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聖ちゃん日記 #11

◉第11話 -現在から、未来へ-

聖ちゃんが自分にとってどんな存在だったか、そして黒岩くんが自分にとってどんな存在だったか。世間からこんなにも反対された恋に意味はあったのか。意味あったんですよ。ものすごく大きな。それが本当の意味で見えたエンドだったなって思います。やっぱりこういう内容の最後って、絶対に禁断だって言われた恋が結局上手くいくのかいかないのかっていう、そういうことになると思うんですが、けっしてそれだけじゃないんですよね。もちろん大事なんだけど。大事なんだけど、この恋が先生と生徒だったからとか、しちゃいけない恋愛だったからとかいうのを一旦はたに置いておいて、この数年の間、その人と関わったことによって相手にどんな影響を与えたのか、相手からどう影響を受けたのか、それで詰まるところどうなったの?ってことがこの恋の価値を聞かれた時の答えになると思うわけです。中学聖日記で書かれていることってそういうことのような気がします。

たとえばここで1から振り返ってみると、最初の頃の二人って本当にもう、ぐらぐらなんですよ。不安定で悩ましくて。見ててそわそわします。それがそう見えるってことは、すなわち二人がそれだけ変わったってことなんですよね。いや、変わったって言葉を使うといとも簡単に言えてしまうんですけれども、どう考えても簡単ではなかったです。色んなことありましたし。でもやっぱり変わったんですよ。聖ちゃんも黒岩くんも。見ててどんどん好きになります。最終話なんて本当に、本当に強くてかっこよくて、好きでした。

10話ラストの誘拐の件。自分から手を伸ばしたんだとしても罰せられるのは絶対に先生です。今回だけじゃなく、いつも。3年前聖ちゃんが子星中からいなくなった時も、同じ思いをしたんですね、黒岩くんは。だからあんたは未成年だからってお母さんに言われた時、その言葉の意味がよく分かった。今でもまだ自分は守られる側で、立場の差は何ひとつ埋まってないってことをです。3年前はそれでお母さんと仲違いするんだけど、でも今回はそうじゃなかった。大学受験して一人前になってお母さんを納得させる方をとるんですよね、瞬時に。もう全然違うじゃないですか。少年、もうなにも見えずに聖ちゃんに向かう少年じゃなくなったんですよ。

最終話の中で、唯一コントロールが効かなくなったところはあそこです。お母さんが聖ちゃんに誓約書を突きつけたって聞いて、家を飛び出して聖ちゃんの家まで行った黒岩くんが会いたい、声が聞きたいって言うシーン。聖ちゃん、ちょっと揺らいだ気持ちから一転して、黒岩くんが「先生さえいれば、それで」って言った瞬間、誓約書にサインする心が決まったんですよね。やっぱり聖ちゃん、先生なんです。担任じゃなくなってからも、黒岩くんの先生。未来を与える立場。大人。だから手を離す覚悟をした。

そして、聖ちゃんが誓約書にサインしたことを知った黒岩くんですよ。この思いにどう応えられるかってお母さんに言われて、なにも言わずに引いた。あのごはん食べるシーンと外を歩いて泣くシーン、一番好きなんですよね。聖ちゃんが自分のことをどう思ってるのか、自分がどうなることを望んでるのか理解したから、ここから先は聖ちゃんのために動くって決めたんですよあの涙を境にして。

最終話において黒岩くんが聖ちゃんのために飲み込んだ言葉、山ほどあったんですよね。その全部を表に出してぶつけていた中学生の頃と違って、一歩先、まわりを見ることが好きな人のためになることもあるって、聖ちゃんから学んだわけです、彼の場合。

「大人になるって、どういうことなんだろうな」

って九重くんに話す場面もありましたが、黒岩くんは聖ちゃんを好きになって、反対されて、そのこと自体を深く考えることを介して大人になった。よく考えてみたら、黒岩くんが涙を流すシーンってこれが最初で最後です。それがほかの誰でもない、聖ちゃんのために流した涙なんですよ。それも別れの決断のです。こんなにつらくて強い涙ってありますか。もう二度と会えない、顔を合わせて話せないのを、聖ちゃんの字を見た瞬間黙って受け入れたんですよ。たった18歳の少年が。凄いことなんだって思います。それくらい価値のある恋だったってことを、二人で一緒に証明した。聖ちゃんが誓約書を渡す時、黒岩母に言った言葉、忘れられなくて。

