『鉄路にて』Brasilシリーズ2
序章大柄で屈強な男がゆっくりと近づいてくる。凶相をしたアフリカ系ブラジル人だ。その目は確実に私を捉えていた。
全速で走行している列車の中という逃げ場のない状況。
漆黒に近い男の顔からは喜怒哀楽を読み取ることができなかった。だが少なくとも国と人種の枠を超えた友好関係を結ぼうとしているわけでは無いようだ。男が醸し出す禍々しい雰囲気はそれほどに雄弁だった。
断っておくが、僕には何人かのアフリカ系の友人がいる。それも真っ黒の。僕は肌の色や人種に対する偏見がまったくない。しかし男は僕に