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「いま、ここ」を越えて広がる世界とことば

「ワンワンだね。」
目の前の犬を見たとき、大人の言葉を聞いて、子供は「これがワンワン」と呼ぶことを知る。
すると、ある時、同じ場面に遭遇すると、「ワンワン」という言葉を自分から発する。それが言葉を覚える過程である。

幼児の話し言葉は、「いま、ここ」にあるものを伝える言葉。主に、信頼関係を築いた親しい人との間で交わされる。

例えば、こんな会話。

美代:「みよちゃんには、ないねえ」
ママ:「うん、みよちゃんには、しっぽないねえ。ママにはある?」
(母の背後にまわり、お尻を見て)
美代:「ママにもないねえ。」

『事例で学ぶ保育内容 領域「言葉」』P.136 より一部改変

「ないねえ」から始まるこの会話。はじめは何がないのかわからない。
美代とママは、同じ場所で同じものを見ているから、何がないかがわかっている。
つまり、場所と視線を共有しているのである。
この状況は初めてのことではない。
何度も会う犬が、喜んでしっぽを振っている様子を美代とママが楽しんでいるから、そのしっぽが話題になるのである。

さて、「いま、ここ」にあるものについて話題にする言葉が、
それを越えて広がる世界になっていく言葉とどういうものか。

それについては、また次回。


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