4日目

今日も今日とてやる事が無い、ヘルプで入ったバイトもあまりの客の少なさに予定より1時間早く帰っていいと言われた。


モール内の人もまばらで、平日だろうが土日祝だろうが関係なくいつもベンチに座ってガラガラ声で談笑している働いてるのか定かじゃないおっさんズすらいない。


ガラガラ声のくせにやけに早口で何を言ってるのかわからない、たぶんお互いにもよくわかってない、何が楽しくてそうしているのかはこの先の人生でも解き明かすことはできない永遠の謎だと思う。


そんなことはいいとして、今日はとても暖かかった、こんな世の中でなければ近所の桜の木の下で酒なんかを飲むのもよかったかもしれない、心地の良い日だった。


最近の私の移動範囲はこの一軒家とバイト先への自転車で往復10分そこらの道だけである。


そんな私は暇を潰すため、先月発売された某野生動物ひしめく森(ていうか島)のゲームをやっているのだが、その中の自分、主人公のほうが何十倍も外を走り回って春を謳歌していて複雑な気持ちになってくる。


村人(島人?ていうか人??)とコミュニケーションをとり、虫、魚、化石などを採集し、何かにつけてローンを組ませたり他人の家を用意させる畜生に金を払う毎日をおくっている。


基本まったり、のーんびりとしたゲームだが、キャラクター達はそれぞれ個性的で、なによりこのゲームにおいて特徴的なのがキャラクターの「声」なのである。


最初は何を言ってるのか全くわからないが、よく聞くと実はちゃんと「文字」として認識出来るのがとても面白い。


彼らの声はやけに早口で高く、慣れるまでには相当の時間がかかるが、何故か初めてその声を聞いた時から親近感があり、まるで前から知っていたかのような錯覚に陥った。

『聞き取りづらく、早口で、何を言ってるのかわからない。』

その特徴がベンチで談笑するおっさんズと一致すると気づいた時、私はそっとゲームの電源を落とした。

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