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マーケティングは、事業活動の行間に

捉えどころのないマーケティングの解説、再解釈の話をするのにいきなり「事業活動の行間」と言われても益々混乱しそうなタイトルですが、なぜ行間と例えたのか、行間がどんな影響力を有していて、どんなところがマーケティングと類似するのかも、筆者なりに頑張ってお伝えしています。
関連用語との関係性、深め方も含め、筆者なりの見解をお楽しみいただければ幸いです。

「マーケティングとは?」と急に言われて、パッと答えられる自信はない筆者ですが、皆さんはいかがでしょうか。マーケティングに関する教本やビジネススクールの教科書に書かれているメソッドやフレームワーク、「顧客価値を創造し、提供し、伝達するプロセス」といったものを見ても、イマイチピンと来ない気もします。

受験生の時は必死に勉強したのに、今やすっかり忘れてしまっている英語や数学のように、何度か勉強するもののイマイチ身についた気がしないマーケティングについて、今一度、膝を突き合わせて向き合ってみましょう。


経済性や駆け引きを伴う活動にはほぼ必須の概念

「マーケティング(Market = 市場 + ing)」なので、経済的な何かをやり取りする行為があれば、多少なりともマーケティングの出番はあるでしょう。経済に直結しなくても、相手との駆け引きや相手の選択を伴う行為、例えば子供同士の遊びのお誘いといった場面でも、より魅力的な選択肢であると提示する際にはマーケティングの何かしらが役に立つかもしれません。

自分と誰か、そしてその背後にある世間や社会が断続的に影響しあう「場」で、自分の望みを叶える確率を少しでも高めたい場合、そこに登場する知恵や創意工夫をマーケティングと呼称するのではないか、というのが率直な意見です。

駆け引きや相手が選ぶ場面の話であれば、ディーリングやクロージング、あるいはブラフでも良さそうですが、特定の瞬間や部分的なテクニックだけでなく、それらも含む全体、あるいはより上位のメタ的な存在としてマーケティングが位置付けられると考えているからです。

4Pや3C、SWOTやファイブフォースといったフレームワークや各種市場調査、あるいは◯◯マーケティングといった発展系なども「いわゆるマーケティング」ですが、マーケティングは事業活動のあらゆる場面で影響力を及ぼし、全体に作用するイメージがあります。マーケティングが不十分だったり、マーケティングとの齟齬があるプロモーションやセールスでは、どれだけハードワークを積み重ねても成果に結びつけるのは容易ではない、という個人的な印象を持っています。

マーケティング万能論を掲げるつもりはありませんが、事業活動の難しい場面を少しでも簡単にし、効率を上げるためにマーケティングが寄与する場面や、マーケティングに立ち返ることでブレイクスルーを迎える可能性はそれなりにあるでしょう。事業活動全体を下支えし、難易度を引き下げるための潤滑油のような効能の方が、マーケティングの重要な役割なのではと思っています。

事業活動の目に見えない部分、行間にもマーケティングの影響力が及んでいる。
つまり、アナタが社会生活の中で誰かと楽しく過ごすための提案をしたいと思ったら、見える部分にも見えない部分にもマーケティングが介在し、無視を貫くことは簡単ではない、とも言えるでしょう。

マーケティングは、戦略そのもの

マーケティングと戦略の関係性なんて、私が持ち出すまでもなくご存知でしょう。
ただ、「戦略」と言われて的確に回答できる方はそう多くないでしょう。戦術との違いも難しいですよね。

戦術は「戦う術」、平たくいえば戦い方です。戦略は「戦の計略」、「はかりごと」。戦いに勝つための方法や策略ですが、正確には戦いに勝ち続けるための方法、策略なので戦術より長期的なスパン、大局的であることが多いでしょう。「戦いに勝つ」とは、一定の領分を確保、維持する状態、「一国一城」を長期間、可能なら未来永劫キープする状態で、安寧が得られていない場合は「(長期的に)勝っている」とは言い難いでしょう。

戦略、兵法と言えば『孫子』ですが、「百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり。 戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。」、つまり戦わないで勝つのが最善で、そのための方策をまとめた書物が『孫子の兵法』です。戦うにはそれなりの労力がかかり、勝っても負けても膨大な資源が費やされます。そのため、できるだけ戦わない、攻めさせない、謀略も駆使して戦いを省略、省くというニュアンスも相まって、「戦いを省略する」の意味合いで用いる場合もあるようですが、戦わないで勝つためにどうするかの果てに「省く」があると思っておいた方が良いでしょう。

