イスラエルによる侵略は留まる所を知らない:エヴヤタル入植地とベイタ村
西岸でのユダヤ人入植者の大規模行進
2023年4月10日、占領下のヨルダン川西岸地区で、新たなユダヤ人入植地「エヴヤタル」の建設を求める入植者の大規模な行進が、イスラエル軍による護衛の下で実施された。これに抗議するパレスチナ人らに催涙弾やゴム弾が撃ち込まれ、民間人やジャーナリストら数百人が被害を受けた。
入植者の行進には、現ネタニヤフ政権の閣僚7人と国会議員20人が参加した。閣僚らは、さらなる入植地建設を進めていくと宣言した。例えば、スモトリッチ財務相(宗教的シオニズム党党首)は、「神が望むならば、我々は現在ここにいる50万人(の入植者)に加え、さらに50万人を連れてくる」と述べた。また、ベングヴィル国家保安相(ユダヤパワー党党首)は、「我々はエレツ・イスラエルへと、神殿の丘へと、エルサレムへと帰還する途上にある。我々はすでに9ヵ所の入植地を合法化した。神が望むならば、もっと多くの入植地を合法化して建設する。テロに対する我々の答えは、さらに入植地を建設し続けることである」と主張した。
エヴヤタル入植地とは
2021年5月、西岸北部の「ベイタ」というパレスチナ人村落の農地に、ユダヤ人入植地が突如建設され、「エヴヤタル」と名付けられた。これに対し、ベイタ村の住民は抗議し、その過程でイスラエル軍に少なくとも住民9人が殺害された。
当時のイスラエル政府(ネタニヤフ政権)は、2021年7月、エヴヤタルから入植者を撤収させる代わりに、この土地を国有化する方法を検討すること、国有化が可能になった場合には入植者のためのユダヤ教神学校を建設することを入植者たちに約束した。約束が交わされた後、政府は入植者を撤収させ、そこに軍基地を建設した。
パレスチナ人の土地にまず極右入植者が侵入し、政府は入植者を排除した後に軍基地を建設し、その基地内に次第に入植者を住まわせ、入植地にしていくというのが、典型的なイスラエルによる土地侵略のパターンであり続けている。今回の入植者の行進も、イスラエル政府にこの侵略パターンをエヴヤタルでも実施することを求めるものであったと言える。
極右・中道派・司法長官の共犯関係
当時、入植者たちにこのような約束をしたのは、現在は反ネタニヤフ派で、新聞報道では「中道派」と呼ばれるベニー・ガンツ元参謀総長(当時は国防大臣)であった。ガンツは最近、イスラエル人に「首相に最もふさわしい人物」として選ばれた人物である。さらに、2022年2月には、アヴィハイ・マンデルブリット司法長官が、このベイタ村の土地を国有化して接収し、入植地を建設することを許可した。司法長官は、現在イスラエル人がネタニヤフ政権から守ろうとしている「法の支配」を象徴する地位である。
よって、ネタニヤフ政権内の極右議員にせよ、反ネタニヤフ派の「中道派」にせよ、「法の支配」を象徴する司法長官にせよ、すべてはパレスチナの土地を侵略し、抗議する住民を殺害し、そこをユダヤ化していくというイスラエルの植民地主義的侵略政策においては盟友関係にあり、共犯者であり続けている。(完)
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