あらゆる手段、エネルギーを上手に使おう
「書く」に限らず、創作活動や何らかの制作工程には体力などの身体的なエネルギーだけでなく、他の要素も必要になってきます。偉大な作家や芸術家、文化人らがなぜ酒やタバコ、その他数々の薬物に手を出すようになったのか、その辺りの事情にも話題を広げつつ、「書く」や創作系の活動に必要なエネルギーの種類、活用方法について筆者なりの考えを語ってみましょう。
エネルギーと相互作用の基本
まずは、エネルギーがどのように作用し、相互作用や状態変化を引き起こすか、その基本を押さえておきましょう。エネルギーとは主に光や熱、位置エネルギーや運動エネルギーとして存在し、放っておくと高いところから低いところへ移動する性質を持っています。
例えば、山の上に水源を持つがある場合、川の水は山の形に沿って上へ上がっていくことはなく、重力と地形に従って下へ向かい、最終的に海へ到達するのが自然な流れです。日本の場合、分水嶺を境にして日本海側であれば日本海へ、太平洋側、瀬戸内海側であればそちらへ向かって流れて行きます。
ただし、エネルギー保存の法則や熱力学第一法則が示すように、エネルギーの総量は変化しません。高いところにあった位置エネルギーが低いところへ移動しても、そのエネルギーは運動エネルギーなどに変化しながら、全体として同じ量のエネルギーを保持しています。
ちなみに熱力学第二法則の観点から見ると、エネルギーが高い状態から低い状態へ移動すると、エントロピー(つまり、物事の乱雑さ)が増大します。このため、エネルギーの一部は不可逆的に失われ、元の高い状態に戻ることはほとんどありません。例えば、光や熱といったエネルギーは一度放出されてしまうと、再び同じ形で集中することは難しくなります。
エネルギーが高い状態にあるとき、それは活動的である一方、不安定な状態でもあります。エネルギーや物質は本能的に安定を求め、エネルギーが低い状態、つまり不活性で安定した状態へと向かいながらエネルギーを放出、発散する傾向にあります。
例えば、複雑な形の容器に水を注いだ場合、その容器が形を保っている間は水も安定しています。しかし、容器が壊れれば、形を保っていた水は一気に崩れ、不定形のままその場に溢れるでしょう。水としては複雑な形を保つことより、不定形な流体である方が不活性で安定しているからです。
この法則に逆らう存在が、生物と新陳代謝です。生物は新陳代謝によって恒常性を保ち、常に同じ状態を維持しようと働きかけます。これにより、無生物や無機物が時間の経過とともに崩壊したり、自然に老化していくのとは異なり、生物はその過程に身を委ねることなく、一定の状態を維持する機能を獲得しています。ただし、生物もエネルギーを節約する傾向があるため、カロリーを消費しやすい動きはできるだけ最小限に抑えようとします。食糧確保が厳しい野生動物にとっては特に重要で、食糧を確保するために多くの時間とカロリーを費やすため、消耗を抑えるためにできるだけ動かずにじっとしているのも、寝て過ごすのも自然な状態と言えます。
また、エネルギーの話をする上で見逃せないのが、強い力、弱い力、電磁気力、重力の4つの力が働くことで起こる、4つの基本相互作用です。それぞれの力によって物質が結びつくことで、安定した状態となります。これらの結びつきを引き剥がし、別のものと結びつけるためには、膨大なエネルギーが必要となります。
エネルギーが低い状態にとどまって安定している物質を再び活性化し、高いエネルギー状態へ遷移させるためにも、外部からの膨大なエネルギーの追加や注入が必要です。また、動いているものはその運動を維持するために比較的少ないエネルギーで済みますが、静止しているものを動かしたり、動いているものを止めたりするためには、より大きなエネルギーが必要です。
やる気や意志をエネルギーの一種と捉えると、動き続ける方が比較的小さなエネルギーで済むことが分かります。しかし、重い腰を上げて新しいことに挑戦する際や、面倒で避けていたことに取り組む際には、最初に大きなエネルギー、すなわち膨大なやる気や強い意志が必要です。一度活動を始めてしまえば、やる気や意志は自然に湧いてきて、必要となるエネルギーは減少する傾向にあります。最初に十分なエネルギーをどのように用意し、どう確保するかが課題となります。
作用・反作用も大事なポイント
物理、力学的なエネルギーの場合、作用・反作用の法則も見逃せません。
これは、何かを押すと同じ力で逆向きに押し返されるという非常に単純な法則ですが、この反動や反発を有効活用して、エネルギーを効率的に活用するという見方、考え方は知っておくと便利です。
例えば、高く飛ぶためにしゃがむ、強く地面を蹴るというのも、作用(=アクション)・反作用(=リアクション)のリアクションを有効活用するための行為と言えます。また、反発力が強いゴムボールを少しでも高く投げ上げたいなら、そのまま素直に真上に向かって投げるより、同じ力で真下に向かって投げる方が、より少ない力で目標を達成する可能性が出てくるでしょう。
