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銀河鉄道は君を連れて往く

旅の終焉は懐かしい香り

「ほうら見えるかい。あれが人の住む家というものだよ。」

足元の街明かりに彼らは目を輝かせていた。

「いやに不思議なだなぁ、初めてみるのに懐かしい感じがするや。」

「ふふふ…みんなそんな風な奇妙な事を思うものだよ。僕は、あの灯りを見ると落ち着くんだ。本当に奇妙な事なんだけれども。」

白い服を着た子どもたちと帽子を目深に被った男が窓の外を見ている。

列車は彼らを乗せて、線路のない道を揺れながら走っていく。

彼らが走るのは《夜空》ヒソヒソと輝く星たちの合間を揺れながら走っていく。

「この長い旅も、もうすぐ終わりだよ。この車両の君たちの終着駅は確かにこの辺りだったからね。」

隠れているが、男は優しい視線をむけて言った。

「そうか、残念。

もっとここでみんなと一緒に遊びたかったのだけど。」

「僕もだよ・・・きっとまた会えるかな?」

「大丈夫だよ。また会えた時のために、私たちだけの印をつけよう。」

一人の少女が窓を開けると、星を手に取った。

青白い炎を纏っているその星を半分に割り、少年に手渡した。

「これで大丈夫。これを忘れずに持っていれば、また会えるよ。」

「ありがとう。素敵な星だね。僕、きっと忘れないよ。」

柔らかく笑った二人を見守っていた男は、その場から離れると車両の扉を閉めた。

その足で車掌室に向かい、古びたマイクを手に取った。

《銀河鉄道をご利用下さり誠にありがとうございます。次は「  」少し眩しくなります。お降りの際は足元にご注意ください。》

川のように延々と続く長い鉄道。

先ほどまで男がいた車両は、眩い光に飲まれていった。

視界はホワイトアウトし、静かに目を閉じると懐かしい感覚が彼らを包んだ。


ーーーーーー。


同じ星を抱く者たち

「あら、なんて可愛いんでしょう。」

「ほんとうだね。まるで奇跡のようだ。」

白い天井。眩しい光が四人を照らしていた。

とある夫婦がまだ生まれたばかりの双子を抱いている。

「男の子と女の子だ。女の子は君に似て、柔らかそうな髪が生えているね。」

「男の子は貴方に似て、元気いっぱいね。」

ウゴウゴと身じろぐ我が子に、思わず笑みがこぼれる。

ふと、父親が小さな手の平に白い痣があることに気づいた。

「おや?不思議な形の痣があるよ。女の子の方はどうだい。確認してみよう。」

そうっと手を開いてみると、女の子の手の平にも同じような痣ができていた。

「まあ、二人とも白い痣が手の平にあるのね!まるで一緒に生まれてくる事が決まっていたみたい。素敵だわ!」

母親は興奮冷めやらぬ様子で、愛しい我が子を更に抱きしめた。

「星みたいな形をしているね。大きくなったら消えてしまうのだろうか。お守りみたいで僕は気に入ったのだけれども。」

「あなた。この子たちの名前は、きっと星にちなんだ名前がいいと思うの。」

「そうだね。きっと良い名前が決まるさ。」

少し白む空を見上げ、父親はすっかり見えなくなってしまった星空に別れを告げた。

ーーーーーー。

あとがき

いかがでしたか?今回は趣向を変えて、創作物を書いてみました。

綺麗な星を見たい一心で、星に関するファンタジー(笑)

なんと単純な動機なのだろうと自分自身に呆れています。

宮沢賢治の銀河鉄道の夜は、少し物悲しい雰囲気の物語ですよね。もちろん希望もあり、幻想的な雰囲気もありで素敵なんですが。

ただ、カムパネルラのことが衝撃的すぎて頭から離れなかったですね。

私は、銀河鉄道が輪廻転生の魂を運ぶ乗り物の役割を果たしているということにして物語を書きました。

ここでは前世の記憶も曖昧で、いろんな境遇、いろんな時間からやってきた魂が集うという設定にしました。

もし面白ければ、「スキ」とフォローよろしくお願いします。

好評でしたら次回もなにか創作物を書くかもしれません。

記事を書くモチベーションにもなるので、ぜひよろしくお願いします。

それでは次回もお会いしましょう。









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