資源が潤沢な強者ならバンバン戦って弱者を消耗させても良いですが、リソースに乏しい弱者の場合、少ない資源を有効活用するためにはできるだけ戦う局面、攻められる瞬間は少なくし、やりくりが可能な範囲、営みを継続しやすい範囲での戦いというのも考えておきたいので、継戦能力を重視するなら無理に戦わない選択も、正しいと思います。

マーケティングは事業活動における戦術でもあるし、戦術の上位に位置付けられる戦略を担うものでもある。セールスやクロージング、プロモーションやブランディングは戦術ではあっても最上位の戦略には位置付けられないので、マーケティングとそれぞれの分野は相互に作用しつつ、マーケティングに内包される下位要素というのが適切ではないでしょうか。

だから、マーケティングは狭義のマーケティングへの影響に留まらず、事業活動全体に作用する。戦略の誤りを戦術では補えないので、戦略が合っているかどうか、戦略に影響される戦術が活かされるかどうかというのは、常に頭の片隅に置いておきたいですね。

何をやるかという方針が戦略、ある材料で工夫するのが戦術

戦略の誤りを戦術では補えないのは何故か。何をやって何をやらないかという方針を決めるのが戦略で、戦術は戦略で決められた範囲、戦略で与えられた材料でしか動けないため、戦略の範囲外には手を伸ばせない、出ていけない、そもそも見えていない可能性がある、という性質があります。

一定の枠組みや器を用意、策定するのが戦略で、その世界の内側で何とかするのが戦術。丸い容器に水を入れれば四角くはなれないし、容器を超えて注ぐこともできません。容器や中身が無色透明でも、置かれた部屋が白熱球、電球色の照明で照らされていれば、ほんのりオレンジ色に染まるでしょう。

戦術は放り込まれた世界、置かれた環境や空間の影響を必ず受けるし、戦術の外側にある戦略が、いかに見えない部分に影響を及ぼしてしまうかも、何となくお分かりいただけましたよね?

つまり、戦略に位置付けられるマーケティングと、その他の下位要素との関係も同様で、明確に見えていない部分、事業活動の行間に相当する部分にもマーケティングが影響するのも、こういう関係性があるからです。

行間や余白の影響力は意外と大きい

行間や余白に比べるとどうしても目立つので「書いてあること」に目を向けがちですが、総量としては行間や余白の方が多いはず。いわゆる「地」と「図」の関係で背景になる部分がどちらになるかと言われれば、基本的には面積の広い方が背景、地の役割を担うでしょう。

視覚的には無色透明やホワイトバランス、味覚的には無味、嗅覚的には無臭、聴覚的には無音。基準となる「無」や「無」と位置付けた方が良いと生体的に判断した領域がきちんと「無」であること。雑味や雑音が混在しないことは、良質な体感、感覚には非常に重要な前提条件です。

例えば水ですが、水の品質や水の良し悪しが料理や飲料水に大きな影響を及ぼします。
綺麗な水かどうかもさることながら、水の硬度でも全てが変わるレベルです。この場合、水は主役ではなく脇役、地と図の関係なら地、行間や余白に相当する部分ですが、舌に触れる総量が多く、味の基準となる部分が狂っている、あるいは「図」に相当する部分へ悪影響を及ぼすような品質であれば、全ての印象が悪化します。

目立つ部分、見えやすい部分の良し悪しに目を向けがちですが、心地よい体験を提供するためには、行間や余白の質を高めること、より一層クリアで徹底した「無」の存在、主役になる「図」を邪魔しない引き立て役として目立たないこと、余計なノイズにならないことが重要になってきます。

質の良い行間、余計なノイズにならない余白やホワイトバランスのような役割を、事業活動の行間も担うマーケティングは目指さなければならない、というのが筆者の考えです。

プロモーション、ブランディングは下位存在の別物

◯◯マーケティングが実質、特定領域のプロモーションを指す用語となっているシーンもあるので混同しがちですが、マーケティングとプロモーション、あるいはブランディングとマーケティングは別物で、どちらかというと下位の存在、マーケティングに含まれる部分的な要素です。

