薬局BCPとは ーその3ー

なぜBCPなの?

小学校の頃、地震発生を想定し机の下に潜り、その後全校生徒が運動場に集まるという訓練をした記憶があります。皆さんはいかがでしょうか?その当時は何のための訓練なのか理解していないまま参加している自分がいたのは確かです。
その訓練は、日本は昔から地震が多く「人命」だけでも守るという目的で訓練を実施していたと思いますが、阪神淡路大震災時、建物や高速道路が崩壊、その後火災が発生しました。その対策として、建物・道路の耐震・免震工事が始まり、建築基準の変更もありました。火災についても避難時はブレーカを落とす、火災の発生を想定し広域避難場所の設置等も行われ、そのおかげで建物・道路は多少の揺れでは崩壊せず、火災の発生も少なくなり、たとえ発生しても広域避難場所に避難すれば何とか「人命」だけは守られるようになり始めています。もちろん、行政等が努力した結果だと考えます。

しかし、企業ではどうでしょうか?社員を守るために社内のキャビネット等を固定したり、帰宅困難者用に備蓄を購入したり対策を講じて「人命」を守る努力はしていますが、地震発生後、主となる事業はストップし、社員の出社は個人任せ、重要関係先である顧客や取引先と連絡が取れないという状況にならないでしょうか。

「人命」を守るための防災・減災は非常に重要です。しかし、それと同等に企業の存続も重要なことではないでしょうか。地震による被害を受け重要な事業が再開・継続できなければ、社員への給与も支払えず、重要関係先からの信用は落ち、数か月後には倒産という最悪の状況にもなります。地震だから自然災害だからという言い訳は通りません。企業を守ることも重要なのです。そこで、防災・減災対策に加え企業の重要な事業を再開・継続を可能とするBCP(事業継続計画)が必要となるわけです。

なぜ作れないの?

こんなにも重要な計画が、なぜ作れないのかという疑問が湧いてきます。しかも行政からガイドラインが出ているにもかかわらずです。

その理由は様々です。まず、馴染みがない計画であること。ガイドラインを入手し熟読しても具体的な対策をイメージできない事や、薬局の立地が海岸や河川に近いのか内陸なのか街中なのか、また、隣の医療機関がクリニックなのか病院なのか、クリニックでも透析を実施しているのか内科のみなのか、さらに薬局として、調剤、在宅、OTC販売のどの業務を優先し再開・継続するのかで事前対策と行動計画が全て変わってくるからです。また、想定するリスクを地震、水害、パンデミック等の大規模災害なのか、台風、雪害、停電、システム障害等の緊急事態を想定するかでも事前対策と行動計画は変わってきますので、BCPの策定は難しいのです。

以前、薬局を複数店舗経営している薬局のBCP策定のお手伝いをしたことがあります。ある店舗は、保険調剤を重要業務としてその再開・継続するための事前対策と行動計画を検討しました。商店街の中にある店舗は、OTC販売を重要業務として、海岸近くの店舗は津波警報が発令された場合、即避難可能にするため非常持ち出し品の検討と津波で店舗が被災した際は他店舗の支援するように検討しました。また、過去に近くの河川が氾濫し店舗が水没した経験がある店舗は、想定するリスクを水害としてその事前対策と行動計画を検討しました。どうでしょうか、店舗によってBCPの内容は全て変わっています。これが、なぜ作れないのかの理由となると考えます。また、統一的に策定しようとするガイドラインではBCP策定が難しい理由でもあります。

実は、こんな私にもBCPのガイドラインを作らないかとある出版社から依頼がありましたが、出版社の担当者へ上述した内容をお話ししたところ、BCP策定のガイドラインは難しいと判断に至った経緯もありました。

さて、BCPの重要性・必要性を感じた経営者は、少なからずこの壁にぶち当たります。そのポイントは次回以降に掲載していきますね。

あとがき


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