助走のない垂直跳びのように、自分の力だけを使って独力で目標を達成するのは難しい場合があります。どのように実行するか、または本当にできるのか見当がつかないことも多々あります。しかし、反作用やリアクションを期待したアクションを選べば、そうでない場合よりも手軽で簡単になる場合があります。
非常に極端な例を挙げると、バッターボックスからバックスクリーンの方に向かってボールを投げるよりも、ピッチャーがボールを投げ、それをバッターがホームランにする方が、野球場の外までボールを届かせやすいでしょう。
もっと身近な例で言えば、先ほども挙げたように、高く跳びたいときには上に伸び上がる前にしっかりと下にしゃがむことや、前へ進みたいときに地面を踏んだり蹴ったりすることが挙げられます。また、プールで壁面を蹴ることなども、スポーツや力学の分野で反動や反発といった反作用を利用した例でしょう。
アクションだけで目的の力を発揮するより、リアクションによる力を目当てに、それを引き起こすアクションを選択する、より楽な方法、実践しやすい方法を選んでいるという証左でもあります。
また、人の心の場合は「天邪鬼」という反作用(?)も存在します。
そもそも、動物の本能的な反応、態度として、極力エネルギーを使いたくない省エネモードが土台にあり、面倒臭がり、できれば動きたくない、怠けたい、だらけたいと思うのが通常です。
そこで純然たるアクションとして、自分自身のやる気や意志、頑張りで目の前の環境や課題に向き合おうとしても、必要となるエネルギーは膨大になります。そこへ「天邪鬼」を刺激してしまうと、反発してますますやる気を削がれてしまう、というのも一般的な傾向でしょう。
例えば子供の頃や学生時代に、親や先生から「勉強しなさい」と散々言われ続け、「今やろうとしてたのに」と、かえって「やらない」を選択した経験はありませんか? 「〜しなさい」と言われると天邪鬼な反応、反発をして、親や周りが期待していたものとは逆の動きを選んでしまう、という事例です。
また、誰かに図星や核心を突かれた場合、思わず「あっ」と驚いて、自分にとって有益な提案をしてくれているのにも関わらず、恥ずかしさや驚きが勝ってしまって、「結構です」と断ってしまった経験はありませんか? きっと、一つぐらいはあるでしょう。
逆に親に褒められたこと、もっとやりなさいと焚き付けられて、それまでは「三度の飯」より好きだったものが急に嫌になった、嫌いになった経験はありませんか? 漫画やアニメ、ゲームなど、強烈に禁止すればするほど大人になってからの反動が大きくなってしまったり、逆に潤沢に与え過ぎてしまう、奨励し過ぎてしまうために嫌いになってしまう、疎遠になってしまうというのも、心の反作用、天邪鬼の一種でしょう。
あるいは恋愛や人間関係において、「追う追われる」の関係が好きで、追いかけられると逃げたくなったり、逃げられると追いかけたくなったりすることがあります。好きな相手に迫られると逆に逃げたくなったり、非常に面倒でややこしい天邪鬼の作用とも言えるでしょう。
ここで覚えておきたいのは、エネルギーを使って何かを達成しようとする際、反作用、リアクションの力を活用することでより省エネルギーで済む方法を選ぶのも一つの手段だということ。また、人の心の中にある反作用、天邪鬼のような素直でない部分にも留意することが重要です。
やる気や頑張り、意志の力だけに頼るのではなく、どうやってやる気を引き出すか、どう反発を活用してエネルギーを効率的に使うかも考えておくと、いざという時に役立つでしょう。
「急がば回れ」という言葉の通り、遠回りに思える方法を取ることが、結果的に効率的である場合もあります。困難な状況に直面したときこそ、あえて変化を試みることで新たな解決策を見つける可能性があります。緊急時に余裕を持って、自由な発想を広げられれば、ピンチをチャンスに変えられるかも。
創作には不健全なエネルギー、無駄な時間もチャージすべし
そこまでクリエイティビティを求められない制作の場合は不要かもしれませんが、多少なりとも自分自身の創造力や想像力を求められるタイプの創作の場合、真っ当なインプット、健全なエネルギーだけでは何か物足りない仕上がりになるというか、「自分」やオリジナリティを盛り込みにくいように思います。
今の世の中で、完全にオリジナルなものを作ることは不可能だと思いますが、それでも少しぐらいは「今までにないもの」を盛り込まないと、わざわざ人の手を介して創作する理由がありません。「今までにないもの」を表現するためには、健全だと認識されているもの、先人から合格の印を与えられたものだけをインプットしていても、自分だけの経験や発想、甘美な毒はアウトプットできません。