「黒岩くんにとって大事なのは、未来です。どんなに心で思っても、表に出してはいけなかった。本当に彼を思うなら、与えなければいけなかった。時間や、距離や、可能性。それが大人としての責任だったのに。そうできなかったこと、心から、お詫び申し上げます」

理想の教師でした。黒岩くんと出会って好きになって、そうなれたんだと思います、きっと間違いなく。子星中に来た時、聖ちゃんが書いていた「理想の教師像」の文字が浮かびました。自分に嘘をつかないと決めた聖ちゃんが紡いだ言葉、響いたんですよね、たぶん黒岩くんのお母さんにも。

そして観覧車の場面ですよ。やっぱりこのお話、原口さんと勝太郎さんがいないと成立しないなって毎度思いますね。聖ちゃんと原口さんの関係性ってなんとも素敵で。お腹に赤ちゃんがいること、嬉しかった、幸せなことって言ってくれた聖ちゃんに、今度は原口さんが救われた。あの時の原口さんの表情、すごくすごく素敵でした。観覧車から聖ちゃんが言うんですよ。黒岩くんが自分を変えてくれた、会えてよかったって。黒岩くんも、自分より聖ちゃんの幸せを願えるようになった。この二人の晴れ晴れした表情とか声とか、笑顔が、この11話の集大成でした。これを見て、ああこの恋は成功したんだって思いました。たとえ離れることを決めたんだとしても、ちゃんと、確かに叶ったんだなと。3年前、出会ったことがここに繋がったんだと思うとじんとしましたね。紛れもない純愛なんですよ、全部。起こったことすべて。

それから、最後に黒岩くんが聖ちゃんに渡した日記。黒岩くんは度々これを読んで、聖ちゃんのことを思い出していたわけです。それを手放して、聖ちゃんに渡した。自分の道を歩くことが、聖ちゃんが自分に望んだことだから、日記とも離れることを決めたんですよね。最後のページに書いた言葉。

「聖ちゃんがこの先ずっと、笑っていられますように」

いつも冒頭に日記を読む聖ちゃんの声が流れていましたけれども、このシーンが各話の冒頭に繋がっていくわけですね。この場面からの回想だったって見方もできます。ここで二人がこの最後の言葉を、声を重ねて読むのが最高に良くってですよ! 黒岩くんが聖ちゃんを想った、あの長い長い記録を締めくくる最後がこの言葉なんです。

そしてです。本当の最後の最後、5年後の聖ちゃんと黒岩くんの再会ですね。33歳になった聖ちゃんと、23歳になった黒岩くん。私たちの決意は固い。待てる、と聖ちゃんが話す場面がありましたが、子星中の頃から実に8年の青春だったんですよね、ここまで。ようやく、ようやく一緒に居られる。大人になった黒岩くんを見た時の聖ちゃんの気持ち、想像するだけでうわぁ〜ってなります。あれほど、聖ちゃんしかいないって言ってた男の子が、自分がいない間に、自分がいなくても、こんなに立派な大人になった。聖ちゃんの、先生としての夢が叶ったんですよね。そして黒岩くんにとっては、やっと好きな人と対等な立場に立つことが出来た。ここまで来られたのはやっぱり、二人のお互いを想う気持ちゆえですよね。どうせ上手くいかない、上手くいくはずない、だって先生と生徒だからって、そういう声をどれだけ浴びせられても、自分たちのやり方で強くなって、まわりに認めてもらえる自分たちになったんですよ。自分にとって相手が、そうしてまで必要で、プラスになる存在だったから。そんな相手に出会えた聖ちゃんと黒岩くんに、これから先、沢山の幸せと良い事がめぐってほしいです。これまで沢山我慢した分、誰よりも多く笑っていられますように。

おめでとう!


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