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聖ちゃん日記 #1

◉はじめに、過去編について少し

1〜5話の過去編は聖ちゃんが子星中に赴任してきてから、中学校を去るまでの半年間。5話の最後、聖ちゃんが塩谷先生に宛てた手紙に「たった一学期だけでしたが」とありましたけれども、このたった一学期だけのほんの短い期間にこんなにも色んなことが起こったなんてしんじられません。けど本当なんですよね。こんなにも忘れられないひと夏ってあるんですか?

そしてこの中学3年という絶妙な年齢設定。本人は子供じゃないって思うんですよ。こんなに自分で色んなこと考えてるし、判断も出来るし、ましてや新人の若い先生なんて自分とそう変わらないように見えてる。でもまわりから見ると子供なんですよね。まだ全然子供。普通に子供。なのに大人ぶってて、自分はもう絶対に子供じゃないって言い張る小生意気な年齢ですよ中3なんて!

でも黒岩くんは、頭が良くて、時々ふとあれこの子?って聖ちゃんに思わせてしまうところがあって。でも年齢は中学3年の15歳、考えることもやっぱり見切り発車で感情優先、自分の世界がすべてでまわりのことが見えない15歳。でも、でも、のループですよこのターンは。担任の自分に分からせてくれない生徒。気になる。後の山江島で聖ちゃんが黒岩父に言うシーンがありますが、求めてきて、突き放す。それの繰り返し。自分と対等の、大人の勝太郎さんと居ることが常だった聖ちゃんにとって、そういうことされるのって初めてで、困るしもうどうしたらってなるわけですね。黒岩くんは、無理とも限らないって言いながら、やっぱりでもなぁなんて思ってるんだけど、じつはちゃんと聖ちゃんの心は動いてる。そんな夏です。前置きが長くなってしまいました。

◉第1話 -2015年4月-

先生、あの頃、僕は頭がおかしくて
勝手にイライラして、盛り上がって
まわりとか、自分のことも見えなくなるくらい
それくらい、先生のことが好きでした。

聖ちゃんとの出会い。ここから始まります。最初の教室のシーンは印象的ですよね、九重くんの嘘に嘘で返す聖先生。生徒に何か言われたら、必ず何か返す、ナメられないように。せっかくなれた担任の先生だからっていう聖ちゃんの意志です。

中学聖日記のいいなと思うところの一つには、黒岩くん含む生徒たちが等身大だってことがあります。だっているもん、るなちみたいな女の子も、九重みたいな男の子も、毎日あごマスクしてる女の子も。そしてその子たちが言うんですよ、末永どう思う?あざとい。ノーメイクなふりしてまつ毛の隙間埋めてる。若い女の先生きたら男子は可愛いって言うけど、女子は厳しいみたいな。それで黒岩は?って聞かれるんだけど興味なしの黒岩少年。まわりよりちょっと大人びてる黒岩くんは、家でもお母さんとあまり上手くいかず、もやもやしてるんですよね。その家でのお母さんとのやりとりも、まるで本物みたいに自然で、中学3年を感じました。そこに聖ちゃんがやってくる。

先生として上手くやらなきゃって意気込んで、必要以上に歩み寄ろうとする聖ちゃんにイライラして、突っぱねる黒岩くん。

「黒岩くんって綺麗な顔してるね」

この台詞、わたしはすごく好きなんですけど、黒岩少年にはしゃくにさわるんですよね中3だから。聖ちゃんの心の内を表すと、なんで?全然分からないこの年齢の男の子って。いや違う、黒岩くんが?みたいな感じ。わたしは叶うことならこの頃の黒岩くんに気持ちをきいてみたい。

それから小火騒ぎの時。あの時ってまだ、スピンオフを除いて、黒岩くんとまわりの仲間たちの世界が崩れてない、非常に貴重な時間なんですよ!るなちに自然に手を貸す黒岩くんとか、それにときめいてるるなちとか。はぁ〜かわいいんですよね。そんな描写もう金輪際ないですから。あの空間が普通なんだって考えると、なんか見る目変わるなぁって思ったりして。だけどその騒ぎのせいで、黒岩くんは「彼氏といる時の聖先生」を目撃しちゃうわけです。自分たちの怪我の心配より先に保護者の謝罪へ向かったのもそうだけど、やっぱりそういう先生を見てイライラした。この頃の黒岩くんはたぶんその正体がわかってなくて、あ〜なんだよって思ってる。

だけどその後、雨の日、海に行きたくてって自転車でいなくなった黒岩くんを聖ちゃんが見つけた時。車の中で、聖ちゃんがした国語の授業の漢詩を黒岩くんが読むところ。フロントガラスからのカメラアングル、間、スロー、黒岩くんのTシャツと手に巻いてる包帯まで、すべて天才シーンでしたねあれは。でもそんなことより聖ちゃんには、大事なことだったんですよ。聖ちゃんって後にもよく、黒岩くんのことについて、教えたことを受け取ってくれるって言葉をすごく使うんですよね。それが聖ちゃんにとっては、先生としての自分っていうアイデンティティを持つための、もとい教師としても教師としてじゃなくても自分の価値を認めるための、一番大事な要素だった。それを黒岩くんが叶えたんですね。それもあの、自分にそっぽ向いてた黒岩くんだったから。

この頃の聖ちゃんは着任早々職員IDを盗まれて色々されたり、書き込みされたり、結婚のことで生徒に言われたりして、教師になった自分に揺らぎがあったから。まあ教師向いてないとか、先生ごっこやめたら?とか言っちゃったのも黒岩くんなんですけれども。でもそんな黒岩くんが、自分のことを教師として認めてくれたと思った。そんなふうに聖ちゃんにとって黒岩くんが、ほかの生徒とちょっと違う生徒、になっていくわけでした。車から降りて隠れる黒岩くんよかったなぁ!中学3年男子って感じで。それで最後の告白。

「先生のこと好きになっちゃいました」

全体を見てから振り返ってみたら、ここでの好きになっちゃった、はまだほんの表面上だと思うんですね。だからほんとの意味じゃない。聖ちゃんがそう捉えたように。

そして最後にこれだけは、スタイリングの話をさせていただきます。1話では黒岩母を含む生徒のお母さん方が言う「可愛らしい、マトリョーシカみたいなお嬢ちゃん」っていう聖先生の姿、立場が、容姿によってものすごく上手く可視化されているわけですよ!

この頃の聖ちゃんは25歳。塩谷先生に身だしなみを注意される場面もありましたが、そういう危なっかしい感じというか、ふわっとした不安定な感じが絶妙に表されていてですね。1話はほとんどロングの髪を耳にかけずに下ろしていて。衣装も白っぽい、割と淡い色が多い。でも田んぼ道で黒岩くんと会って夕日の写真を撮るところは、髪を結んでて濃いめのピンクのお洋服を着てるんですよ。3、4話あたりがわかりやすいんですが、黒岩くんと二人のシーンが多い時には色のあるお洋服を着ていることが多いように思います。それから一貫して胸元が開いたトップス着てるんですね。きっとこれ後にも何回も書くと思うんですが、聖先生の衣装っていち男子生徒の興味を引く絶妙なあんばいなんですよ。子供じゃないけど大人過ぎず。ほんのり色気もあって露骨じゃなく。ここに関しては度々書くとして、1話は聖ちゃんの赤いワンピース姿が見られて嬉しかったです。めっちゃかわいい。


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