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【映画鑑賞】今月のベストムービーは「雪山の絆」(2024年2月:6本)

2024年2月の所感

2月は映画6本鑑賞でした。でもこの2月はべやっちの中でもここ数年で濃い1ヶ月でした。その内の大きな3つについて書いてみたいと思います。

①30年振りのスキー、6年振りの雪山

自分の病気は言うまでもなく今まで生きてきた1番大きな出来事でした。病気前の自分は「外」に開きまくった人生でした。海外旅行、ダンス、合コン、酒、スノボ、サーフィンなど。刺激的な物を求めれば求める程内面が渇望し「内」に行く事もなかった。病気って自分の人生を変えてしまうものである事、それと自分の9種体癖もあって内へ内へと閉じていきました。それ自体は大きな学びの数年でした。

でももうこの辺で外に踏み出しても良いかな、と思い自分が少し関わっている身体操作コミュニティの人達と長野戸隠に2泊して来ました。

一緒に行った人達と主催者の人達がスキーをするという事でスノボ板は持っていってたのですが何と6年ぶりの雪山で30年振りのスキーをするという運びになりました。このコミュニティの人達は今まで接したり付き合ってきた人達とは全く種類の人達でした。良く考えたらコロナと癌が同時に身に降りかかった自分にとってそこから出来た初めての新しい仲間かもしれません。トレーナー、セラピストなど殆どが個人事業主な人達だったのですよね。だからサラリーマンの人達との会話は「会社」「上司」「社内人間関係」みたいな物が入ってく流のですがそういうあるはずの会話が無く純粋に世界と向かい合っている人達でそれがアウェイに感じながらもとても居心地の良いものでした。

世の中には色々な力が働いています。経済の力、化学的な力、物理的な力。最近特に感じるのは「場」の力というものが確かにあるという事。久しぶりの雪山はそんなバイブスの高い人達と向かい合った全く違うものに見え、かつてとは違う力を貰った気がしました。

②コロナ罹患

ここ1年ほど免疫は普通の人より低いので外を歩くのは避けていました。旅仲間のホームパーティの後帰りのバスで「何か鼻がつーんとするな」と思ったのですが次の日も余り調子が悪く早々に早退したのですが久しぶりに38度の後半の熱が出てました。次の日も熱で次の日は少し熱が下がったので会社に行こうかな、と思ったのですが念の為に病院へ行ったらコロナと言われてしまいました。

体感では昔罹ったインフルより大した事はないなと思い、「コロナに罹ったよ〜、あんまり大した事なかったよ〜」と家族ラインにメールしたら異常な程に父母に心配されました。ちょっとコロナ脳みたいな所が両親にあってもはやコロナなんて誰も気にしてないのにちょっとそれはどうにかならないかとこっちが思えるほどでした。

休み中に読みたかった野口晴哉さんの「風邪の効用」を読んでいました。何だろう、現代社会が失っているものがそこに書かれていました。必読です。

野口晴哉さんの考えによると風邪は治療するものでなく通過させるものだそうです。風邪を上手く通過させる事によって引く前より身体の弾力性は上がるというのが野口先生の持論だそうです。その治療に工夫をし過ぎた人は体量配分比を崩してしまい癌などの大病を患ってしまうそうなのだ。

あらゆる病は脱皮なのだろうと思う。それが癌ともなれば命懸けの脱皮になる。病tは治療の効果があり病そのもの恩恵がある。その両輪が失われないようにしなければいけないがきっとこのような考えは現在社会では受け入れられないものなのかもしれないとも思う。

③定年間近の大先輩の退職

そんな外に向かって開いたり体調を崩したり、それによって自分の考えや体感が進化した2月であったが私事の会社の内部の話ではあるがビッグニュースが飛び込んてきた。
入社33年56歳の大先輩が定年間近で退職されてベンチャー企業に転職されるというのだ。

大概のことは驚かないがこれにはびっくりした。その先輩はとても仕事ができる先輩で多少癇癪持ちではあったもののリスペクトされていて居場所はあった筈でそんな彼が今更リスクを背負って多少給料が下がるのを覚悟の上で転職すると言うのを聞いて、私は彼のことを全く理解していなかった事を最後の最後で知る事になるのだ。

そのチャレンジ精神と若さをその堅物そうな人柄の奥にしまい込んでいたのを私は知らなかったし改めてリスペクトする事となった。ショックだったのは周辺の対応だった。
最後の管理職の送別もそっけない者だったし周りもそっけなく、やはり会社というのは去っていく人や外に逸れた人に対して非常に冷たい。それは二度の休職をして自分自身が嫌って程思い知っていた事であるが改めて客観的にその様を見せられるとショックではある。

