時のパワーズ•オブ•テン16

第十六章:宇宙の始まり(138 億年前)
本章では、宇宙の始まりであるビッグバンを「時刻ゼロ」と定義し、そこから宇宙の晴れ上が りまでの出来事を時系列に沿って解説していきます。
138 億年前、「点」がありました。量子力学の世界では、何もない空間でさえ、「量子揺らぎ」 と呼ばれるエネルギーのゆらぎが存在します。この量子揺らぎが、その「点」から宇宙を生み 出すきっかけとなったと考えられています。
そして、インフレーションと呼ばれる急激な加速膨張が起こりました(ビッグバン以前の極 めて短い期間)。このインフレーションによって、宇宙は一瞬のうちに指数関数的に大きくなり、 現在の宇宙の広大さが生み出されたと考えられています。
その後、ビッグバンが起こり(時刻ゼロ)、超高温・超高密度のプラズマ状態の宇宙が誕生し ました。光すらも自由に進むことができず、宇宙は暗闇に包まれていました。 ビッグバン直後の宇宙では、4 つの基本的な力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)は統一され ていました。しかし、宇宙が冷却するにつれて、これらの力は段階的に分離していきました。 これを「対称性の破れ」と呼びます。
ま ず 、 重 力 が 他 の 力 か ら 分 離 し ま し た ( 1 0 ^ - 4 3 秒 後 )。 そ の 後 、 強 い 相 互 作 用 が 分 化 し ( 1 0 ^ - 36 秒後)、残りの力が電磁気力と弱い力に分離しました(約 10^-12 秒後)。この電弱対称性の 破れは、素粒子の性質や相互作用を決定し、現在の宇宙の姿を形作ったと考えられています。 そして、ビッグバンから約 38 万年後(約 10^13 秒後)には、陽子と電子が結合して水素原子 が形成されました。これにより、宇宙は透明になり、光が自由に進むことができるようになり ました。この現象は、**「宇宙の晴れ上がり」**と呼ばれ、宇宙マイクロ波背景放射として、現 在でも観測することができます。
宇宙の晴れ上がりは、宇宙の歴史における重要な転換点でした。それは、宇宙が暗闇から光 の世界へと移り変わった瞬間であり、星や銀河が形成される第一歩となったのです。 ビッグバンから宇宙の晴れ上がりまでの間には、さらに多くのドラマが繰り広げられました。 物質と反物質の対消滅、そして素粒子の誕生など、現代物理学でも解明されていない謎が多く 残されています。
しかし、これらの謎を解き明かすことは、宇宙の始まり、そして私たち自身の存在意義を理 解する上で、非常に重要な意味を持つでしょう。宇宙は、今も膨張を続けており、その果てに は何が待っているのか、私たちはまだ知りません。
しかし、量子力学によって、この世界には、絶対に確率的な予測しかできない現象が無数に あることが知られています。このことを考えると、原因と結果というものは、人間の感覚より もはるかに曖昧な結びつき方をしているのかもしれません。また、現代物理学の最先端では、 我々の宇宙とは別の宇宙が存在することも真剣に議論されています。
ですから、最初にあなたに言ったことは間違いかもしれません。もしかしたら、全く別の宇 宙で、全く別の歴史を辿ったあなたがありうるかもしれません。てへぺろ。でも、対称性の破 れ方や、物理法則や、基本的な物理定数がほんの少しでも違っていたら、あなたは生まれてこ なかった可能性の方が、やっぱり高いでしょう。これらを書き換えれば、パンチラや生命の誕 生どころか、原子すら存在しない宇宙になる可能性が高いです。
この文章は、我々の宇宙の歴史の流れを掴むための観点を1つ提示しただけです。着目する 出来事が異なれば、全く違う歴史が見えてくるでしょう。次は、あなたが物語を紡いでみて下 さい。
そして、未来の物語を紡ぎ出すのもまた、あなた自身に他ならないのです。

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