感想『君の教室が永遠の眠りにつくまで』

『君の教室が永遠の眠りにつくまで 』(角川書店単行本)(鵺野 莉紗 著)を読了した。
 これからこの本についてとやかく感想を書いていくのだが、私はこの本を大いに評価しており、こうして感想を述べていきたいと強く思うほど心を動かされたということだけは事実であり揺るぎない結論である。

 まずは自語りを挟ませてほしい。
 私は本作品を発売された当月に購入した。2022年12月である。しかしながら読了は2023年8月。
 読了まで半年以上の期間が空いてしまったのは理由がある。
 この言い訳を長々と挟ませてほしいのだ。
 『君の教室が永遠の眠りにつくまで 』のキャッチコピーが以下の内容である。

大嫌い、大好き。――だからお願い、地獄に落ちて。二人の少女をめぐる、運命と戦慄の「百合」×「ホラー」

角川書店作品紹介

 正直、百合というジャンルについては”悪食”を自負していて、つまり百合作品であると分かればどんなに酷くても面白いとは思えなくても自分なら読了はするだろうと思っていた。
 思っていたのだ。
 本作品の序盤のところで私はつまずき絶えてしまった。
 いわゆる地雷と呼ばれる描写が私にも存在したのだ。
 「これが…地雷か」と美味しんぼ83巻の余命半年と宣告され、山岡らにスペインに連れて行かれて豚肉を食わされた男みたいな顔をしてしまった。
 読むに耐えうるほどの忍耐力が無かった。これが半年以上積読としてしまった事由である。
 最初に一言書いたが、私は本作品を大いに買っており素晴らしい物だと思っている。
 ふとした折に触れ冒頭から読み返したのが2023年8月23日、読了は翌日24日である。耐え難きを耐え忍び難きを忍び以て読了せんというモチベの低さだったわけだが、地雷原を抜けるとそこからは一気に転がるように最後まで集中して読んでしまった。
 なんなら半年以上もの期間を空けさせた元凶となる描写は物語のホラーの根幹を為す部分であり、必要な道だった。地雷原こそが物語の本道だった。

 さて、これから本作品のネタバレを絡ませながらの感想を書いていく。

 本作品はプロローグ、三つの章、エピローグという形式で構成されている。
 第一章は、不思子町という架空の町の小学校を舞台に、六年生の女の子”葵”の一人を主人公として進行する。物語の中で、着実と静かに何が起こってる、また何かが起ころうとしている、さらに、何かを起こそうとしている、といった暗中模索の不安感と緊張感、そして不気味な違和感を抱かされる。ホラー作品の大きな醍醐味だ。そんな醍醐味を味わう中、一章終盤で物語は驚きの急展開を見せ終了する。
 第二章では、世界の輪郭が明らかになる。前章の視点役だった葵と蜜月を重ねた女の子”紫子”の視点から事物が展開していく。前章で起きた出来事の動機が、黒幕ともいえる人物の秘密が明かされる。二章の中盤くらいでなんとなく黒幕が誰かとその動機を推測できてしまうのだが、(別に私はミステリ性にこだわりがないためそこまで粗というわけでない)この予想が、この感想文に書いた”地雷”に当たる部分に大きく関わっていて、こうであって欲しくないという切実な思いとそうはならないだろうなという多大な絶望に真綿で首を絞められながら読み進むこととなった。これがたまらなく不愉快で心地よい。
 第三章で、物語の着地点を迎える。
 今までの運命の暴力から起きたこと主人公らが起こしてしまったこと、それによって失ってしまった代償はあまりにも大きい。しかしながら物語最後の二行が葵と紫子に得られた物だとするとあまりに釣り合わないが、甘美であると思う。

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