WebやSNSなどを通じた認知獲得、認知拡大や宣伝広告もマーケティングの一環ですが、その部分だけを切り取るなら、それはマーケティングではなくプロモーションとするのが正確でしょう。

ブランディングは商品に焼き印を押したのが語源で、自分たちの商品、仕事を消費者に対して保証するのがルーツです。つまり、特定の焼き印に対する信頼、信用獲得が原点です。購入する前から一定の信頼や期待を寄せ、その期待を裏切らない体験を提供し、一定の品質を担保してさらに良い印象、イメージを消費者の中に確立するのがブランディングであり、パッケージやロゴのデザイン自体はブランディングではありません。

個別具体的な何かがブランディングになるという話ではなく、事業活動を通じた総体として一定の満足を提供する、それを保証し積み重ねる行為、総合的な品質管理の方がブランディングの本体、本丸のような気がします。

マーケティングの一要素であるプロモーションはもちろん、ブランディングも事業戦略、マーケティングの影響を受けます。基本的には4Pや3C、USPの範囲で組み立てるでしょうし、事業体の在り方と切り離されたブランディングも困難でしょう。価格帯や顧客を主流商品から切り替えた別軸のラインナップ等は実現できたとしても、それもメインのブランドがあってこそ。

ブランディングやプロモーションの過程で発覚した情報を元にマーケティングを見直したり、マーケティングを見直した余波でブランディングやプロモーションをやりかえたり、相互作用しあう部分はありますが、基本的には広義のマーケティングが上位の位置付け、プロモーションもブランディングも下位に位置付け、役割を切り分けた方が良いでしょう。

古典と軍事、ボードゲームで考えてみる

マーケティングにも通じる戦略に関する書籍としては、上述の『孫子』とクラウゼヴィッツの『戦争論』が土台になるでしょう。

ランチェスター戦略や弱者の戦略も、出自は軍事。軍事や戦史、兵器に関する古典や科学的な研究書は、ビジネス、マーケティングを考える上、見直す上でも役に立つでしょう

チェスや将棋、囲碁といったボードゲームも、戦いをモデル化したものなので、どんな定石や手筋があるのかを何となくでも学んでおくと、思わぬヒントを得られるかもしれません。

2024年現在の軍事はクラウゼヴィッツが『戦争論』を記した時代から大きく変化しているので、もう少し現代的なものに触れたいという場合は、戦争モノのビデオゲーム、映画もオススメです。シミュレーションを通じて戦いに触れておくとビジネスの世界、マーケティングを考える上でのアナロジーもより正確に効かせられるかも。一方、『孫子』からは天候や暦、占い、地の利や位置取りの重要性も学べたり、手練手管や情報工作、調略についても学べたりします。

私が戦争論を読んだのは随分前なので内容はかなりうろ覚えですが、基本的な兵科の一つ、歩兵をビジネスの現場に置き換えるなら、セールス、営業や販売でしょうか。泥臭く、実際の現場で汗をかいてコツコツと地上戦を繰り広げる姿が歩兵のイメージに重なりますし、シミュレーションゲームでも、最後には歩兵が地上部隊として現場を制圧しないと勝利にならないものもあります。
最後に勝負を決められるのも、セールス、営業や販売に他ならないとも言えます。

プロモーションや狭義のマーケティング(戦術レベルのマーケティング)は、騎兵、現代で言えば航空戦力でしょうか。豊富な運動量で広域をカバーし、地上の歩兵と連携して制圧を支援する部隊。セールスより早く、現場より遠い場所から顧客に接し、時には一対多も制するイメージ、宣伝広告も担う空中戦のイメージがなんとなく重なります。

ブランディングやコンテンツマーケティングは基本兵科よりは後方の教育機関や斥候、情報工作を含めた工兵のイメージでしょうか。新人を育成して対外的な印象、品質を担保する役割を担ったり、セールスやプロモーションの本体が展開する前に、顧客との関係を良好にしたり、時間がかかる取り組みをコツコツ積み上げる部隊が、彼らの役割でしょうか。顧客の本丸を切り崩すための拠点、橋頭堡を作るのも、ブランディングやコンテンツマーケティングが果たしたい役割です。

