聖ちゃん日記 #10
◉第10話 -現在-
「とうとう言えたんだ。好きだって言えるまで、時間かかったね。幸せになれるといいんだけど」
って原口さんの言葉通りです。何がって10話は原口さんが報ってくれて、救ってくれました。聖ちゃんを。聖ちゃんのした選択を。山江島を出て港に着くまでの二人の時間が切なかったですね、本当に。黒岩父から晶をよろしく、と言われた聖ちゃんが、何も言わずに笑顔で頷いたところがじんとしました。それからまた、はじめて想いをちゃんと伝え合った後の二人の表情って凛として、強くて、うわぁこれを待ってたって思いましたね。
お互いの母親が介入してくる回でもありましたが、そんな中でも逃げないと決めた聖ちゃんがもう、前までの聖ちゃんとは別人なんですよ。黒岩くんがいたからこの聖ちゃんがあるんですよね。黒岩くんもそうで、山江島を境にまるで別人のように見えるんですよ。お父さんに会って、新しい選択肢、考え方、ものの見方を教わった。視野が広がった。大人になったんですよね。今までは一つの側面しか見えていなかったから。ここに母親と父親の役目の違いみたいなものを感じます。
聖ちゃんとお母さんに黒岩母が対応する場面では、やっぱり二人がそれぞれ親であることっていうのを再認識させられるというか。大事なんですよ、心配なんですよ子供のことが。好き同士の二人を無理に引き離そうとする母親、という描かれ方ではない母親の顔がここに表されているような気がします。それでもこの場にいる聖ちゃんの気持ちを考えると胸が痛いですね。10話は聖ちゃんに向けられる周囲の声がずっと痛い回で、もう終始苦しかったです。とくに千鶴先生の言葉は、やっぱり刺さりますよね。
「でもそれでもいいんだよね好きだから」
っていう。勝太郎さんの
「聖が真剣になればなるほど、まわりは思うんだよあの人おかしいって」
って言葉も。教師という仕事も辞めて、まわりにも失望されて、でも彼がいるって、それだけで踏ん張れていた聖ちゃんが、黒岩くんにまで突き放されてしまう。黒岩くんがお父さんのことや、先生とのことを冷静にお母さんと話している場面、すごいんですよ。先生とのこと、やっぱり認められないって言われた後、ひと呼吸おいて息を吐いてから、
「今すぐにじゃなくても、いつか母さんに認めてほしい」
って自分の思いを伝えるんです。あれだけ反射的に反抗してきた黒岩くんが、こんなに大人になったってハッとさせられました。それもこれも全部、聖ちゃんとのことの責任を自分も同じように負いたいと思う気持ちがより強くなったからなんですよね。でもだから、勝太郎さんから聖が君のせいで仕事を辞めたと聞かされた時、ダメだと思ったんですよ。自分だけ何も罰せられないで、先生だけが失う、3年前と同じことが起こるのは。
そうやって一旦、全部失った聖ちゃんを、原口さんだけが救ってくれた。何もない聖ちゃんのことを戦ってる、勇気あるって味方してくれた。もう10話、視聴者もろとも原口さんに救われました。聖ちゃんが
「でもまあ、確かに、向こうからしたら引きますよね。いい大人が本気でこられても。そんなのもわかんないで」
って原口さんだけにこぼした弱音。それから、黒岩くんに会いに行けるよう背中を押してくれた原口さんが青春、って呟くんですよ。そうなんですよ青春なんですよ、これは! 3年前からずっと続く二人の青春の話なんですよ、はぁ〜ってなりました。
聖ちゃんに仕事を辞めないでほしいって伝える黒岩くん。自分に心配かけまいと黙ってたことを「先生のそういうところ、すっごくくだらないなって思います」って。これは先生の責任じゃなくて、二人でしたことの責任だから。自分だけ責任を負わないどころか先生の好きなことまで奪うなんて絶対にしたくなかった。でも聖ちゃんが
「嘘のないそのままの自分でいたい。何がどうなっても、自分の責任だって受け入れたい。黒岩くんの隣にいたい」
って言ったこと、ああこれが自分の好きな人だってきっと思ったんですよね。だからその聖ちゃんの意志を聞いて、もう一度二人の未来を考えようと思った。そんな風に見ているとこの二人、最初に比べて見違えるほど強くなっていて、この恋が誰にも阻まれずに叶うことをどうしても願ってしまうものです。
最後こそ物騒な終わり方でしたけれども、聖ちゃんが公衆電話から電話をかけるシーンにはさすがの中学聖日記が詰まってましたね。黒岩くんが「先生?本当に先生?」って嬉しそうなところとか、「一緒にいられなくてごめん」って言うところとか。
「教えたいな、あの時の自分に。誰かを好きになるって、やっぱり素晴らしいものだって」
そんな風に言えるようになった黒岩くん。素敵な18歳に成長しましたこと。
また最後に少し、衣装のことを付け加えると、聖ちゃんが8話から着ている青色のロングコートあるじゃないですか。あの青が、オープンキャンパスの学生の集団の中、黒岩くんに向かって走っていく画がうわぁいいなって思いましたね。あとは山小屋のようなところに二人で泊まった時に着ている白いニット。聖ちゃんが初めて黒岩くんが好きって伝える場面で、雨で、あの編み目が荒いVネックの白ニットを着てるっていうのがまたたまらないわけですよ。あの後黒岩くんから距離をとってましたが、そういう雰囲気がお洋服からも作り出されていてしびれました。あのシーンでは聖ちゃんの方が不安定に見えて、黒岩くんが大人に見えるのがまた良くって。
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