ある探偵の休日

いい天気である。不愉快なほどに。

久しぶりに入った依頼を片付けた、気の進まない内容ではあったが金払いがよかったので仕方ない。そもそも仕事を選り好みできるほど裕福ではないし、評判も下がる。

最近、こういう少しだけ気分が落ちている時に考えてしまうことがある。

それはもうどうする事もできないことで、仮に今更どうにかしようとした所で結末は最悪なものになる。

自分はもちろん、妻も、友人も、知り合いも、嫌いな奴、知らない人まで全て失うのだから。

今の生活に不満など無い、妻がいるだけで幸福だ。だから、自分でも何を思って今更悩んでいるのかよくわからない。

色んな結末があったはずだ、そこに行き着く未来もあっただろう。それでも私は子の未来を生きている。その選択を間違いだとは思わない、私だけではなく皆で選んだ未来だ。

正義なんてものにも興味は無い、自分が幸せで、妻が幸せで、あいつらが元気ならそれでいい。

ただこの世界は、決定的に間違っているのだ。

夢が覚めてしまうような気がした。怖くなってベンチを後にする。妻が待っているのだ、起きてはならない。

幸せな夢を見よう、終わらない夢を。これから先何度自分を嫌いになっても。

あの人が笑っている夢だけが私の本物だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?