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作曲家の使う特殊な音楽理論 [バルトークの中心軸システム]

今回の内容は「音楽理論」というものについてです。
先日私が投稿しました【私にとっての坂本龍一氏】という記事の中で名称だけご紹介した [バルトークの中心軸システム] というものに触れてみようと思います。

作曲や演奏をしている人にとっては「音楽理論」という名称をよく聞くかと思います。音楽を聴く専門の方はどういうものかよくわからないかもしれません。

なので、ざっくりと解説してみようと思います。
私たち作曲家は「こういうことを考えて作っているんだなあ」と豆知識のような感じで読んでいただけたら嬉しいです。

今回は「音楽理論」の中でも [バルトークの中心軸システム] を取り上げてみよう思います、これはなかなかお目にかかれない特殊な理論なので既に作曲をされている方にも新鮮な感じで楽しんでいただけるかなと思います。

ちなみに、私の作曲をするときに [バルトークの中心軸システム] はメインとなる考え方の1つです。

[バルトークの中心軸システム] は、ハンガリーの作曲家「ベラ・バルトーク Béla Bartók」考案の音楽理論とされています。
彼の代表曲の1つの「Music for Strings, Percussion & Celesta 弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」のApple Musicへのリンクをはりましたので、ぜひお聴きくださいませ。

さらにご興味のある方は、こちらの「バルトークの作曲技法 (エルネ・レンドヴァイ著)」をお手にとってみてください。

[バルトークの中心軸システム]

「和音(コード)」と「ファンクション」について

解説に入る前に、ちょっとだけ和音等の知識を。
和音(コード)】とは:ドミソのように基本的には「3つの音」以上の音を同時に鳴らした響きのこと
です。この和音(コード)を繋げていって曲になります。

【ファンクション】とは:曲の中で「和音(コード)」がどういう性格を持っているのか
というものです。
ファンクションは3つ(4つ)ありまして簡単にそれらの性質を書くと、
トニック:「家に帰ってきた」ような安心する響き、曲が終わったときのホッとする感じ
サブドミナント:ふわふわっとした感じ
ドミナント:トニックにすぐに向かいたがる「ホームシック的な不安定」な響き
という感じです。

曲にはキーというものがあり(例えば、カラオケでは+1とか-1と曲の高さを変更したりしますよね)、通常は1つのキーで進んでいきます。
そのときに使える和音をまとめたものを「ダイアトニック・コード」と言います。

※Bm7(♭5)は、多くはD(ドミナント)とされていますが、
私はS(サブドミナント)として捉えています。
理由はここでは割愛します。

このように「ドレミファソラシ」の上に和音を作って、それにファンクションが割り当てられます。
今回は曲のキーはCなので、黒盤は使わない白盤のみの曲になります。

[童謡]のようなシンプルな楽曲の場合は、
・白盤のみでのシンプルなメロディー
・ダイアトニック・コードのみの和音
で作られていることも少なくありません。

ですが、[みなさんがよく耳にする楽曲]には所々
・黒盤の音(キーからズレる)がメロディーに入ってくる
・ダイアトニック・コード以外の和音が出てくる
ことがあります。

いわゆる「キー以外の和音を使うことによってできる」のですが、
そのためによく使われる「音楽理論」は【バークリーメソッド】と言われるジャズ理論です。ここでは割愛します(かなり長くなってしまうので…)

[バルトークの中心軸システム] はバークリーメソッド違い、この「ファンクションの考え方」がとてもユニークです!

[バルトークの中心軸システム] の、ファンクション軸(Axis)という考え方

ファンクション軸(Axis)の手書き図を書いてみました。
青→『トニック』
緑→『サブドミナント』
赤→『ドミナント』
という感じに色分けしています。

ファンクション軸(Axis)の導き方の手順は、
[ 1 ]
円を12等分して「C (ド)」の音を一番上に置き、時計回りに半音上の音を順番に配置していきます。
[ 2 ]
一番上にきている「C (ド)」は、key = Cの主のトニックです。
その「C (ド)」から円の中心点を通り、反対側に線を引きます。
すると、そこにあるのは「F# (ファ#)」です。
[ 3 ]
その引いた線と『90° (直角)』に交わるように、また線を引きます。
そこにあるのは「E♭ (ミ♭)」と「A (ラ)」です。
完成したものがトニックのファンクションの軸、いわゆる【トニック軸】となります。

つまり、
「C (ド)」「E♭ (ミ♭)」「F# (ファ#)」「A (ラ)」
がついている和音は:全て【トニック・ファンクション】
となります。

同じように、
『サブドミナント』の「F (ファ)」から
『ドミナント』の「G (ソ)」から
でもやり【サブドミナント軸】【ドミナント軸】を作ります。

そうすると、
「D (レ)」「F (ファ)」「A♭ (ラ♭)」「B (シ)」
がついている和音は:全て【サブドミナント・ファンクション】

に、

「D♭ (レ♭)」「E (ミ)」「G(ソ)」「B♭ (シ♭)」
がついている和音は:全て【ドミナント・ファンクション】

となります。

なんだか複雑にな感じになってしまいましたが…簡単にまとめると、

・「ドレミファソラシ」から作られる【ダイアトニック・コード】の和音で作ると:そのキーのみに縛られた世界の響き
となり

・[バルトークの中心軸システム] の【トニック軸】【サブドミナント軸】【ドミナント軸】から導き出される和音で作ると:
「ド ド# レ レ# ミ ファ ファ# ソ ソ# ラ ラ# シ」という1オクターブ内の全ての音を3等分することで:キーに縛られない開放的な響き
にできるという感じです。

内に籠った響きと、外に開放的になる響きという感じです。

最後に、

[ダイアトニック・コード による和音進行] と [バルトークの中心軸システム による和音進行] による和音進行の違いを楽譜にしてみました。

4小節の和音進行でどちらも、
・キーはC
・Cmaj7のT(トニック)から開始
・ファンクションは、T(トニック) - S(サブドミナント) - D(ドミナント) - T(トニック) の流れ
で共通です。

この例の [バルトークの中心軸システム による和音進行] の方は
デタラメなのか?と思ってしまうような違和感を感じる方もいらっしゃるかなと思うのですが、
上下どちらも:ファンクションの流れは同じなんです。

[バルトークの中心軸システム] はなかなかポップスの楽曲に使われることはないのですが、新しく刺激的な響きを「歴史から学ぶ」ことによりアートは広がると感じています。

長文、乱文失礼いたしました。

UN.a 宇津木紘一


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