必然的に、「一般的な人はあまりやらないこと」や日の目を浴びにくいもの、不健全だったり、不健康だったりするものへ手を伸ばすことにも繋がります。コレが、偉大な芸術家や作家、文化人らが酒やタバコ、その他数々の薬物に傾倒したり、モラルに反すると言われかねない不倫や、「いわゆる火遊び」を「芸の肥やし」とした一つの理由じゃないでしょうか。
「英雄色を好む」も比較的近い印象ですが、動物的な本能に近い食欲や性欲といった劣情や衝動も、創作には欠かせないエネルギーと言えます。
また、不健全≒正しくないことと同じぐらい、必要とは思えないこと、無駄なことにも時間を費やし、「役に立つとは思えないこと」もタップリ溜め込んでおかないと、正しい成分、求められる成分だけをアウトプットすることになり、結果的に有効成分は過剰に詰まっているのに、何も吸収されない無駄なサプリメントのような成果物になりかねません。
必要なものだけを詰め込んでも、かえって吸収効率が悪化したり、「良いこと」だけを抽出したって上手く行かないのも、世の常と言えるでしょう。
クリエイティブなことをしたいのに気分が乗らないとか、エネルギーが足りないなと思ったら、カフェインやカテキンを過剰摂取する前に、あえて陰鬱な音楽を聞いてみたり、最後まで見てもよく分からないアーティスティックな映画を見てみたり、誰かの毒やネガティブな要素を取り入れると、状況が好転するかもしれません。
GAFAやSNSがレコメンドする情報だけを見ていると、健全なものだけがフィルタリングされがちです。創作に必要な毒っけやネガティブな要素、センシティブな要素も不足しがちなので、自分から健全な世界を飛び出して、自分の癖にグッと来るものを取り入れること、また、無駄な時間を過ごして「ああ、やってしまった」と後悔することも、創作において重要な要素だと思います。
強く主張したいことに加え、トリッキーな発想、負のエネルギーも必要
先日、オウンドメディアの方で作文を光線技に例えた記事を公開しましたが、
こちらの記事でもウルトラマンのスペシウム光線を例に挙げています。右腕のエネルギーと左腕のエネルギーを掛け合わせることで、強力な光線を生むに至っているという部分が、創作や作文のイメージに最も適していると考えました。
つまり、ブログ記事のようなコンテンツあるいはその他文章表現の場合、書き手が強く伝えたいこと、主張したいことやそれらを支える社会的、学問的な正しさ、志の高さを「正のエネルギー」とするなら、書き手がそれまでに溜め込んだ邪な感情や様々な邪念、空費した時間などが「負のエネルギー」となり、相反する二つのエネルギーを組み合わせることで、単独のエネルギーよりも爆発力の高いエネルギーが詰まった、メッセージ性の強い表現が生み出せるという発想です。
教科書通りの真っ当なやり方や、純粋な自力でなんとかしようとするやり方だけでは上手く行かないし、長く続けられません。省エネかつシンプルに、極力簡単にしたいなら、状態の切り替えにはエネルギーが必要となること、やる気や意志の力で頑張るのではなく、反作用や反発を上手く活用できないか検討すること、自由な発想で改善の余地や奇策がないか常々考えておくことをオススメします。
また、もし不健全なこと、不健康なものにも手を出したいなら、コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインや、チョコレートに含まれるテオブロミン、緑茶等のカテキン、その他のアルコール等へ手を伸ばす前に、ブドウ糖90%の森永のラムネ、特に大粒を摂取することもオススメしておきます。
エナジードリンク、特にモンスターエナジーを魔剤と呼んだりしますが、個人的には大粒ラムネも魔剤、面倒臭さを乗り越えるためのドーピングのつもりで摂取していますが、過剰摂取しても糖分過多や歯に多少の影響が出る程度なので、不健康の中では比較的健康な選択肢じゃないかと思っています。
ちなみに、慣性の法則や、状態を変更するには膨大なエネルギー、つまり面倒臭さもそれなりにあると理解しておくと、マーケティングや他の分野でも活かせるかも。ペルソナを意識してどう動くかを予測するとき、なぜ動きを変えてくれないのかを考える時は、頭の片隅に置いておきたい法則です。
今後も「お役立ち情報等」をお届けします
創作に必要なエネルギーやエネルギーが持つ性質、ややトリッキーなエネルギーの活用方法なども日々検討しているBBNと、月額制Webサイト制作を始めてみませんか? 何かに行き詰まった時、創作の支援が必要になった時など、様々な領域、多様な分野でお手伝いさせていただきます。
また、BLUE B NOSEでは今後も、経験を通じて得たナレッジやノウハウ、独自視点でのお役立ち情報等をお届けします。サービスの詳細や事例はHP上でも発信中なので、もしよろしければ当アカウントのフォローや、HPのチェックもお願いします。
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