主人公
これまで沢山の漫画やアニメ、映画やドラマ、小説に演劇、ゲームに音楽といった多くのものを見聞き、楽しんできた。
それには大抵主人公が居て、喜劇的であれ、悲劇的であれ、少なくとも劇的な人生が描かれていることが大半だった。
彼らは常に何かを教えてくれる。反吐が出るほどの駄作ですら、伝わってくる何かがある。
僕はこの人生の中で、幾度となくその生き様に心を打たれてきた。それはもう、数え切れないほど。
それでも僕は、主人公にはなれなかったし、これから先になることも無い。
自分の人生の主役は自分だと、よく聞くセリフではあるけれど、これは大きな間違いだと思う。
僕は主役を映すカメラでしかない。
視点が僕であるだけ、主役だなんてとんでもない。主役の活躍を目に焼きつける、それが僕の役割であり、逃れられない責務だ。
あいつは主人公なんだろうな、そう思えるような人物を何度も見てきた。
そいつらの輝く人生を、ただ眺めるだけの、そこに介入することの無い傍観者。
羨ましいと思ったことは勿論ある、子供の頃なんて特に憧れた。スポーツが出来るやつ、モテるやつ、強いやつ、金持ち、場合によっては悪人にすら憧れを抱いた。
何者かであれる人が、心底羨ましかった。
お前は何も持ってない、そう言われてるような気がした。いつもいつも、誰にそう言われた訳でもないのに、毎日毎日考えた。
誰かの主人公になりたかった。
自分じゃない、誰かの、カメラに映り続ける主人公に。
ただ、僕の必死さは、僕の頑張りは、僕の思いは、大体最後に全てひっくり返して終わりだ。
悪役でもいいかななんて思う。何者でもなく死んでいく位ならば、悪役として死ぬのもありかなって。
それでもまだ、何かになれるなんて思っているのがきっと、僕の1番救いようのない部分なんだろう。
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