5日目

気分の沈む日というのはどうしてもある。その原因は様々で、僕は昔のことを思い出すことでよく落ち込む。

さて、4月で最初の日曜日が来た。まあ春休みである僕にはあまり意味のある曜日ではないのだが、昨日の暖かさは幻だったのかと思うほどに肌寒い日だった。相も変わらずぼーっとゲームをしながら、開け放った窓から時折聞こえてくる近所の子供の笑い声をBGMに無為な時間を過ごしていた。
昨日の夜からやたらと気分が落ち込んでいたので、朝も昼もご飯を食べるのを忘れていた。何か食べなくてはと思いつつも布団から出ることが出来ず、気づけば夕食の時間になっていて、台所へ向かおうと思ったところでまた気分の落ち込みがきた。


自分で言うのもなんだが、こういう時の落ち込みというのは本当に無駄で、何しろ過去の事なのでどうすることも出来ず、ただ今の自分が後ろ向きになるだけという生産性の欠けらも無いものだ。
と、いうことで、こんな時に必要なのは気持ちの切り替えだ。ストレス発散には色々ある、例えばサンドバッグに当たり散らしたり、カラオケで数時間歌って叫んで踊ってみたりなどがある。


とりあえずうちにサンドバッグは無いので、手っ取り早く歌ってみることにした。家族に聞かれても別に恥ずかしくは無いので出せる限りの声をはりあげて某アンパンフェイスのヒーローの歌を熱唱した。


ひとしきり歌って落ち着いた、先程までの落ち込みが嘘のようだ、これぞ元気100倍、やはりヒーローはヒーローなのだと思った。


「アンパンマンだー!きゃはははは!」


開け放ったまま閉め忘れていた窓から僕の歌声を聞いた子供の笑い声がする。真顔で窓に近づきパァンと閉める。

僕はその場で崩れ落ち、今しがた出来た後悔と羞恥を忘れるためにおジャ魔女どれみを天へと向かって歌うのだった。

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