見出し画像

冬休み前の演出「心を育む語りと劇化」〜ペップトーカー❌ドラマディレクター

講話で何を話すか思い悩む時、語りのネタ本を散策することがある。サーっと目を通して、どれもいい話だなとウロウロしつつ、決め手となるのは、タイムリーなネタである。

そのネタを見つけるには、日常の生活舞台を「劇」としてメタ認知するところから始まる。

冬休みの前の最終日、インフルエンザ流行のあおりをうけて、欠席者がいたから、その文字が目に飛び込んできた。
その状況を乗り越える語りのキーワードは、ビタミンDだった。

本筋は「健康な体づくり」だが、月並みな伝え方では響かない。
たとえ、平凡なテーマであっても、
興味を引く「つかみ」にこだわることは、語り手として最低限の嗜みだ。

その「つかみ」との出会いは、何気ない日常の中にあった。

集会で講話をする日、出勤前に「つかみ」に出会う伏線があった。

「今日、話すことは決まってるの?」
「まあ、大体ね。でも、話したって、すぐ忘れちゃうんだよ。」
「そんなことないよ。子供はちゃんと覚えているよ。」

その時は、まだ、頭は”霧の中”だった。
そして、この霧が晴れる瞬間は来るのだが、それが直前になってしまうことが多い。

家族との対話で生まれた脳の空白を埋めようとしたのか、何気にチャンネルを変えると、トレンド雑貨の特集をキャッチ。そこでは、猫型のプリン容器、カレーライスの盛り付けに使える猫型のご飯容器などがクローズアップされていた。猫好きの私の目は釘付けになった。

https://image.rakuten.co.jp/yamayuu/cabinet/01023319/02707641/09107553/hco-da-1261_03.jpg

当初の構想は、学校の合言葉(わかる気、できる気、その気)を体で表現させること、これまでの活動を振り返り、自分の中での達成度を問うことを考えていた。

しかし、本をめくっているうちに、それとは全く関係のないところで、
「インフルエンザに負けてはいけないよ」という心の声と、
生活経験から得た知識「猫とビタミンD」が、脳神経系で繋がった。
それは、我が家は猫から学んだ生活経験と知識が豊富だったから。

構想段階で残ったのは”動作化”だけだった。

そして、直前に決まったネタと「猫のプリン」の脳内イメージだけを頼りに、即興的に講話を組み立てた。原稿なしで無駄な言葉のオンパレードだったが、子供たちは食い入るような視線とニコニコ反応を投げ返してきた。

そのシナリオを記す。

心を育てる朝会のお話し ~冬休みを元気に過ごすために~

「ねこのプリン」って聞いたことがありますか?
(1人の子が反応しました)
想像してください。お皿の上にのっているプリンがねこの形をしています。そのお皿を揺らすとプルプルとゆれるのです。その姿が「かわいいー!」と、今、大人気だというのです。
 私はネコが好きです。ねこを飼ったことがある人はいますか?
(数人が挙手)
ネコをなでると気持ちがよくなりますね。他に、犬、うさぎ、ねずみ、鳥とか、さわったことがありますか?
(大半の子が手をあげます)
動物をさわると元気になります。それはさわることで愛情のホルモンが出るからです。1人暮らしの人がネコや犬を飼う人がいますが、動物と一緒にいると元気になるからです。

 天気の良い日、ネコが窓ぎわで寝っ転がって体をなめていました。なぜ、なめているのでしょうか。
(毛づくろい、ノミがいる)
 それは、ある栄養素ができるからです。みんなも、よく知っている名前です。
(ビタミン)
「ビタミンの中の何?」
(Dの形を手で表す)
太陽の光を浴びると、体にビタミンDができます。ネコは毛をなめることで、ビタミンDを体に取り入れています。だから、元気に過ごすことができます。知っていた人?
(誰もいませんでした)
 みなさん、天気の良い日の休み時間には、築山など外に行って遊びますよね。そのとき、太陽の光を浴びて、みんなの体にはビタミンDがつくられています。インフルエンザなどの病気にも負けない強い体がつくられるのです。

(全校集会の講話 冬休みを元気に過ごすために~集会で「D」のお話し~


ここで終わると、普通の講話。
記憶に定着させるためには、聴覚だけでなく、視覚、体感覚へのアプローチを加える。

(ここから劇化を入れてみました。ネコになる、ビタミンDになる遊びです。初めは恥ずかしそうにしている子も周りの様子をみて動き出し、楽しそうにコミュニケーションをとる様子がみられました)
 冬休みも元気に過ごしてください。

(同上)

そこで、演劇的手法を使ったのである。
目的は、話した内容の一部を体の中に記憶させること。

そもそも、猫を飼ったことがなければ動きのイメージが湧かない。
経験のある子はイメージがあるから動きができる。だから、その様子を見て真似させればいい。

極力、指示命令型にならぬように言葉をかける。
それでは、このお話を体に覚えさせるために準備体操をします。
「まず、猫になってください。」

そして、演技している子を認める。そして、困っている子に反応を促す。
「おお、Aさん、猫みたいな手だね。」
「おやおや、まだ人間がいるな。周り見て真似していいよ。」

全員が何らかの動きをしたところで、次のアプローチをする。
「2人組か3人組でビタミンDになります。」
「アルファベットのDの形を作ってください。」

立位で動きを作る、床に寝て作るグループが出てきた。

それを見て、笑っている子たちもいる。
すかさず、立っている子を促します。
「ビタミンDを食べに行ってください。」

すると、促された子供たちだけでなく、周りで見ていた先生たちも喜んで食べに行く姿が…。

私も子供の中に入って、食べに行きます。
「おお、ビタミンDがあるぞ。食べちゃおう。」

”ティーチャー・イン・ロール”という名前の手法ですが、
先生が役になりきって劇の中に入っていき、意欲化を図るもの。

3年生の国語「モチモチの木」の授業で様々な演劇的手法を活用してみて、多くの気づきがあった。

子供にとっては、お行儀よく話を聞くことよりも、自分の感覚を駆使して体で表現する、役になりきってイメージを膨らませることの方が楽しく、理解も深まるということ。
また、対話的な学びの中で、自己理解や相手意識も高まるということ。

6時間の授業を通して、こうした経験則を得られたことが、今回のチャレンジ講話につながった。

振り返るに、講話というよりも、劇化講話という新たなカテゴリー。
やってみて、面白い。
バリエーションを増やしていくと、子供たちが真似して、集会活動などで劇化を活用したプレゼンテーションをするのではないかと。

これまで、ペップトーカーとして、心に残る講話を工夫してきました。
今後は、ドラマティーチャーまたはドラマディレクターとなって、イメージを膨らませること、再現力・表現力を演出できるアーティストを目指してみようと。

愛されるカッコイイ講演家になるために・・・。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?