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聖ちゃん日記 #4

◉第4話 -2015年7月-

僕は嬉しくて。先生に優しくできたのが。
でも、こんな事になるなんて。

過去編、最大の佳境であり難所です。ここで聖ちゃんと黒岩くんの運命が変わりますね。後にも「あの花火大会の、あの海」ってワードが頻出するあの日ですとうとう。その前にまずるなちなんですが、黒岩母に「晶くん狙われてます」って言いに行った後、学校で言うんですよ、軽い自己嫌悪って。それがすごく好きで。若さってこういうこと言うんだなってちょっと思います。

花火大会でもるなちが重要参考人になってくるんですけれども、やっぱりるなちって可愛いんですよね!中学生らしいそのままを黒岩くんにも、先生にも見せてる。だから聖ちゃんに向けるあさましい気持ちも分からなくないというか。悪い子じゃないからまた心苦しいですよね。先生の携帯番号教えるかわりに花火大会一緒に行ってって言うところも可愛いなって。

一方の黒岩くんは、やっぱりこの時点ではるなちのこと本当に何とも思ってないんですよね。常に先生を追いかける自分の気持ちだけで動いてる。高校生になってからの6話以降では、るなちに対しての気持ちも少し変わっていくんですけれど。

そして花火大会当日ですよ。ここも画的に好きなところの一つです。夏の夜の花火大会。黒岩くんがるなちにキスされているところを見ちゃって、その場から去る聖ちゃんと、それをるなち越しに見つけた黒岩くんですよ。るなちは直球で想いを伝えて行動するのに、それがまったく目に入ってなくて。いつも絶対に聖ちゃんしか見えてないんですよね黒岩くんは。るなちを置しのけて先生の方を追いかける黒岩くんがもう。るなちの気持ちになったらもうつらくて仕方ないです。

対する聖ちゃん。この日の聖ちゃんと黒岩くんって、全体的にわりと対等に見せられているような気がしますね。学校といういつもの決まった空間じゃなくて、外で、とくに海のシーンでは完全に二人きりなので。ちょっといつもと違う空間っていうのが、二人の関係性というか、意識を変えたんだと思います。聖ちゃんには黒岩くんが男の子として見えていて、黒岩くんには聖ちゃんが先生に見えていない。

「先生って呼ばないで」

そんな資格ないって聖ちゃんが言う場面がありますが、聖ちゃんの教師としての軸が最も揺れたのがこの4話ですね。生徒である黒岩くんに不適切な感情を抱いていると気付いてしまったことへの動揺もありますし、さらにそれを本来なら自分の中に留めておかないと、絶対に相手に気付かれないようにしないといけないのに、どう取り繕おうとしても黒岩くんの前ではもう、そういられないんですよ。先生らしく接しようとしてもボロが出て、どうしようもなくて、もうダメだってなるのが海岸のシーンのところですね。

僕のことどう思ってるか知りたい、と詰め寄られて。必死に勝太郎さんの話をしても、黒岩くんは「僕はまんまがいいです。そのまんまの聖ちゃんがいい」って返してくるし。今日だけ一緒にいてほしい、先生のことをもっと知って、それで諦めるって言われたことに対して「知ったら、もっと好きになっちゃうかもしれないのに?」って返しちゃったり。軸ブレブレですよ。もうどう頑張ったって男の子にしか見えなくて。それで「家に帰りたい」って言うんです。この聖ちゃんとっても好きなんですよね。

「なんだよ、めっちゃ恥ずかしいことしゃべって、答えてもらえなくて。なんかもう、めんどくさくなってきた。先生はどうしたいですか」

っていう、黒岩くんの聞き方もまた良いんですよ! 黒岩くんから見たこの日の聖ちゃんは、完全にふらふらしてるし、弱ってるんです。

4話では「なんで先生好きになっちゃいけないんだよ」って言う黒岩くんに、ジョフィさんが「それはルールだから」って答えるシーンがあります。そんな大人のルールなんか関係ないって言うんですが、

「でも、聖ちゃん先生はそういう大人のルールの中で生きている人だよ」

って言われるんです。ああなるほど、そう言われちゃなって思いました。九重くんにも、そんな確率低い恋よくするなって言われてましたね。自分のこと好きになってくれる確立なんてゼロじゃんって言われて、そうかなって返す黒岩くんが、この頃の黒岩くんの素直な気持ちですよ。そんな風にまわりに言われて、自分は先生のこと、同い年の子を好きになるのと同じように好きなのに、大人はそれじゃダメだって言う。そんな中、こんな聖ちゃんを見てしまうわけですよ! 大人のルールの中で生きている先生が、こんなにも危ういところを自分に見せて、自信なくして、弱ってるんですよ。そんな大人らしくない姿を知ってしまったら、ますます身近に感じてもっと、もっとってなるわけです。それで

「誰が何言おうと関係ない。僕、先生が好きです」

って言葉、聖ちゃんが受け入れるんですね。キスした後、抱きしめられてる時の聖ちゃんの表情にいろんなことが詰まってるように思いました。自分を丸ごと受け入れてもらえた、安心とか、自分のことを今だけは教師だと思わないで、全部忘れていいんだとか、閉じ込めていた黒岩くんへの気持ちを、もう閉じ込めなくていいんだとか。ただひたすら聖ちゃんが好きだっていう気持ちだけで動いてる、この頃の黒岩くんと同じで、子星中時代の聖ちゃんもまだ全然未熟だから、黒岩くんのそういう気持ちを受け入れてしまった。主題歌とともに映るタクシーの描写、綺麗でせつなくてどこか気持ちよくて、良いんですよね。

これを理由に聖ちゃんは子星中を去るので、それってなんだかなってすごく思いますよ。ようやく気持ちが通じたかもしれない、このタイミングでの別れっていうのが本当に厳しい、苦しい現実です。でもこれがあっての二人ですからね。この花火大会の日のことがなければ、今でも二人はただの先生と生徒のまま、それ以上には発展せずに別の人生を歩んでたんだって思うと、やっぱりここってとってもとっても大事な通過点です。ちなみに、4話で私が個人的に好きな伏線は、棒アイス食べられた九重くんが「俺のファーストキス奪うなよ!」って言うところですね。


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