われた中に、視神経脊髄炎(NMOSD)が多く含まれている。


原因

なにが引き金になるかは不明。
免疫系(白血球やリンパ球)が自己の身体を異物と誤解し、自己の組織を攻撃し損傷する抗体を生産する反応(自己免疫反応)が原因である可能性がある。
なぜ自己免疫疾患が起こるかは不明。(遺伝的因子、環境因子など影響があると考えられている。)
○ 急性横断性脊髄炎・多発性硬化症(MS):脊髄がその攻撃対象になっている。
○ 視神経脊髄炎(NMOSD):同じ自己免疫反応によるものだがAQP4抗体が重要?

※親から子に遺伝することはないが、多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMOSD)になりやすさに関わる体質遺伝子が遺伝することはありえる。

検査方法

MRI: 多発性硬化症(MS)の病巣はT2強調画像・フレア画像で白くうつる。また、急性期の病変はガドリニウムという造影剤を注射すると、造影剤が漏れ出てT1強調画像で白くうつることがある。 脱髄病変に不可逆性の軸索変性が生ずると、T1強調画像で黒くうつることがある。
視神経脊髄炎(NMOSD)における脊髄炎の急性期には、MRIにて3椎体以上に渡る脊髄長大病変が出現しやすい

髄液検査: 脳脊髄液に炎症反応があるかをみる。腰椎穿刺で脳脊髄液をとる。
急性期の多発性硬化症(MS)  →蛋白質の増加、免疫グロブリンIgGの上昇、オリゴクローナルIgGバンドの出現など炎症や免疫反応更新を反映した所見がみられる。

誘発電位検査: 視覚誘発電位、聴覚誘発電位、体性感覚誘発電位など様々な方法が応用される。脱髄が起こると電線がむき出しになり、電気の伝導が遅くなり、この伝導の障害をとらえる検査法。


症状

  • 多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMOSD)の症状はどこに病変ができるかによって症状が違う。

  • 視神経の障害:視力低下、視野狭窄。この症状が出る前や出ている最中に目を動かすと目の奥に痛みを感じることがある。

  • 脳幹部の障害:目を動かす神経が麻痺→ものが二重に見える( 複視 )、目が揺れる(眼振)、顔面神経の運動麻痺、嚥下障害、言語障害。

  • 小脳の障害:失調症状、失調性歩行、不随意運動(手がふるえる)。

  • 大脳の病変:手足の感覚障害・運動障害の他、 認知機能への影響。

  •   ※脳の病変では、何も症状を呈さないこともある。

  • 脊髄の障害:胸や腹の帯状のしびれ、ぴりぴりした痛み、手足のしびれ、運動麻痺、尿失禁、排尿・排便障害などが起こる。(※脊髄障害の回復期に手や足が急にジーンとして突っ張ることがある→有痛性強直性痙攣といい、てんかんとは違う)

  • ウートフ現象:一過性に多発性脊髄炎(MS)の症状が悪化することがある(熱い風呂に入ったりして体温が上がるときに起こる場合がある。)

  • 視神経脊髄炎(NMOSD)では、吃逆、嘔吐、傾眠などが出現することもある。(※多発性脊髄炎(MS)ではみられない。)


治療法

急性期: ステロイドパルス療法
 メチルプレドニゾロン(ステロイド)500mg~1,000mg、2~3時間かけて1日1回点滴静注。これを3~5日間実施する。
症状の改善がみられない場合、この治療を繰り返す。
または、 血漿浄化療法へ切り替えたりすることがある。

ステロイドの長期連用の副作用
 糖尿病、易感染性、肥満、胃十二指腸潰瘍、骨粗鬆症、大腿骨頭 壊死など出現するリスクが増す。
ステロイドパルス療法後の経口ステロイドを投与する場合(後療法)も、概ね2週間を超えないように投与計画がなされる。

経過

通常型の多発性硬化症(MS):再発・ 寛解 を繰り返しながら慢性に経過する。
一部の多発性硬化症(MS):最初からあるいは初期に再発・ 寛解 を示した後、しだいに進行性の経過をとる場合がある。(一次性および二次性進行型多発性硬化症(MS))。
再発の回数は年に3~4回・・・数年に1回と人によって違う。
再発を繰り返しながらも障害が殆ど残らない人、何度か再発した後(時には最初の発病から)寝たきりとなり、 予後不良の経過をとる人がいる。

視神経脊髄炎(NMOSD):進行型は殆どなく、再発型とされる。再発は視力障害・脊髄障害などの症状が重篤になることが多い。

日常生活では、過労やストレス、感染などは再発の危険因子であるため、可能な範囲で避けた方が良い。
体温が高くなると調子が悪くなるウートフ現象が出ることがある→高い温度の風呂やサウナは避ける。



難病情報センター: 
https://www.nanbyou.or.jp/entry/38 
MSDマニュアル家庭版:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/09-%E8%84%B3%E3%80%81%E8%84%8A%E9%AB%84%E3%80%81%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%84%8A%E9%AB%84%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E6%80%A5%E6%80%A7%E6%A8%AA%E6%96%AD%E6%80%A7%E8%84%8A%E9%AB%84%E7%82%8E

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