「いま、ここ」を越えて広がる世界とことば
「ワンワンだね。」
目の前の犬を見たとき、大人の言葉を聞いて、子供は「これがワンワン」と呼ぶことを知る。
すると、ある時、同じ場面に遭遇すると、「ワンワン」という言葉を自分から発する。それが言葉を覚える過程である。
幼児の話し言葉は、「いま、ここ」にあるものを伝える言葉。主に、信頼関係を築いた親しい人との間で交わされる。
例えば、こんな会話。
「ないねえ」から始まるこの会話。はじめは何がないのかわからない。
美代とママは、同じ場所で同じものを見ているから、何がないかがわかっている。
つまり、場所と視線を共有しているのである。
この状況は初めてのことではない。
何度も会う犬が、喜んでしっぽを振っている様子を美代とママが楽しんでいるから、そのしっぽが話題になるのである。
さて、「いま、ここ」にあるものについて話題にする言葉が、
それを越えて広がる世界になっていく言葉とどういうものか。
それについては、また次回。
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