先月映画「おひとり様族」でコメントしたように「さよならと感謝は同時にあるものだ」と思う。3月のお別れシーズンに感謝を持ってさよならを言おうぜ。ちゃんとさよならを言わず又会いましょうなんて自分の心にもないことをいう人を俺は全く信用しない。そういう人は感謝がないんだよ。

映画鑑賞結果

【第1位】雪山の絆(2023 ウルグアイ/スペイン/チリ)

スリラー物かと思って見たが「生きる」とは何かを問う作品だった。傑作。

ウルグアイ空港がアンデス山脈で不時着し行方不明になった16名が72日間奇跡のサパイブをした話。29名死亡、16名が助かった。

だが生き残った16名もそれまでの人生とは全く違う人生を送る事になったに違いない。この映画でもはっきり描かれている通りその16名も一度「死んだ」と言えるからだ。

これが雪山でなくすぐ探索し助けられる状況ならばこのようなドラマは生まれなかった。29名は何故死に16名は生き残ったのか。

生きるという事は「不条理」な事だらけである。何故ならば生きる事も死ぬ事も自分の意志で出来る事ではない。全ては自分を超えた蜘蛛の網のように張り巡らされた縁の結果なのだろう。

自分は雪山や海などの自然が大好きだ。だが本当に豊穣な自然の中で人は生きていく事は出来ない。自然に惹かれるのはそこに「死」そのものを含有しているからのような気がする。助かる為にチリ側に歩いていく途中、雄大な景色を見て「ここは天国のようだ」と呟かざるを得ない。

サバイバーどおしの会話で神の話が出てくる。ウルグアイはおそらくキリスト教なのだが仲間の人肉を食べざるを得ない状況に陥る。そこで出た一言
「俺は別の神を信じる。俺が信じるのは、ロベルトが俺の手当をする時、彼の頭の中に宿る神だ。ナンドが歩き続ける時、彼の脚に宿る神だ。ダニエルが肉を切る時、彼の手に宿る神だ。僕たちに肉を渡す時、誰の肉かを言わないフィトだ。おかげで食べられる。彼らを思い出さずに済む。それらの神を信じる。ロベルトやナンド、ダニエル、フィトを信じる。死んだ仲間もだ。」

これって全てのものに神が宿ると考える東洋思想ぽくないか、と感じたのでした。

生きる事=奇跡&強さ、死ぬ事=悲劇&弱さと捉えるのは周りの目線からの捉え方で恐らくは当事者達はもうそんな区別すら出来ない領域に行った事が描かれている。生きるというのは究極的には当事者の感情の揺れ動き、淡い愛という感覚にしかないのだ。

そんな事をつくづく思った。

【第2位】あの子は貴族(2021 日本)

演出や台詞は陳腐で見栄えのしないシーンの連続だし、カッコ良い振り切ったキャラクターが出てこず、終始暗ーい雰囲気の映画なのに視聴後ジワジワ来る映画だと思う。

門脇麦演じる華子はいわゆる良い所の子で苦労知らずで働かなくても生活に困らない。喫茶店ではダージリン茶を飲む。美人だが感情の起伏が前面に出ない所謂4種体癖の女性を凄く上手く演じている。もう1人の主人公美紀は田舎出身の苦労人だ。家計の都合で大学を中退し水商売から会社員へとステップアップする。こちらはさっぱりとした5種体癖と言ったところか。ノートを貸した孝一郎を恨む事なく又その後身体の関係を持ち都合の良い女として扱われながらもそこに執着を持たないカッコ良い女性だ。

人間は生まれと自分の感受性に逆らう事は出来ない。そこにきっと悩みが発生するのだ。華子が美紀のように合理的に物事を裁断出来ていれば、美紀が華子のような生まれであったなら。。
だが人生にたらればは存在しない。

最後のシーンで遠目に華子と孝一郎が微笑み会うシーンは良かったな。お互いがお互いを不幸にしてしまう出会いであったとは言えお互いに微笑み合える。この微笑みはお互いの人間としてのリスペクトの表れなんだと思う。

【第3位】イコライザー The Final (2023 アメリカ)

イコライザーシリーズを1、2を観た勢いでThe finalもunextで視聴。

イコライザーシリーズでこの映画は最も問題作かとも思える。何故ならマッコールがもはやシリアルキラー、快楽殺人者に見えるからだ。

最初のお爺さんと孫がブトウ園の中にある邸宅に戻ると手下が大量虐殺されている。こんな事が出来るのはマッコールしかおらんやろと思ったらダークヒーローの如くマッコールが現れる。マフィア視点から見るとマッコールの異次元の強さ、神出鬼没感はホラーでしかなくその恐ろしさを醸し出す為に何故か悪者目線になるシーンがしばしばイコライザーシリーズではある。ビンセントや弟を殺す時もやられる前に殺しているし、マッコールの表情も逝っちゃってるし「やり過ぎじゃねえ?」と思う所もしばしば。最後のビンセントに薬を盛ってさっさと殺せば良いものを手錠を解き放ち痛ぶるように殺す様はゾッとした。怖っ!

