【理学療法士国家試験】1日で対策できる重症筋無力症!
受験生の皆さんこんにちは。リハビリ専門学校で教員をしている、理学療法士のダイ吉です。
私は、ボーダーラインの学生を国家試験に合格させるため、毎年200時間以上の国家試験対策をやり続けています。
その経験の中で分かったことは、効率良く平均点をUpさせたいなら、神経筋疾患の分野が最高!ってことです。
そこで今日は、理学療法士を目指し国家試験勉強をしている学生さんに向け、国試対策の記事を無料公開したいと思います!
今回の対象疾患は、「重症筋無力症」です。
解説の後には、オリジナル問題を用意していますので、国家試験を目指す受験生達に、是非ともチャレンジして欲しいと思います!
重症筋無力症とは
この疾患は、神経筋接合部(運動神経と骨格筋の境界)で、神経伝達物質であるアセチルコリンのやり取りができないことです。
神経伝達物質が受け取れない原因は、骨格筋側にあるアセチルコリン受容体が、自己抗体により壊されてしまうからです。
よって、自己免疫疾患ということになります。
過去問では、こんな感じで出ています。
この疾患の出題傾向
重症筋無力症の出題率は、平均すると年に一問程度です。ほぼ1点問題で出題されるため、あまり本気で力を入れる必要はないでしょう。
しかし、出題傾向はワンパターンで、覚えることは少な目です。確実に1点取れるので、要点だけは対策はしておくべきです。
診断の方法
診断判別には、とある薬剤を使用します。
神経筋接合部で結合できなかったアセチルコリンは、コリンエステラーゼという酵素によって分解されてしまいます。
もし、アセチルコリンが分解されず、ずっとその場にいれば、いずれ結合できるんですが…。
そこで、その酵素の働きを抑制する、抗コリンエステラーゼ薬を投与してみましょう。それで症状が改善すれば、重症筋無力症と診断できます。
この検査を、テンシロンテストと呼び、国家試験でもよく絡んできます。
抗コリンエステラーゼと、コリンエステラーゼ阻害薬は、どちらもコリンエステラーゼの働きを抑えるため一緒の意味です。
出現する症状
では、この疾患の特徴的な症状を紹介します。
✅ 筋力低下
筋を収縮させる指令が届かないため、筋力低下や脱力が起こります。
四肢では、特に近位筋に出現しやすいです。
また、頭を支える頸部や肩甲帯の筋力も弱くなるため、首下がりが出現することで、代償的な姿勢の変化も見られます。
その場合は、筋力強化が難しいので、頸椎カラーを処方することが多いです。
✅ 眼症状
初期症状で多いのが、目が開き切らず、まぶたが垂れ下がる眼瞼下垂です。
また、眼輪筋が弱いので、目が完全に閉じ切らない兎眼(とがん)も出現します。
まずは、眼に関するトラブルに要チェック!
✅ 日内変動と易疲労性
神経伝達物質が届かないので、ガソリンがない車を、手で押しているようなものです。
よって、すぐに疲労します。
だから、朝は比較的に身体が動いても、疲れが蓄積した夕方になると動きが悪くなるため、リハビリの時間は早めが良いですね。
では、過去問を見てみましょう。
どちらも、よく出題されています。
✅ 構音障害と嚥下障害
重症筋無力症では、舌が上手く動かず、呂律が回らなくなるので、構音障害も出現してきます。
また、頸部付近の筋力低下により、嚥下障害も起こるため、摂食機能低下もみられるでしょう。
よって、STさんの役割が大きいですね。
✅ 呼吸障害
この病気で起こる呼吸障害は、呼吸筋の疲労による、拘束性換気障害になります。
〇 拘束性換気障害
× 閉塞性換気障害
この2つで迷わないよう、しっかりと線引きをしておきましょう。
問題文のクリーゼについては、後ほど解説していきます。
国家試験の出題ポイント
その他に、国家試験の問題に絡みやすいものを紹介します。
✅ 発症しやすい人
日本での重症筋無力症患者は、40歳前後の女性に多いんですよね。
よって、「女性に多い疾患を選べ」なんて問題にも絡んできます。
✅ 胸腺腫の合併
この病気は、胸腺腫を合併する方が多いので、胸腺異常が関与していると考えられています。
過去問にも出ています。
重症筋無力症の症状も、外科的に胸腺を除去することで、症状が改善することがあるそうです。
✅ クリーゼについて
クリーゼとは、著しいストレスや、疲労・感染などがきっかけとなり、筋力低下や呼吸状態が、急激に悪化する急性増悪現象です。
この病気の最大のリスクになります。
国家試験でも出題されています。
リハビリでのオーバーワークや、感染症によるクリーゼは、特に注意が必要ですね!
リハビリテーションの注意点
重症筋無力症に対するリハビリは愛護的です。
よって、以下のキーワードが出てきたら、全て×を付けて大丈夫です。
NG! 筋力増強訓練
NG! 高負荷 & 高頻度
NG! 漸増運動 & 抵抗運動
易疲労性やクリーゼに配慮するため、たとえ廃用予防のための筋トレであっても、軽い抵抗かつ休憩を多めに取らせながら運動をさせます。
また、1カ所に疲れが蓄積しないよう、右上肢 ⇒ 右下肢 ⇒ 左上肢など、訓練の場所を小まめに変える工夫も必要です。
国家試験の練習問題
それでは、国家試験を想定して私が作成した、練習問題に挑戦して頂きましょうかね。
お疲れ様でした!では、答え合わせです。
解答と解説
【問1】 解答 2 と 5
重症筋無力症は40歳前後の女性に発症しやすく、胸腺腫の合併が多い疾患である。易疲労性があるため、一日の活動による疲れが蓄積される夕方から不調になりやすい。この疾患は神経筋接合部のトラブルのため、筋肉の状態を示すCK値は無関係。構音障害、嚥下障害、摂食障害など、STの領域はすべて障害される可能性がある。
【問2】解答 1 と 3
重症筋無力症では、肩甲帯や股関節周囲などの近位筋が障害されやすい。眼瞼下垂、複視、兎眼などの眼症状は必発である。繰り返しになるが、朝に調子が良く、夕方にかけて不調になりやすい。この疾患は、アセチルコリン受容体が破壊される、自己免疫疾患である。
【問3】解答 3 と 4
筋力訓練は低負荷かつ、休憩を多く取り入れながら低頻度に進めるべき。長時間の訓練を行うとクリーゼ(急性増悪)の要因となる。嚥下症状と並行して、拘束性換気障害などの呼吸障害もリハビリの対象となる。
さて、無事に全問正解できましたか?
おわりに
重症筋無力症の過去問題は、本当に同じような問題ばかりです。
模試や過去問を解いているうちに、胸腺異常、日内変動、テンシロンテストなど、キーワードが頭に残ると思います。
その他の神経筋疾患の6疾患は、こちらのマガジンにまとめてあります。全部で約15点分なので、ぜひ購入して対策して下さい。
それでは、平均点が1点でもUpしますように。
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