基本兵科の中で意外と難しいのが砲兵ですが、これは予算がかかったクリエイティブを作成する広告やブロードキャストな広報、パブリックリレーションズでしょうかね。ドカンと掴めるか、壮大に外すか。予算や経験、リソースが少ない小規模事業者には扱い方が難しい部隊です。

そして広義のマーケティング、戦略レベルのマーケティングはAWACS。早期警戒管制機や空中警戒管制システムと言われる、航空管制や指揮・統制を行う部門のイメージです。

予算が少ない小規模事業者のビジネスの場合、そのレーダーは主にWebやSNSのアクセス情報が中心じゃないでしょうか。
自社サイト等へのアクセス、事業活動で得た各データを通じて、OODAループとPDCAサイクルを回し、仮説検証を元に戦略、戦術を組み直して航空管制も地上部隊への指揮、指示も担う姿はAWACSに重なります。

白兵戦も込みの軍事を学んでいくと、だんだん人間の本質や反応、駆け引きといった領域にも入っていくので、そういった狭い間合いでの立ち居振る舞いをビジネスに転用したり、ジョン・ル・カレの小説を参考に情報工作員の世界を想像して応用するのも良いでしょう。

古典的な名著や、参考文献の量が多い論文に根差した科学系の新著、駆け引きやアルゴリズムを落とし込んだボードゲームの手筋、棋譜といったものを学んでおくと、いざという時に役に立ちますし、他のものへ置き換えて捉え直すヒントにもなるのでオススメです。

弱者が優位に立ち回るなら、「変化」が大事

いろんな例えを持ち出して分かりやすくお伝えするようにしてきましたが、弱者が強者と同じ土俵で少しでも優位に立ち回りたいなら、不用意な単純化は避けた方が良いでしょう。強者との純粋な力勝負、真っ向勝負になる形を避け、アレもコレもと相手の盲点をついた変化、スピードで翻弄するのが基本です。

弱者の単純化は、強者も考えついていない盲点、新たなニッチを見出すための再解釈に留め、「コレだけやればいい」と一点突破するのも全員で攻める瞬間のみ、そうでない場合は強者が攻める気にもならない見せ方、潰し甲斐がなさそうな姿を演じる方が良いでしょう。

また、この場合の変化も単純な変化では効果が薄いので、膨大な量を用意して、多角的で多軸的な変化を選べるようにしておくと、それも一つの強みになるのでオススメです。

チェスのキングも、将棋の王や玉も、大駒と比べれば移動できる量は少なく、「なんでこの駒が一番重要なの?」と思われるでしょうが、変化が非常に多彩です。クイーンや大駒が成った場合は変化も移動量も負けてしまうんですが、それでもゲームを左右する駒となっているのは、変化する選択肢が多いから。

馬より航空機が有利なのは、平面の移動だけでなく上下の移動、立体的な起動ができるから。軸、次元を一つ増やして複雑なマニューバを選べるというのは、強大な強みであるという証左でしょう。

噛む力を犠牲にして脳の容量をネアンデルタール人に次ぐ量へ増やし、肩の可動域を広げることで立体視と組み合わせた投擲を可能にし、腰痛を受け入れて二足歩行を選び、体毛を犠牲に汗腺を手に入れ、超長距離移動に耐えられる能力と器用な手、豊かな言語能力を持ったホモ・サピエンスが現在どうなっているか。それも選択肢の豊かさがいかに強力な武器であるか、というお話です。

強者との真っ向勝負を避け、選択肢の多さ、変化で勝負する。
弱者こそ原理原則をしっかり解釈し、あえて複雑かつ多角的な柔軟さを備えておきましょう。

弱者こそ、行間の力を活かそう

広義の戦略レベルのマーケティングは、事業活動の全てに顔を出す行間のような存在です。
そのマーケティングを潤滑油やAWACSとして他の事業活動を支援するか、全くの機能不全で業務効率を下げるのかどうか、リソースが少ない事業者、弱者の生き残りという点に置いては、多大な影響を及ぼすでしょう。

絶対的な強者ではないのなら、戦略をしっかり学んで、マーケティングやマーケティングに近い関連領域、似て非なる用語、役割をきちんと使い分け、それぞれを多角的に捉え直すことをオススメします。弱者なりに優位に立ち回るためにも、上手く行かない時は一旦立ち止まって戦略、マーケティングを虚心坦懐に、客観的に見直して全体への波及、浸透を徹底するのが良いかもしれませんね。

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