「誰かが誰かに対し許しがたい事をしている」それを自分と縁のある人に被害が降りかかったら容易く着火するマッコールは相変わらずだ。イタリアの憲兵をレストランで脅すごろつきに「人生は全てタイミングだ。お前はタイミングが悪い」という言葉は痺れるね。

画面は常に白黒気味でイタリアのシチリア島が主な舞台となっている。そうかイコライザーシリーズもここにきて国際化したのね。

このthe finalでイタリアの俳優が出ていて凄く良かったなぁと思う。一人はいきつけのカフェの女店長でガイアスコデッラーロという女優さんらしいのだけどイタリア人らしい台詞回しでマッコールを逆ナンするんだけど学びが深かった。あとビンセント演じるアンドレアスカルドゥージオの凄みあるマフィアぶりは惹きつけられた。個人的にラテン系の顔が好きなんだろうな。

【第4位】イコライザー(2014)

久々に本格ハードボイルド作品を映画で見たという感じだった。

大学生の頃ハードボイルド作品が好きだった。無口で哲学があってムッチャ強くて利他に生きる男。そんな男に憧れていたが社会人になって崩壊してしまいより現実的な生き方をするようになった。

カフェで少しだけ話していたクロエに感情移入してしまい彼女を救う為だけに恐ろしく強い男どもを凄い人間技を超えたスピードで殺しまくる。デンゼルワシントン演じるロバートマッコールの戦い方は環境投影戦法とでも言えるものなのか。何でも使う感電、爆破、ホームセンターの金槌、ワインのコルクなど。

ここ数年はギブ&テイクとかコスパとかが世に氾濫しているからたまにはこういった現実にはあり得ないけど圧倒的な利他の映画を見るのも良いよね。この映画はマートンソーカスという混血の俳優がロシアマフィアを演じているんだけど凄みのあるイケメンで良いよ。

【第5位】イコライザー2(2018 アメリカ)

1より分かりやすかった。と同時にこのストーリーは一般的なんで少し弱いなあとは思った。

日本には「袖振り合うもの多少の縁」という言葉がある。近くに住む少し自堕落で心に傷を負っている画家志望のマイルズとの交流がほっこりさせる。義理と人情のみで主体的に動くマッコールという主人公像が確立された一本である。


マッコールはホームセンター社員を転職しliftでタクシードライバーをやっている。成る程この設定の方がマッコールが事件に乗り込んでいく必然性は出やすい。
友人でありかつてのCIAの同僚だったスーザンが殺された事でマッコールは解明に動き出す。かつての仲間達の裏切りによるものというストーリーはまあそうだろうなと読み切れるもの。ただ何であんな台風の日に戦う必要があるのかは謎。

※マッコールが途中作っていたアロスコンポーヨというラテンアメリカ系のご飯作ってみたいな。

【第6位】The discovery(2017 アメリカ)

ロバートレッドフォード演じる脳科学者が死後の世界を証明した事で自殺者が年間300万人を超えるというディストピアな灰色の世界を描いている。

でもそんな世界はなくて人生にはパラレルワールドがあり人生の別れ目となる時点まで戻り永遠にやり直し続ける事になるという。

演者がロバートレッドフォードやルーニーマーラやらかなり豪華な顔ぶれで着眼点は良い映画なのに中途半端感が強いのはこの映画のオリジナリティが無いこと、伝えたい事が深掘りされず見せ方のテクニックに走っている所ではないだろうか。

人生のある時点に戻るというのならそれはループ物で擦り倒されるくらい使い古されている。最後のオチなんて「バタフライエフェクト」の劣化版のようだ。死後の世界に行く為の博士の装置が如何にもちゃちくて現実感がない。

アイラとウィルの恋も何故か唐突に始まるしちょっと説明が必要じゃね?と思ってしまった。ルーニーマーラって「ドラゴンタトゥーの女」のイメージが強過ぎたけどこんなに美しかったのね。

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