【30年後の阿佐ヶ谷姉妹】
【30年後の阿佐ヶ谷姉妹】
こたつ×1、座椅子か座布団×2
2人板付き、80歳前後の老け込んだメイクに寝巻きと半纏姿で並んで座ってTVを見ている
TVの音終始薄く、台詞の部分はさらにボリュームを絞る
中央に暗めのサスF・I
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「ご飯はまだかしら?」
江「美保さん、お昼はさっき食べたでしょう?」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ。食後にお饅頭まで食べたじゃないですか」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ」
少し間
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「ご飯はまだかしら?」
江「美保さん、さっき食べたでしょう?」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ」
美「でもお饅頭は食べてないわよね?」
江「食べました。私の分まで食べました」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ」
少し間
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「ご飯はまだかしら?」
江「美保さん、今お腹空いてる?」
美「空いてないわね。何故かしら」
江「それはね、さっき食べたからよ」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ」
美「でも甘いものは別腹よね」
江「美保さん、口元にあんこが付いてるわよ」
美「あらまあ」
少し間
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「明日は何時入りだったかしら?」
江「明日?」
美「明日の成城大学の学園祭は何時入りだったかしら?」
江「美保さん、成城大学の学園祭は30年前でしょ?」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ。登場で盛大に転んで衣装を破いたじゃないですか」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ。楽屋で私が縫ったのよ」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ」
少し間
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「学園祭の後はバカ爆にハシゴだったわよね?」
江「美保さん、それも30年前です」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ。バカ爆も新宿Fu-ももう無いの」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ」
少し間
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「じゃあ明日は幕張よしもとでしたっけ?」
江「美保さん、30年前です」
美「そうだったかしら」
江「そうですよ。それに今幕張まで無事辿り着ける自身は無いわ」
美「そうかしら」
江「そうですよ。あんなに遠いところ日帰りじゃ無理よ」
美「そうかしら」
江「そうですよ」
少し間
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「今度の細かすぎてのオーディションどうします?」
江「美保さん、もう考えなくていいの」
美「そうなの?」
江「そうよ。もう何も伝えなくていいの」
美「あらそう」
江「そうですよ。それに今あそこから落ちたら、私たちただじゃ済まないわよ」
美「そうかしら」
江「そうですよ。下手したら死ぬわよ」
美「まあ大変ね」
江「もう保険にも入れないのよ」
少し間
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「水落オープンはどうします?」
江「美保さん、死ぬわよ」
少し間
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「来週のシティボーイズライブ楽しみね」
江「そうね。100歳超えて現役なんて凄いわね」
美「人間じゃないのかしら」
江「きっとロボットなのよ」
少し間
美「江里子さん」
江「なあに?美保さん」
美「ご飯はまだかしら?」
江「…そうね。少し早いけど夕飯にしましょうか」
サスF・O開始
TVの音ボリュームを上げていく
美「戸棚にお饅頭もあったわよね?」
江「私の分もあげますよ」
美「いいの?」
江「いいのよ」
美「濃いお茶も飲みたいわ」
江「わかってますよ」
美「いつもありがとう」
江「いいのよ」
完全暗転
TVの音C・O